5Gと自動運転で車は動くカラオケボックスになるかも?

2022年4月15日

最近ではさまざまな分野で、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といったXR技術とAI技術を組み合わせた、インタラクティブなマルチメディアコンテンツが提供されようとしている。XR技術によるエンターテインメント向けコンテンツを移動中のモビリティでも提供できるようになれば、これまでにない移動体験が実現でき、自動運転と組み合わせた新しいモビリティの活用にも期待できそうだ。

位置情報を活用したXRコンテンツを楽しむバス

2022年2月、NTTドコモはモビリティに乗ったまま体験できる、新たなエンターテインメントコンテンツやオンラインツアーの提供をめざし、5GとXR、AI技術を活用してコンテンツ提供する実証実験を行った。

愛知県長久手市の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)において、愛知県が進めている、「愛知県自動運転社会実装モデル構築事業」の実証実験と同時に行われた「車室空間体験実証」(2022年2月10日~16日)では、「MOOX on FCバス」と「SQUAL」の2つの車両空間を利用した新しいモビリティ体験の実証実験が行われた(写真1)。

(写真1)「愛知県自動運転社会実証モデル構築事業」の「車室空間体験実証」で使用された「MOOX on FCバス」(左)と「SQUAL」(右)のイメージ(資料提供:NTTドコモ) イメージ
(写真1)「愛知県自動運転社会実証モデル構築事業」の「車室空間体験実証」で
使用された「MOOX on FCバス」(左)と「SQUAL」(右)のイメージ
(資料提供:NTTドコモ)

6人乗りのライドアトラクション用バス「MOOX on FCバス」(自動運転には非対応)では、複数の乗客が移動中に5GやXR、AIの技術を組み合わせた、以下のようなサービスを提供した(図1)。

そのサービスでは、GNSSで得られる位置情報を活用し、車窓の風景と連動した没入感あるXRコンテンツの提供、特定のエリアに限定して音を再生させる、プライベート音響空間の提供、AI顔認証ソフトウェアを活用し、乗車した人の属性に合わせた観光地紹介動画を車室内のディスプレイで放映が提供された。(位置情報を活用した観光コンテンツの提供例としては、 「5Gが生み出す、新しい観光体験」 で紹介したJR九州の取組などもある。)

(図1)「MOOX on FCバス」の車内で提供されたコンテンツのイメージ(出典:NTTドコモの発表資料より) イメージ
(図1)「MOOX on FCバス」の車内で提供されたコンテンツのイメージ
(出典:NTTドコモの発表資料より)

また、4人が乗車できる車室空間を模した「SQUAL」では、遠隔にある観光地(広島県福山市鞆の浦)とモリコロパークを5Gで接続し、車室内の三面スクリーンを活用して観光地の様子を投影。実際にその場所を訪れたかのような、臨場感あふれる「オンラインツアー」体験が提供された(図2)。

(図2)「SQUAL」の車室内で実施されたオンラインツアーのイメージ(出典:NTTドコモの発表資料より) イメージ
(図2)「SQUAL」の車室内で実施されたオンラインツアーのイメージ
(出典:NTTドコモの発表資料より)

車窓の景色にXRコンテンツを重ねて、移動を新しいエンターテイメントに

さらに、NTTドコモは東京都港区の臨海副都心エリアにおいても、モビリティで体験できるエンターテインメントサービスの実証実験(2022年2月25日~3月2日、3月8日~10日)を行った。

実験ではトヨタが開発した自動運転電気自動車「e-Palette」を使用し、車窓に設置した透過ディスプレイから見える外部の背景にXR技術を活用したコンテンツを重ね合わせた(写真2)。また、 「5Gが可能にする新しいエンターテイメントの形」 で取り上げた3D音響や座席の振動などと組み合わせた、バーチャルアイドルによるXRライブなどを楽しむ車室空間などが提供された(図3)。

(写真2)臨海副都心エリアにおける実証実験で使用された自動運転車両「e-Palette」(出典:トヨタの報道資料より) イメージ
(写真2)臨海副都心エリアにおける実証実験で使用された自動運転車両「e-Palette」
(出典:トヨタの報道資料より)
(図3)「e-Palette」で提供されたバーチャルアイドルによるXRライブのイメージ(出典:NTTドコモの発表資料より) イメージ
(図3)「e-Palette」で提供されたバーチャルアイドルによるXRライブのイメージ
(出典:NTTドコモの発表資料より)

自動運転と5Gにより車がリビングルームやカラオケボックスに

今回の実験では、公共交通機関などにおけるモビリティコンテンツの新しい楽しみ方が提案されたが、ドライバーを必要としない完全自動運転の自家用車が実用化されるようになれば、モビリティコンテンツの楽しみ方も変わってくるだろう。車に大型スクリーンを設置すれば、そこが動くリビングルームになる。5Gを活用すれば、目的地に着くまでの移動中に自分の好きなコンテンツをオンデマンドで楽しめる(写真3)。

(写真3)スイスのベンチャー企業Rinspeedがジュネーブモーターショーで発表した自動運転車のイメージ(出典:Rinspeedのコンセプトビデオより引用) イメージ
(写真3)スイスのベンチャー企業Rinspeedがジュネーブモーターショーで
発表した自動運転車のイメージ
(出典:Rinspeedのコンセプトビデオより引用)

自動運転と5Gのコンテンツ配信の組み合わせは、他にもさまざまなアミューズメントサービスを生み出しそうだ。例えば、友人たちとカラオケやゲーム、映画などのコンテンツを楽しめる、移動式のアミューズメントボックスが誕生すれば、自動運転でそれぞれの家まで迎えに来てくれて、乗車したままみんなで楽しんだ後は、またそれぞれの家まで送り届けてくれる。こうなると、もはや車は目的地へ移動する道具ですらなくなる。

5Gの高速・大容量でのコンテンツ配信は、そのような次世代のモビリティ体験の実現に不可欠な通信技術なのだ。

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