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3分野のDXでスマートシティを推進する佐賀県武雄市の取り組みとは

2024年4月22日

佐賀県武雄市(https://www.city.takeo.lg.jp/)は、2023年10月、デジタル技術を活用して市民のニーズや「新しい日常」の構築を確実に進めるための基本的な考え方を示す「武雄市デジタルトランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定し、スマートシティを推進している。

3つのDXを推進

この計画の基本理念は「暮らしやすさを実感でき、持続していくスマートシティTAKEO」で、「市民の暮らしを向上させるサービスの実現」を目指す「市民DX」、「地域課題の解決と新たな価値の創出」を目指す「地域DX」、「デジタル技術を活用した行政事務の効率化」を行う「行政DX」の3つから成る。

同市は、これらのDXを推進する背景として、人口減少、少子高齢化を挙げる。人口減少、少子高齢化が進めば、医療・福祉サービス等の需要が増すとともに、それを支えるスキルを持った人材の確保も必須となる。また、自治体職員も今後減少していくことが予想されることから、限られた人的資源をいかに効果的・効率的に活用し、市民サービスの質を維持していくかは大きな課題だとしている。

また、災害時に被害を受ける可能性が高い人に、避難情報や気象情報をリアルタイムに発信し、確実に伝達することや、災害時は情報収集を行う職員のマンパワーも限られるため、いかに効率よく被害情報の収集を行い、分析・活用を行うかも課題だという。

3つのDXの施策(出典:武雄市) イメージ
3つのDXの施策(出典:武雄市)

市民DXでは、行政手続のスマート化やデジタル福祉サービスを拡充

市民DXでは、行政手続のスマート化、デジタル福祉サービスの拡充、公共交通と施設の利用最適化、デジタルディバイド対策を進める。

行政手続のスマート化では、スマートフォン等を使って、時間や場所に制約されず手続が行える環境と、来庁時の窓口での手続がスムーズに行える環境を整備する。デジタル福祉サービスの拡充では、高齢者のデジタル交流環境の整備と利用促進、医療と連携した健康管理の支援、健康診断オンライン予約の導入を通して、福祉サービスの効率化を図り、市民の生活品質向上を目指す。

公共交通と施設の利用最適化では、超小型EVなどのマイクロモビリティとの連携の最適化の研究、オンライン予約できる施設の利用申込サービスの導入、自動運転を含む新交通システムの検証を行い、公共交通や公共施設をより便利で快適に利用できるデジタルサービスを提供する。デジタルディバイド対策では、スマートフォン教室や相談会などを実施し、年齢、性別、障がいの有無や経済的な状況等に関わらず、誰もがデジタルを活用できるようデジタル格差解消を目指すという。

地域DXでは、デジタルインフラの整備やデジタル技術を活用した教育を推進

地域DXでは、デジタルインフラの整備 、デジタル技術を活用した教育の進化、地域の産業活性化と起業支援、防災力向上と災害時の支援迅速化を実施。

デジタルインフラの整備では、オープンデータの収集と整備やキャッシュレス化の推進、マイナンバーカードの利活用拡大のほか、デジタルアーカイブ、オンラインアンケートを導入し、地域社会全体のデジタル参画を推進して、生活の利便性の向上と新たなビジネス機会を創出することを支援する。 デジタル技術を活用した教育の進化では、デジタルを活用した新たな教育環境の構築、AI技術の利用促進、学校、地域でのデジタルリテラシー教育の推進、ネットワーク環境の維持・向上を行い、デジタル技術を活用した優れた学習機会を提供するという。

地域の産業活性化と起業支援では、ドローンやIoT等のデジタル技術の導入支援、データ分析による生産性向上やリスク管理支援、品質管理とブランド構築、販路拡大の支援、観光客の満足度向上など、地場産業のデジタル活用による地域の魅力向上とともに、新たな事業やスタートアップの創出を促進する。 そして、防災力向上と災害時の支援迅速化では、デジタル技術による情報収集、共有能力の向上、防災アプリの利用促進、罹災証明交付等の被災者支援の迅速化によりデジタル技術による防災情報を充実させ、平時から利用することで防災力の向上につなげる。

行政DXでは、情報システム標準化や業務プロセスの最適化を実施

行政DXでは、情報システム標準化・共通化、業務プロセスの最適化、AI・RPAの利用促進、デジタル人材育成と基盤強化の4つの施策を実施。

情報システム標準化・共通化では、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づき、対象業務について令和7年度(2025年度)を目途に標準準拠システムへ移行し、広域運用中の住民情報系システムの標準化を行う。 業務プロセスの最適化では、市役所窓口だけでなく、バックオフィスも含めた業務プロセスの見直しの実施や文書管理システムの導入と電子決裁を推進し、市役所で取り扱う情報資産を紙からデジタルへ移行させ、ペーパーレス化・押印省略を進め業務の最適化を図る。

AI・RPAの利用促進では、各業務の業務改革(BPR)の実施や効率化等が見込まれる業務から順次AI・RPAなどのデジタル技術を導入し、事務作業の効率化・自動化を推進して、相談業務や政策立案など、人でしか行えない業務へ注力できるようにする。そして、デジタル人材育成と基盤強化では、全職員向けのデジタル化及びセキュリティ研修の実施、コンピュータウィルス等による攻撃を受けた場合を想定した防護策を実施して、職員のデジタル化への意識を高める。また、セキュリティ対策や個人情報保護対策を徹底して、行政サービスの安全性を確保するという。

DX推進委員会を設置して推進

これらのDXは、副市長をCDO(最高デジタル責任者)とするDX推進委員会を設置し、施策に応じたプロジェクトチームを編成して、令和9年度(2027年度)までに実施する。

DXのスケジュール(出典:武雄市) イメージ
DXのスケジュール(出典:武雄市)

また、市民団体や事業者、ソフトウェア協会、 大学等で構成される武雄市スマート シティ推進協議会が、市に対して助言を行う。具体的には、スマート シティ推進協議会は、スマートシティの実現へ向けて、官民が連携した施策の推進、DX推進計画の策定への意見、個別事業の検証、DX推進に必要なデータや技術を活用した情報、施策の発信を行う。

なお、ソフトウェア協会(SAJ)は2022年5月に武雄市と「包括連携協定」を締結。教育・福祉・文化の振興、発展やまちづくりに関すること、地域産業の振興、発展やスマートシティの推進に向けた取組に関して連携する。

協定式の様子(出典:SAJ) イメージ
協定式の様子(出典:SAJ)

その一環でSAJは、今年の3月、人流データプラットフォームを開発しサービスをリリースした。具体的には、データの収集は人流分析カメラシステム(ネクストウェア)、多言語情報サイト(システムシンク)、流動人口データ(Agoop)、デジタルサイネージ(ビーティス)、災害シミュレーション(フォーラムエイト)、進行管理・移動検索コンテンツ(ヴァル研究所)、データ基盤開発(オープンストリーム)が参画。各社のシステムをデータ基盤で連携することで、可変性や拡張性の高いシステム構築が可能な体制をとる。

同市の具体的なDXの成果として、昨年の10月から、市役所の窓口に出向くことなく、24時間365日、いつでもどこでも申請・届出ができる「オンライン市役所」を開始した。「オンライン市役所」では、各種証明書の申請や証明書の受け取りや窓口相談の来庁予約、暮らしの相談が行える。

教育関係では、学校間での指導案の検討、情報提供をGoogle Chatを用いて行ったり、各学校の通学路の点検と危険個所の報告を学校と教育委員会でGoogle マップを共有し、必要事項を入力している。さらに、欠席連絡や学校評価アンケート、授業参観、奉仕作業の出欠確認の回収と集計の自動化も行っている。

同市のこういった先進的な取り組みは、今後、DXを進める他の自治体の参考になるだろう。

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