衛星画像を使った広範囲の生育状況診断で農業のDXを促進 イメージ
#農業 #衛星 #宇宙 #DX #IoT

衛星画像を使った広範囲の
生育状況診断で農業のDXを促進

2023年12月4日

国際航業(https://www.kkc.co.jp/)は2017年の10月から、クラウド型の営農支援サービス「天晴れ(あっぱれ)」の提供を開始している。このサービスは、人工衛星やドローンを使って撮影した画像からさまざまな情報を読み取るリモートセンシング技術を、農地や農作物の生育状況診断に応用したものだ。宇宙開発案件のDXとして高く評価されているので、その事例を紹介する。

「天晴れ」は、人工衛星などで撮影した圃場の画像を解析し、農作物の生育状況を診断する。現在、水稲・小麦・大豆・牧草などが対象で、大豆は生育診断や収穫適期診断、小麦は穂水分率やタンパク含有率、牧草は雑草検出や不良植生割合、水稲はタンパク含有率などの分析結果を知ることができる。事前に予約しておけば、各適期に診断レポートが届く仕組みとなっており、生産現場の繁忙期の省力化を促進する。

「天晴れ」の小麦穂水分率マップ(出典:国際航業) イメージ
「天晴れ」の小麦穂水分率マップ
(出典:国際航業)
「天晴れ」の牧草地診断マップ(出典:国際航業) イメージ
「天晴れ」の牧草地診断マップ
(出典:国際航業)

このサービスは、大規模営農が多い、北海道で多く利用されている。北海道の酪農地帯では、雑草検出解析ならびに不良植生割合を算出する解析に利用。広大な草地情報を酪農家とともにデータを見ながら巡回することや打合せをすることが可能になり、全体像をタイムリーに情報共有できるようになった。

また、北海道の小麦農家では、収穫する順番を決めるために、穂水分を測る用途で活用。麦収穫期の穂水分率計測作業が50%以上削減できたという。

北海道東川町においては、東川町農業協同組合(JAひがしかわ)が中心となり、域内の水稲生産者の圃場状況把握を目的に「天晴れ」を活用し、収穫直前期に衛星データからの解析結果を購入。各生産者へ配布し、収穫適期の判断と刈り取り順の決定のための材料としてもらう取り組みを行った。

これにより、 圃場内の生育状態を目視による確認作業の労力を低減するとともに、衛星データ解析によって目視では確認できなかった細部の情報も得ることが可能となった。また圃場の状態が客観的なデータとして提示されるため、経験値が不足する新規生産者にとっては、ベテラン生産者の経験に代替する判断材料として活用することができるという。

天候の影響を受けにくいSAR衛星を活用

国際航業では、各種衛星画像を活用したリモートセンシング技術の向上に積極的に取り組んできた。人工衛星に搭載されたセンサによって、地表面の対象物から反射もしくは放射される電磁波をセンサで観測することにより対象物の情報を取得する。

人の目で見える可視光の波長域に加え、近赤外、短波長赤外、中間赤外、熱赤外などの光学センサは大気の影響を受けるため、大気中に雲があると地表面の情報を取得することはできない。一方、リモートセンシングで用いられる電磁波の波長帯は波長が長く、大気中に雲があっても透過して地表面の情報を取得することができる。このような波長域をマイクロ波と呼び、同社ではマイクロ波センサを搭載したSAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)衛星を活用している。

「天晴れ」における人工衛星からのリモートセンシングは、最小撮影面積1,000haから申込みができ、以後100ha単位で加算が可能だ。診断レポートは、生産者やグループ・団体ごとに小分けすることもできる。

該当する撮影面積は、耕地面積だけではなく、診断依頼する圃場全体(農道や畔などを含む)が対象。生産現場でユーザーが現地確認する指標に合わせて開発したことで、個人生産者から生産法人、JA、地域などの組織にて高品質化や高収量化、省力化、コスト削減、ノウハウ継承などを目的に利用が広がっている。

人工衛星画像データは観測頻度と高価格、天候によって観測自体が左右されることが多く、農業分野での実用化が難しいが、「天晴れ」では国内外の多数の地球観測衛星群での観測体制を構築し、提供プラットフォームをクラウド型サービスの体系とすることで、準リアルタイムでの情報配信や悪天候リスク回避率も高めている。

宇宙開発利用大賞 農林水産大臣賞を受賞

なお、「天晴れ」は、人工衛星画像の撮影依頼単位を他同種サービスと比較して小さくすることにより、個人生産者単位や各地域の時期特性に合わせた依頼を可能にしたことから、2020年 第4回 宇宙開発利用大賞 農林水産大臣賞を受賞している。

また、ユーザー自身が解析前画像を確認できる仕組みや、天候の影響により画像が入手困難な場合は費用が発生せず、一部に雲等の影響がある場合は値引き対応するなど、従来のリモートセンシング技術提供時のデメリットを解消し、人工衛星画像に馴染みがなかったユーザー層にも安心して活用できるユーザビリティ環境を構築した点も受賞理由に挙げられている。

他社との協業を進めて利用範囲を拡大

国際航業は、他社との協業を進め、「天晴れ」の利用範囲拡大を図っている。

2019年4月には井関農機と協業し、「天晴れ」で水稲のタンパク含有率を把握することで食味を想定し、食味の違いによる収穫の最適化を実現するとともに、施肥制御の精度の確認を行い次年度の施肥制御にフィードバックする取り組みを開始した。また、籾水分率の情報を活用することで、乾燥コストの削減や胴割れ軽減など品質の維持・向上を図っている。

井関農機とのサービス連携イメージ イメージ
井関農機とのサービス連携イメージ

2020年4月には、全国農業協同組合連合会(JA全農)と日本農業の活性化を目的に協業し、「天晴れ」のデータを、営農記録が集約されている「Z‐GIS(ゼット・ジー・アイ・エス)」上で閲覧できる環境を構築できるようにした。「Z‐GIS」は圃場情報をインターネットの電子地図と関連付けることで、農場管理を実現するシステム。どの圃場に何を作付けしているかを色で判別できる。また「収量」で色分けすれば、収量が低い圃場や地域を特定できるほか、管理項目(作物、品種、田植え日など)を地図上に文字で表示できる。

この協業により「天晴れ」の診断レポートデータを「Z‐GIS」上で表示可能な形式で提供できる。また、「Z‐GIS」上で表示した「天晴れ」の診断レポートと営農記録情報を照合し、効率化・省力化・高品質化・高収量化などの計画策定に活用できる。

「Z-GIS」上の「天晴れ」解析結果の表示例 イメージ
「Z-GIS」上の「天晴れ」解析結果の表示例

同社は今後も、「天晴れ」の対応作物と分析レポートの種類の拡大を図っていくという。

衛星データの農業への活用

衛星データの農業分野の活用は、「天晴れ」以外にも、行われている。

サグリが提供する「アクタバ」は、衛星写真を使用し、農地の荒れ具合を人工知能(AI)が判断し、「耕作放棄地率」という数値で表示する。農地を地図上で色分けして表示することで、耕作放棄地が一目で分かるアプリだ。実際に、千葉市農業委員会、岐阜県下呂市農業委員会、神戸市農業委員会が導入している。

「アクタバ」の画像(出典:サグリ) イメージ
「アクタバ」の画像
(出典:サグリ)

北海道大学 北方生物圏フィールド科学センターの後藤貴文教授を中心としたグループで行ったのが、「宇宙牛プロジェクト」だ。これは、地球観測、高精度測位という2種の衛星データを牛の飼養システムに利用することで、省力化はもちろん、コストダウンや肉質・肉量の最適化を目指すもの。地球観測衛星データを用いて、牧草地の生育状況を知り、放牧地を移したり、牛が食べる草の量を把握したりする。また、高精度測位を利用し、放牛の行動履歴データを取得・集積し、牛に与える補助飼料を最適化している。

農林水産省が全国各都道府県を対象に公表している水稲の作柄予測についても、衛星データを利用した新たな手法が導入された。アメダスの降水量、気温、日照時間、風速等に加え、衛星データの降水量、地表面温度、日射量、植生指数等を用いて、実測調査に係る業務を合理化しつつ、水稲作柄を予測している。

そのほか、北海道の22のJAでは、2022年、約650名の個人農家が、スペースアグリが提供する衛星データから得られる農作物の生育状況マップを活用。収穫予測日を推定し、刈取判断時のトラブル防止や作業効率化に繋げている。

このように農業領域の衛星データの活用が進んでいる。

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