ドローンタクシーが実用化するって本当?日本・中国など各国の開発状況や課題を解説

2023年10月2日

ドローンタクシーは「 空飛ぶクルマ 」とも呼ばれ、次世代の交通手段として活用が期待されている。日本を含む世界各国でドローンタクシーの開発が進められているが、「本当に実現可能なのか」と疑問を抱く人もいるだろう。

この記事では、 ドローンタクシーの意味や定義、各国の開発状況、課題を紹介する。 新たな移動手段の開発がどのように進められているかを見ていこう。

ドローンタクシーとは

ドローンタクシーとは、 人を乗せられる大きさの ドローン が、空を飛んで乗客を目的地まで運ぶサービスのことを指す。

ドローンタクシーは「空飛ぶクルマ」の一種で、国土交通省は「空飛ぶクルマ」を、「電動」「自動操縦」「垂直離着陸」が一体となった次世代の移動手段であると説明している。

一般的に海外では、都市部で短距離かつ低高度で運航する空飛ぶクルマは「UAM(Urban Air Mobility)」と呼ばれている。また、電動の垂直離着陸機を表す「Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft」を省略し、「eVTOL」と呼ばれることもある。

ドローンタクシーとヘリコプターは一見すると同じような機体に思えるが、 ドローンタクシーは無人操縦で、ヘリコプターは有人操縦である点が大きな違いとなる。

ドローンタクシーは、IoTやAIなどの最新技術を活用して新しい価値づくりに取り組む「 スマートシティ 」に受け入れられやすい。

なお、スマートシティについては、 世界のスマートシティランキング や、 スマートシティとは?~概念から取り組みの事例・現状課題までをわかりやすく解説~ の記事もチェックしてみてほしい。

参考: 空飛ぶクルマについて|国土交通省

ドローンタクシーの実用化が必要な理由

ドローンタクシーの実用化によって「 点から点へ 」移動できる社会が実現し、 さまざまな社会課題の解決につながる。

たとえば、都市部では人口集中によって発生する交通渋滞の解消につながり、地方の限界集落では新たな移動手段としてドローンタクシーを活用できる。

また、ドローンタクシーが社会実装されることで、ドローン保険や機体開発、インフラ整備など周辺サービスへの需要も高まり、 日本の産業発展につながると考えられている。

日本が後押しする「空の移動革命に向けたロードマップ」

日本政府は「 空の移動革命に向けたロードマップ 」を策定している。ロードマップには、空飛ぶクルマを身近な空の移動手段とするために、官民が取り組むべき技術開発や法整備がまとめられている。

ロードマップによると、 2025年の関西万博において空飛ぶクルマの商用飛行を実施し、認知度を高める予定である。 その後、都市部での二次交通や、地方における観光の交通手段として商用運航を本格化する計画が示されている。

参考: 空の移動革命に向けたロードマップ(改定案)|経済産業省

各国におけるドローンタクシーの開発状況

各国におけるドローンタクシーの開発状況 イメージ

続いて、日本や海外におけるドローンタクシーの開発状況を紹介する。

企業・プロジェクト 概要
日本 株式会社SkyDrive 利用者が予約すると「空飛ぶクルマ」が自動運転で迎えにくる社会の実現を目指して、サービスを展開中
大宝タクシー株式会社 空飛ぶタクシー事業に参入
アラブ首長国連邦 ドバイ国際空港ターミナル 設計事務所の「Foster + Partners」が、空飛ぶクルマ専用のターミナルを、ドバイ国際空港の隣に建設することを発表
中国 EHang社 AAV(自律型無人航空機)製品を技術開発しており、中国内で9,300回の飛行実験に成功している
ドイツ Volocopter社 完全電動飛行の空飛ぶクルマを開発し、2024年には、空港運営への出資などを手がける「ADPグループ」とともに、パリで空飛ぶクルマの運航サービスを開始予定
アメリカ Wisk Aero社 日本航空(JAL)と提携し、日本で自律飛行による日常的なフライトの実現を計画中
Joby Aviation社 静かに運航する機体を開発しており、日本のトヨタ自動車株式会社やANAホールディングス株式会社と提携し、日本市場にライドシェアサービスを導入

それぞれ、詳しく見ていこう。

日本|株式会社SkyDrive

株式会社SkyDriveは、eVTOL(空飛ぶクルマ)と物流ドローンの開発や製造、販売、運航サービスを提供する日本企業。 利用者が予約すると、自動運転で空飛ぶクルマが迎えにくる社会の実現に向けて、サービスを展開している。

株式会社SkyDriveは、関西万博の「 未来社会ショーケース事業出展 」において、空飛ぶクルマの運航を実施する事業者に選定されている。関西万博では、会場内外の2地点間で空飛ぶクルマの運航を行う予定である。

参考: SkyDrive、2025年大阪・関西万博『未来社会ショーケース事業出展』の 「スマートモビリティ万博」における空飛ぶクルマの運航事業者に選定|株式会社SkyDrive

日本|大宝タクシー株式会社

大正15年創業の老舗タクシー会社である、大宝タクシー株式会社も 空飛ぶタクシー事業に参入し、2025年の関西万博でeVTOL(空飛ぶクルマ)の運航を披露する。

(出典:大宝タクシー株式会社|大宝タクシーは2025年に空を飛びます。) イメージ
(出典:大宝タクシー株式会社| 大宝タクシーは2025年に空を飛びます。

タクシーと同様に初乗り680円、10秒ごとに250円を加算する料金体系で、大阪市内を遊覧しながら飛行するルートを予定している。

参考: 大宝タクシーは2025年に空を飛びます。|大宝タクシー株式会社

アラブ首長国連邦|ドバイ国際空港ターミナル

2023年4月、設計事務所の「Foster + Partners」が、 eVTOL(空飛ぶクルマ)専用のターミナルをドバイ国際空港の隣に建設すると発表した。

eVTOLの飛行はドバイで人口の多い人気の地域を結び、CO2を排出しないゼロエミッションの移動を実現する。

ターミナルは、eVTOLの離着陸を容易にするために高架デッキ上に設置され、建物が空港を取り囲むように配置される。 さらに、ターミナルを地下鉄の駅と隣接させることで、ドバイでのスムーズな移動を実現する予定だ。

参考: Foster + Partners develops concept design for Dubai vertiport terminal|Foster + Partners

中国|EHang社

中国のEHang社は、AAV(自律型無人航空機)の技術開発におけるリーディングカンパニーである。 さまざまな業界にAAV製品を提供し、安全で環境にやさしい空の移動の実現に向けて事業を展開している。

(出典:EHang|Company News) イメージ
(出典:EHang| Company News

2023年の時点で、EHang社は広州などの中国18都市20カ所で、9,300回以上の飛行試験を成功させている。2022年には、空のモビリティプラットフォームを開発する日本の株式会社AirXと事業提携し、EHang社が開発するAAVを日本で利用できるよう手配している。

参考: AirX、中国の「空飛ぶクルマ」メーカーEHang(イーハン)社と販売パートナー契約を締結|PR TIMES

ドイツ|Volocopter社

ドイツのVolocopter社は、 完全電動飛行のeVTOL(空飛ぶクルマ)を開発している。 2023年6月に開催された「第54回パリ国際航空宇宙展(パリ・エアショー)」にて空飛ぶクルマを披露したことで、話題となった。

(出典:Volocopter|THE LATEST from the UAM pioneer) イメージ
(出典:Volocopter| THE LATEST from the UAM pioneer

2023年にVolocopter社は、 空港運営への出資などを手がけるADPグループとともに、2024年夏にパリでeVTOLの運航サービスを開始予定であることを発表。 既存の公共交通システムに追加されることで、パリがヨーロッパで初めてeVTOL運航サービスを提供する都市になる予定である。

参考: Groupe ADP & Volocopter at Forefront of Electric Urban Air Mobility: A World First in Summer 2024|Volocopter

アメリカ|Wisk Aero社

アメリカのWisk Aero社は、eVTOL(空飛ぶクルマ)のエア・タクシーを開発する製造会社である。 10年以上の実績と1,600回以上のテストフライトで、未来の移動手段を実現しようとしている。


(出典:Wisk AeroのYouTube| Wisk Aero Partners with Japan Airlines!

2023年5月、 Wisk Aero社は日本航空(JAL)と自律走行による日常的なフライトを日本で実現するために提携したと発表。 さらに、 株式会社JALエンジニアリングと協力し、Wisk Aero社が提供するエア・タクシーの保守・運用計画を策定する。

参考: Wisk Aero and Japan Airlines Partner to Bring Autonomous, Everyday Flight to Japan|Wisk Aero

アメリカ|Joby Aviation社

アメリカのJoby Aviation社は、 6つの電気モーターを動力源とするeVTOL(空飛ぶクルマ)を提供している。

同社は、利用者の家の近所に着陸しても問題ないほど静かに運航する機体を開発。アプリで気軽に予約できる、空中のライドシェアサービスを実現する。

(出典:Joby Aviation|Joby Applies for Japan Aircraft Certification) イメージ
(出典:Joby Aviation| Joby Applies for Japan Aircraft Certification

2022年10月に国土交通省は、 Joby Aviation社の航空法に基づく型式証明申請を受理したと発表した。

2018年にJoby Aviation社はトヨタ自動車株式会社を戦略的パートナーとして投資を受け入れるなど、もともと日本とつながりがあった。また、ANAホールディングス株式会社とも提携し、日本市場にライドシェアサービスを導入している。

参考: Joby Applies for Japan Aircraft Certification|Joby Aviation
米国 Joby Aviation からの空飛ぶクルマの型式証明の申請受理について|国土交通省

ドローンタクシーの課題

2023年9月時点において、ドローンタクシーのほとんどは実証実験フェーズにあり、本格的な活用には課題が残る。ここでは、次の2つの課題を解説する。

技術課題による安全性の確保
法整備が必要となり実用化に時間がかかる

それぞれの課題について、詳しく見ていこう。

技術課題による安全性の確保

ドローンタクシーは、飛行中や離着陸時の安全性を確保できるかが課題となっている。

具体的には、 飛行能力、着陸支援機能、バッテリー技術、ボディの軽量化などの技術課題が挙げられる。

機体の安全性向上や高性能化が実現できない限り、社会実装は難しいといえるだろう。

法整備が必要となり実用化に時間がかかる

現在の航空法では、通常のドローンのような無人航空機は「 構造上人が乗ることができないもの 」として捉えられる。

また、無操縦者航空機は大型飛行船に限られているため、比較的コンパクトなドローンはこれに当てはまらない。

将来的に無人操縦の空飛ぶクルマも対象になる可能性があるが、 法整備に手間取ると実用化の足枷になる恐れがある。

まとめ

世界各国で開発が進むドローンタクシーは、2025年に開催される関西万博で運航され、その後本格的な社会実装に進むと想定されている。ドローンタクシーには技術的または法的な課題が残るが、開発や実証実験を進めるなかで解消されると期待したい。

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