社会インフラの課題をDXで解決、その取り組みとは

2025年7月7日

近年、老朽化や多発する豪雨、地震などの自然災害により、私たちの暮らしを支える社会インフラは危機的状況にあります。社会インフラを取り巻く課題の解決方法として、国土交通省は「国土交通省インフラ分野のDX推進本部」を設置して、インフラ分野のDX実現を推進しています。社会インフラの現状と推進している技術を紹介します。

社会インフラの現状と課題

社会インフラとは、一般的に社会が機能するために必要な基盤や設備を指します。具体的には、道路、橋梁、治水、下水道、港湾、公営住宅、公園、海岸、空港、航路標識、官庁施設などです。
日本の社会インフラの多くは、高度経済成長期以降に整備されました。インフラの耐用年数は一般的に約50年と言われており、2040年時点では、道路橋の約75%、河川管理施設の約65%、港湾施設の約68%が建設から50年以上が経過する見込みです。今後、耐用年数を過ぎたインフラ施設が多くなると予測され、社会インフラの老朽化対策が課題となっています。
このような課題の背景として、維持管理に必要な財源の不足や技術系職員の減少などが挙げられます。

出典:国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来 - インフラメンテナンス情報」 イメージ
出典:国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来 - インフラメンテナンス情報」

インフラ点検でAI技術を活用

国や自治体では、インフラの老朽化や維持管理するための人材不足、維持費用の増大などの問題に対応するため、インフラ点検へAI技術を活用する動きが広がっています。
AI分野の中でも、画像認識技術は著しく発展しており、撮影した画像や映像をAIで解析することにより、人では見落としてしまうような異常も発見することができます。AIによる画像診断は、コンクリートや建物などのひび割れや道路舗装の異常発見、さらにはトンネル、ダムなどのインフラ点検にも活用されています。
AIの深層学習(ディープラーニング)技術を活用して、既存の画像や映像、データをAIに学習させることで、インフラの劣化度の判定や、スコアリング、異常箇所の自動検出が可能になります。さらに劣化度によってランク付けをすることにより、点検や修理の優先順位を決めることが可能になり、点検作業を効率化することができます。また、異常箇所の自動検出により点検時間の大幅短縮が期待されています。

【道路設備の活用事例】
広島県北広島町では、2022年にNTTビジネスソリューションズ株式会社及び日本電信電話株式会社アクセスサービスシステム研究所とともに、道路設備のAI管理に関する実証実験を実施しました。
実験では、簡易カメラを搭載した車両を用いて町道を走行し、沿道の画像を撮影しました。撮影した画像データを深層学習に基づく画像認識AIで解析することで、標識やガードレールの錆を自動検出するシステムを構築し、検出率97.5%と高い水準の結果が出ています。この画像認識AIによる点検技術を導入することで、点検業務以外で巡回走行している車両から画像データを収集し、AIによるインフラ点検を継続的に実施することが可能となります。従来の人的な目視による点検と比較して、大幅な人的コストの削減が期待されています。

出典:北広島町ホームページより イメージ
出典:北広島町ホームページより

点検用ドローンで安全作業を実現

点検用ドローンとは、カメラや赤外線調査機器などを搭載したドローンのことです。2021年9月に航空法施行規則の一部改正を受け、ドローンの活用規制が緩和され、2022年4月には建築基準法で義務付けられている法定定期点検でも、ドローンを活用した赤外線調査が認められました。これらの法改正を受けて、点検用ドローンが注目されています。
特に、高所や閉所など、人間では近づくのが難しい場所でもドローンであれば安全に点検が可能なため、電柱や鉄塔、トンネル内、高い建物の外壁など、さまざまなインフラ点検で活躍しています。また、空中や水中を移動しながら映像をライブで確認したり、解析したりすることもできます。
ドローンを点検作業に活用するメリットとして、高所や危険な場所の点検作業を安全に行えることや目視よりも高精度な点検ができること、点検に必要な人員、時間、費用を削減できることなどが挙げられます。
点検用ドローンとAIによる画像診断を組み合わせることにより、これまで点検作業が困難だった場所でもスムーズに点検することでき、老朽化した箇所の早期発見に役立つでしょう。

【橋梁点検の活用事例】
国土交通省が2019年に実施した橋梁の点検では、ドローンを活用することで、交通規制をせずに点検が可能となり、道路利用者の妨げとなることなく、従来の人による近接目視と同等の精度での点検を低コストで実現できたと報告されています。
将来的には、災害発生時を想定し、発着地点から現場までドローンが自動で飛行して調査し、その後自動で帰還するシステムや、降雪時に夜間飛行で遠隔地を調査できる技術の開発が期待されています。

出典:国土交通省ホームページ イメージ
出典:国土交通省ホームページ

インフラ点検の未来

社会インフラ点検は、人々の生活やビジネス基盤となる設備や施設を安全に維持し続けるために、必要不可欠な作業です。将来にわたり長く社会インフラを活用していくためには、AIを活用し、業務の自動化によって効率的に業務を行うとともに、コスト削減や安定的な技術継承が可能な体制を整えることが重要です。しかしながら、学習データの利用も含めてAI技術はまだ発展途上にあり、インフラ点検にはAIと技術者が連携することがポイントとなるでしょう。

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