関西電力や大阪ガスによる関西万博を見据えた実証実験を紹介

2023年8月21日

大阪府と大阪市は2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催を機に、革新的なテクノロジーによって住民のQoLを向上させるスマートシティ化を目指している。2020年3月には、スマートシティ化に関わるプロジェクトを展開する「スマートシティ戦略ver.1.0」を策定。2022年3月には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う新しい生活様式の提唱や、国のデジタル政策の強化などスマートシティを取り巻く環境の変化を踏まえた「大阪スマートシティ戦略ver.2.0」を策定し、さまざまな企業との共創の取り組みを進めようとしている。

関西電力がマイクロコミュニティを実現するスマートポール実証実験を実施

2025年日本国際博覧会協会と大阪商工会議所は、2021年1月18日から2月19日まで、大阪・関西万博の会場予定地となっている夢洲での実証実験提案を公募。2021年5月31日には、39件の応募案件の中から9件が採択されたと発表した。その1つ「マイクロコミュニティを実現するスマートポール実証実験」では、関西電力グループが2022年1月から6月まで太陽光発電によるスマートポールへのエネルギー供給をはじめ、スマートフォンへのワイヤレス充電やWi-Fi機能の性能を検証した。

さらに実験では、塩害や風害によるスマートポールの耐候性(塩害、風害)や非接触充電ドローンポートの性能(自律飛行による着陸~充電~離陸の検証)、ポールに設置したカメラとドローンを活用した防犯機能・見守り機能の有効性などについても検証。見守り機能として、例えば迷子の捜索時にスマートポールに搭載されたカメラを通じてAIが子どもを捜し出し、現場に急行させたドローンで親がその場に着くまで見守る仕組みを実装しようとしている。

2022年6月24日に公開された実証実験の検討結果では、海沿いに立地する万博会場予定地で集められた塩害や風害に関するデータによって、ドローンの運航が海風に影響されやすいことが分かったなどの課題が報告された。スマートポールにはデジタルサイネージ(電子看板)やスピーカーも搭載されているので、会場内の複数の地域に設置し、混雑情報の提供に生かすことも検討しているという。

(図1)関西電力グループが実施した実証実験で使われたスマートポールの概要(出典:関西電力の資料より)
(図1)関西電力グループが実施した実証実験で使われたスマートポールの概要
(出典:関西電力の資料より)

大阪ガスが放射冷却素材の価値検証に関する実証実験を実施

大阪ガスは2021年8月26日、素材メーカーのSPACECOOLとNTN、カンボウプラス、セイリツ工業、竹中工務店と共同で、「夢洲での実証実験提案」に採択された「放射冷却素材SPACECOOLによる省エネ性や快適性などを評価する実証実験」を開始したと発表。SPACECOOLが開発した「SPACECOOL素材」は、宇宙に熱を逃がすことで外気温よりも温度を低下させる放射冷却素材で、大阪ガスによれば直射日光が当たった状態で表面温度が外気温より最大約6℃低くなったことが確認できたという。

今回の実験では、実使用に近い環境における「SPACECOOL素材」の省エネ性、快適性の効果などを検証・評価することを目的としている。大阪ガスはSPACECOOLと、2トントラックの荷台の外装に「SPACECOOL素材」を施工し、荷台内部の温度上昇を抑制する効果を検証。NTNとは、同社の移動型独立電源の外装に「SPACECOOL素材」を施工することで得られる省エネ効果を検証した。

さらに大阪ガスはカンボウプラスと、キャンバス素材と「SPACECOOL素材」を一体化した膜材で実験用テントを製造・設置。普通のテントと比較したテント内の快適性や内部温度などを評価した。セイリツ工業、竹中工務店とは、分電盤の外装に本素材を施工し、分電盤内の温度上昇を抑制する効果を検証している。

こうした実証実験によって、SPACECOOLは2023年3月23日、大阪・関西万博において日本ガス協会が出展するガスパビリオンに、「SPACECOOL素材」による膜材料が採用される見込みとなったことを発表した。

(図2)放射冷却素材「SPACECOOL」の原理(出典:大阪ガス・SPACECOOL・NTN・カンボウプラス・セイリツ工業・竹中工務店のプレスリリースより)
(図2)放射冷却素材「SPACECOOL」の原理
(出典:大阪ガス・SPACECOOL・NTN・カンボウプラス・セイリツ工業・竹中工務店のプレスリリースより)

大阪メトロが自動運転を活用した未来社会の実装検討を実施

大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は2022年2月15日、「夢洲での実証実験提案」に採択された「自動運転を活用した未来社会の実装検討」として、次世代の交通管制システムの提供を目指す実証実験を2022年3月1日から4月26日まで実施すると発表。

実験では、夢州に隣接する舞洲スポーツアイランド内に万博会場を想定した1周約400メートルのテストコースを整備し、複数台の自動運転車両を運行させることで、自動運転レベル4(高度運転自動化)での自動運転の一元管理の課題抽出と、非接触充電による電動モビリティへの充電制御に関するエネルギーマネジメントの技術検証を行った。

また、MaaSアプリ・顔認証、自動運転、車内コンテンツ、低速自動運転・パーソナルモビリティ、モビリティの管理、信号協調、道路での非接触充電・発電、保険・リスク管理など、計11にもおよぶ検証テーマを一般参加者にも体験してもらいながら実施。より渋滞の少ない、エネルギー効率のよい次世代都市交通システムの構築を実証した。

さらに大阪メトロは2022年12月1日、舞州スポーツアイランドにおいてNTTコミュニケーションズなど6社と自動運転バスの実証実験を開始。専用のテストコースにおいて一定の条件下で運転を完全自動化するレベル4走行を2023年1月末まで行い、大阪・関西万博での導入を目指すと発表した。

(図3)舞州で行われた「自動運転を活用した未来社会の実装検討」のイメージ(出典:2025年日本国際博覧会協会のプレスリリースより)
(図3)舞州で行われた「自動運転を活用した未来社会の実装検討」のイメージ
(出典:2025年日本国際博覧会協会のプレスリリースより)

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