• HOME
  • Beyond X 最前線
  • ロボットやセンシング技術で品質向上と工期短縮を目指す海外の建設テック

ロボットやセンシング技術で品質向上と
工期短縮を目指す海外の建設テック

2023年3月13日

「建設業界は100年以上前に開発された道具やプロセスに依存している」といわれているが、実際の現場は建設機械の進化などにより新しい技術もいろいろと導入されている。一方で、現場における多機能化に比べて、工事プロセス全体の効率化については進化が遅れているようだ。そこで、国内外を問わず建設業界ではAIやICT、IoTなどのデジタル技術を取り入れ、複合的に活用することで業務プロセスを変革し生産プロセス全体を最適化することが目指されている。ここでは、海外で注目されている、革新的なデジタル技術を取り入れて建設DXを支援するスタートアップを紹介する。

自律走行ロボットを活用して作業品質をチェック

2015年に創業したスペイン・バルセロナを拠点とするScaled Roboticsは、自律走行する小型4輪ロボットに360度カメラやLIDAR(レーザー光を使ったセンサー)システムなどといったさまざまなセンサーを搭載し、建設現場の状況を3次元化するソリューションを提供している。そこから得られた写真やビデオなどのデータをAIで解析し、設計におけるミスや逸脱を自動的に識別することで工事の品質を管理する。

4輪ロボットから得られた情報は、作業品質のステータスに応じて「緑(良好)」「赤(欠落要素)」「オレンジ(逸脱要素)」「白(情報が不十分)」の4つに自動的に色分けされて表示され、品質の修正が必要かどうかの判別に利用される。360度カメラで収集された画像は、それぞれのステータスごとにタグ付けされ、それらのタグをクリックすることで簡単に進捗が確認できる。

Scaled Roboticsのソリューションは、すでに複数の現場に導入され成果を出している。具体的な導入事例としては、オランダ最大級の建設会社Dura Vermeerや、英国を拠点とする建設サービス会社Kierなどの建設現場がある。そこでは、作業前に作られたデジタルモデルとリアルタイムの実際の現場が比較でき、大きなトラブルが発生する前に問題が早期発見されるようになったという。

(写真1)Scaled Roboticsの品質管理ソリューションで利用されている自律走行型の4輪ロボット(出典:Scaled Roboticsのホームページより引用) イメージ
(写真1)Scaled Roboticsの品質管理ソリューションで利用されている自律走行型の4輪ロボット
(出典:Scaled Roboticsのホームページより引用)

デジタルツインで建設現場の状況をリアルタイムに把握

オーストラリアのメルボルンに本社があるスタートアップYnomiaは、BluetoothセンサーやICタグ、およびモバイルアプリを組み合わせることで、建設現場で活動するさまざまなコンポーネント(物品)の状態をリアルタイムで追跡し、見える化するデジタルツインのソリューションを提供している。

Ynomiaは建設現場の業務効率が下がっているのは、現場の進捗状況や物品の状態が見える化されておらず、適切な人員配置が行われていないことに原因があると考えた。そこで、デバイス間でデータのやり取りを行うBluetoothセンサー技術を活用した、物品の見える化を現場に提供。Ynomiaが提供するBluetoothセンサーはわずかな電力を使用し、バックグランドでのネットワーク接続を必要とせずにスケーラブルで展開しやすいように設計されている。またYnomiaは、取得した情報をもとに視覚化し、分析につなげて学習するアルゴリズムも開発している。

以前は、毎週の工事進捗レポートを作成するのに4人がかりで合計1週間の作業が必要だったが、Ynomiaのソリューションを導入することで、最新の進捗情報が 1分ごとに自動提供されるようになったという。すでに、Ynomia はオーストラリアのブリスベンにある47階建てのタワーや、メルボルンにあるビクトリア大学 の32 階建てのタワーなど、大規模な建設プロジェクトでも導入されている。

(図1)Ynomiaが提供する建設現場のデジタルツインソリューション(出典:Ynomiaのホームページからの引用) イメージ
(図1)Ynomiaが提供する建設現場のデジタルツインソリューション
(出典:Ynomiaのホームページからの引用)

自動運転で重機を制御するシステムを構築

2016年に創業され、建築図面を作成するCADソフトAutoCADを開発したAutodeskの元CEOが出資しているアメリカのスタートアップBuilt Roboticsは、自動運転車に用いるセンサー技術を建設機械に応用した重機運転の自動化を目指している。また、Built Roboticsは、クラウドベースのリモート監視ソリューションも提供している。

Built Roboticsのソリューションでは重機の自動運転を実行するにあたり、建設現場において建造物・土木工事用に特別に設計されたソフトウェアを使って重機用の座標プログラムを作成し、実際に工事を行う地面の状態に即した座標情報を取得する。また、振動に弱いLIDARやGPSなどのセンシング装置については、大きな振動にも耐えられるように設計され、正確な位置情報の把握を可能にしている。さらに、GPSセンサーには拡張GPSと呼ばれる、センチメートル単位までの位置データを生成する技術を用いることで自動運転を可能にする。

なお、Built Roboticsは住友商事グループ傘下で、アリゾナ州他南西部11州で事業を展開して約800種類の高所作業車や建機などを取り扱う大手建機レンタル会社Sunstate Equipmentと、アメリカにおける自動化建機レンタル事業についての提携も行っている。


(動画)Built Roboticsの自動運転システムで動く重機
(出典:Built RoboticsのYoutube)

「未来図メディア」メールマガジン登録

5G×IoTの最新情報やイベント・セミナー情報を
いち早くお届けします。

ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ