物流の課題解決に期待されるレベル4によるドローン配送

2024年3月25日

ドローン配送による物流が注目を浴びているが、そもそもドローンのような小さな機体で運べる荷物の量や大きさには限界がある。したがって、通常の物流をすべてドローン配送に置き換えることは難しい。一方で、ドローン配送による物流には、無人配送やオンデマンド(即時)性、高速配送という3つの大きな特徴がある。こうした特徴を生かせば、これまでの輸送手段では対応が難しかった、物流や配送に関するさまざまな課題が解決できるかもしれない。

ANAが久米島でレベル4の実証実験を実施

ANAホールディングスは2023年11月6日より、沖縄県久米島町で有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行(レベル4)による、ドローン配送サービスの実証実験を実施した。この実証は、国土交通省物流・自動車局物流政策課の「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」に採択された、国の実証事業としての取り組みでもある。

2022年12月の航空法改正後に解禁となった、レベル4によるドローン配送の実施には、無人航空機の型式認証、操縦士ライセンス、運航管理のルールが必要だ。今回の実証でANAは、国土交通省航空局から「第一種型式認証」を取得したドローンベンチャーのACSLが製造した無人航空機「ACSL式PF2-CAT3型」や国家資格の「一等無人航空機操縦士」資格を保有した操縦士、および航空会社として培ってきた知見を活かした安全管理部門、運動管理部門、整備部門の飛行マニュアルによってレベル4の飛行承認を取得している。国内では、自社操縦士によるレベル4運航は今回が初めてとなった。

(図1)ANAによるレベル4のドローン配送サービス実証実験で使用されたACSLの無人航空機「ACSL式PF2-CAT3型」(出典:ANAのプレスリリースより引用) イメージ
(図1)ANAによるレベル4のドローン配送サービス実証実験で使用されたACSLの無人航空機「ACSL式PF2-CAT3型」(出典:ANAのプレスリリースより引用)

運航者1名でのドローン配送を実証

実証は久米島町のスーパーから久米島町真謝地区(約2.3km)で設定され、地域ボランティアとの連携を通じて、食料品や日用品を注文者の自宅まで配送するラストワンマイル物流を実施。地域住民を対象にドローン配送を告知し、電話で参加申込みを受け付け、住民説明会を実施した。

ANAホールディングスでは2018年よりドローン配送サービスの検討を開始し、これまで14回の無人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル3)の実証実験を実施しているが、レベル3では運航に少なくとも3人以上の人員を要していた。今回のレベル4による飛行では運航者1名での実施が可能となり、ドローン配送の課題の1つである運航の省人化にむけた検証に成功した。

(図2)実証実験が実施された久米島町のスーパーから久米島町真謝地区(出典:ANAのプレスリリースより引用) イメージ
(図2)実証実験が実施された久米島町のスーパーから久米島町真謝地区(出典:ANAのプレスリリースより引用)

レベル3からレベル4のドローン物流へ

ドローンによる無人配送は、過疎地などでの労働力不足の解決につながる。特にこの特徴が、今までの物流を置き換える分野になると注目されている。そのメリットを十分に発揮させるには、やはりレベル4での運用が必須になるだろう。レベル3とレベル4の運用の違いは、有人地域での飛行の有無だ。

例えば、レベル3のドローン配送では、飛行エリア外に絶対に機体が出ないという前提で実施しなければならない。そこで、人がエリア内に立ち入らない状況を作るために、立入禁止の看板を置いたり、監視のために補助者を立てたりするなどの立入管理措置を実施する必要がある。また、ドローンの飛行中も、常に飛行ルートの下に第三者がいないことを確認し続ける必要がある。

とはいえ、過疎地で通行量が少ない道路の上空などは、可能性が低いとはいえ地域住民が通過することもあるし、旅行客が入ってくることもある。そうした自体を防ぐために立入管理措置を実施すると、結局1つの荷物をドローンで運ぶのに、操縦者や補助者を合わせて5、6人の人員が必要になり効率が悪い。

レベル4になると有人であっても飛行が許されるので、こうした対応の必要がなくなる。例えば、補助者なしで離着陸場も無人にして、操縦者も1人当たり10機以上同時に動かせるようなシステムを導入すれば、複数の荷物を運ぶのに1人で対応できるので省人化が実現できる。道路上空を通過して最短距離で飛行できるので、商店街の軒先から離陸できるようになれば、さらにドローン物流のメリットや利便性が向上する。

(図3)ドローンを含む無人航空機の飛行レベルのイメージ(航空法の改正前)(出典:国土交通省「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会 中間とりまとめ(案)」より引用) イメージ
(図3)ドローンを含む無人航空機の飛行レベルのイメージ(航空法の改正前)(出典:国土交通省「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会 中間とりまとめ(案)」より引用)

災害対応でのドローン配送にも期待

ドローン配送のレベル4解禁は、災害時の支援物資の物流にも大きく貢献する。ドローン配送が持つオンデマンド性の特徴を活かせば、将来的にはGPSを使って、災害発生後でも短時間で荷物を届けたい場所に飛ばせるようになる。個々のドローンは小さくても、複数で使えば支援物資の輸送などに役立てるだろう。さらに、空を使った高速配送ができるので、被災地に自衛隊が歩いて荷物を持っていくよりも速く必要な場所に支援物資が届けられると期待されている。

課題は、日常からドローンを飛ばしておかないと、非常時だけ飛ばすことは難しいということ。そういった意味でも、早急にドローン配送を物流インフラの一部として確立させることが必要だろう。

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