小売・流通業界向け最新DX事例
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小売・流通業界は、ITの活用が遅れている分野の1つでもある。一方で、小売・流通業界には「顧客の購買行動の変化に対応できていない」「システムが老朽化している」「スタッフが足りない」「マーケティングに関するデータが足りない」などといった課題を持つ企業も多い。それらはITの活用によって解決できる可能性が高いのだが、実際のところ、小売・流通業界ではどのようなIT技術が活用され、DXが実現しているのか。最新のDX事例にスポットを当ててみた。
ツルハホールディングスがユーザーの情報を保護しながら活用するデータクリーンルームを導入
インターネット上で、ユーザーの行動履歴などの情報を記録する目的で使われている「クッキー(Cookie)」だが、現在プライバシー保護の観点から、その利用に対する規制が世界的に広がろうとしている。その影響で、クッキーを活用したデジタル広告の分野では、今後ターゲティング精度の向上や効果測定がより一層困難になると見られている。一方で、ブランド育成に必要となるLTV(顧客生涯価値)の向上を目指す上では、自社で収集した顧客情報だけではなく他社が持つ情報とも連携していく必要性が高まっている。
そうした中、小売・流通メーカー向けにDX支援やリテールメディアの開発・運用を行うアドインテは2025年2月5日、ツルハホールディングスと協業し「ツルハデータクリーンルーム(DCR)」を構築すると発表した。ドラッグストアを傘下に持つツルハホールディングスグループはDCRを、リテールメディア領域においてユーザーのプライバシーを保護しながら安全な環境で分析を可能にする、プラットフォームにしようとしている。
ツルハグループのリテールメディアの広告主となるメーカーがDCRを導入すれば、自社が保有するデータとツルハグループが保有するデータをセキュアな環境で連携させ、顧客分析や精度の高い広告配信の実現を目指せるようになるという。

(図1)ツルハデータクリーンルームの活用イメージ(出典:アドインテのプレスリリースより引用)
東芝テックがAIセルフレジ機能付きスマートカートシステムの販売を開始
東芝テックと株式会社Retail AIは「新時代のお買い物体験を生み出し、流通の仕組みを革新する」という将来展望のもと2022年9月より共同プロジェクトを開始しており、2025年1月31日に、セルフレジ機能付きスマートカートシステム「Skip Cart」を販売開始した。これによって、買い物中のストレスの一つとなる「レジ待ち」なしのスムーズな会計や、新たな購買体験を消費者に提供するという。
「Skip Cart」は事前に売場でバーコードを読み取る運用のため、消費者は会計機で決済するだけというスムーズな買い物を実現する。商品のスキャン漏れを防止する、自動検知アラーム装置も搭載される。これによって、店舗の省人化や効率的な店舗運営の体制づくりに貢献できると見ている。また、カートに入れた商品や購買履歴に応じて最適化されたおすすめ商品を、AIがリアルタイムに提案。パーソナライズされたレコメンドやクーポン配布などを通して、消費者に付加価値の高い買い物体験を提供するとしている。
さらに東芝テックは、小売店で発生する各種の購買データを集約しながら、物流データや人流データ、ヘルスケアデータなどを組み合せて、小売・流通のDX推進をサポートするグローバルリテールプラットフォーム「ELERA」と「Skip Cart」を連携。これによって、「Skip Cart」を既存の店舗システムとスムーズに接続させ、店舗の運営を止めることなく運用を継続させるという。

(図2)「Skip Cart」と「ELERA」の連携イメージ(出典:東芝テックのプレスリリースより引用)
博文堂書店が無人営業化ソリューションを導入
小売店向けDXソリューションを提供するNebraskaは、2024年12月2日より「博文堂書店 田無店」に無人営業化ソリューション「デジテールストア(旧サービス名MUJIN書店)」を導入したと発表。有人・無人を組み合わせたハイブリット型の店舗において、24時間営業をスタートした。
「デジテールストア」は、セルフ化や有人営業時間の調整による人件費最適化に加え、LINEとQRコードを用いた入店システムによって無人営業を実現。深夜から早朝も店舗を稼働させることで、収益性を向上させるという。また、消費者には、24時間化によって営業時間に縛られない購買体験を提供。併せて、来店・購買データを活用し、LINEおよびWebアプリを通じたダイレクトマーケティングの展開を目指す。さらに、新規店・既存店を問わず、リーズナブルな価格で短期間のうちに無人営業を可能とし、完全無人営業および、時間帯により有人・無人を切り替えるハイブリッド営業にも対応する。
Nebraskaは2023年3月より、トーハングループと「デジテールストア」を活用した実証実験を行ってきた。今回導入した博文堂書店 田無店は、その実証実験で得られた成果をトーハングループ以外で本格展開する、第1号店という位置づけだ。一方でNebraskaは、今後もトーハングループと出版業界・書店業界の持続可能な活性化を目指すパートナーとしてDXやイノベーションを推進し、次世代型書店モデル創出に取り組むという。また、「デジテールストア」を単なる無人・省人化の手段とするのではなく、AIと組み合わせることで、より高付加価値な店舗DXソリューションに発展させようとしている。

(図3)「デジテールストア」の利用方法(出典:Nebraskaのプレスリリースより引用)
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