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デジタル御朱印から花火打ち上げ体験まで 地域の観光資源をNFTで購入

2024年7月8日

近年、イラストや写真など簡単にコピーできるデジタルデータに対して、ビットコインなど暗号通貨を安全に流通させるブロックチェーン技術「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」を適用した、コンテンツの流通市場が新たに生まれようとしている。観光産業においてもNFTの活用によって、旅行者のリピーター化や関係人口化の促進、観光資源・文化のデジタル保存などを活発化させる動きが見えてきた。観光のDXとも言える取り組みだ。

デジタルコンテンツに唯一無二の価値を与えるNFT

NFTとは、「代替不可能なトークン(通貨)」のことだ。そもそも、どういったものが「代替可能」なのか。例えば、一万円札は日本銀行によって耐改ざん性が保証されているので、誰が持っていても同じ紙幣の価値を持ち代替(交換)可能だ。同じように、ブロックチェーンで耐改ざん性が保証されているビットコインのような暗号通貨も代替可能だ。

一方で、「代替不可能」なものの例としては、著名な画家が描いた絵画や作家の直筆原稿などがあるが、これらは唯一無二の価値を持つため、オークションなどによって高額で取り引きされる。NFTはこの「代替不可能」という性質を、デジタルデータに持たせる技術だ。NFTを適用することで、パソコンで作ったイラストや動画などのデジタルデータ、ゲーム内で生み出した独自のキャラクターなどに、コピーおよび改ざんができない唯一無二の資産価値を付与できる。

こうしたNFTの仕組みを観光産業でも活用すると聞いても、ぴんとこないかもしれない。だが、日常から離れた旅先での体験や思い出も唯一無二の価値を持つと考えると、観光とNFTは案外相性がよさそうだ。例えば、最近は旅の途中で有名な神社に立ち寄ったら、参拝の記念として御朱印を押してもらう人が増えている。三重県明和町の竹神社では、2022年8月から御朱印をデジタルでも発行する取り組みが行われている。NFTによって、デジタル御朱印はコピーされたものではなく、現地で発行されたオリジナルデータであることが証明される。

(図1)三重県明和町の竹神社が発行する「竹神社デジタル御朱印」は月替わりで12種類ある(出典:明和観光商社のプレスリリースより引用) イメージ
(図1)三重県明和町の竹神社が発行する「竹神社デジタル御朱印」は月替わりで12種類ある(出典:明和観光商社のプレスリリースより引用)

NFTでツーリズム産業を支援する協会が設立

一方、NFTは旅の思い出の証明だけではなく、各地域の観光資源を応援するデジタルチケットの販売にも活用されようとしている。2022年4月に設立された一般社団法人日本NFTツーリズム協会は、「NFTで日本のツーリズム産業をアップデートする」をミッションとしており、NFTを活用して観光業界におけるデジタル商品の造成や観光資源の保存と収益化の両立、事業開発のための資金調達などを支援する。

同協会が2024年1月にオンラインで開催した「ツーリズム×NFTフォ-ラム2024冬季」では、国連会議で発表されたプロジェクトから世界遺産における伝統行事での活用、JTBグループの取り組みまで、観光産業に多くの可能性や課題解決の方向性を示すNFTのテーマが発表された。

その1つ、鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市の離島である甑島(こしきしま)の取り組みは、NFTを活用してクラフトビール工房建設への協力を募り、観光客の誘致と雇用拡大を実現するプロジェクトだ。ビール工房の建設資材から、ビール製造開始後の顧客・取り引き先の開拓などに至るまでの権利をNFTで販売し、離島産業として期待されているビール工房事業を楽しんでもらう。

(図2)ビール工房の建設資材をNFTで販売(出典:離島ビール工房のWebページより引用) イメージ
(図2)ビール工房の建設資材をNFTで販売(出典:離島ビール工房のWebページより引用)

各地で立ち上がるNFTによる新たな観光振興の取り組み

その他にも、各地でNFTを活用した新たな観光振興の取り組みが進んでいる。2024年3月29日には、モバイルに特化したメタバースを提供するXANA(ゼナ)と手塚プロダクション、JTB及びJCBの合弁会社であるJ&J事業創造の3社が、メタバース「XANA」上で地方創生をテーマとした「遊びながら学べるゲーム」の提供で長野県とタイアップしたと発表。ゲームの中でユーザーは、メタバースの中で日本各地の魅力や文化が詰まったNFTを自分の資産として所持。それらを使って遊んだり、売買したりすることができるマーケットプレイス「XANA NFT」を3社が提供する。

長野県は鳥取県、岡山県に続く「XANA NFT」におけるご当地コラボレーションの第3弾として、「鉄腕アトム」と県内の観光地や観光資源がコラボレーションしたNFTトレーディングカードを販売。長野県の魅力である自然・文化体験など、豊かな地域資源を活かす観光コンテンツを活用した、新たなインバウンド向け観光プロモーションを推進していく。

(図3)長野県の観光資源を舞台したNFTトレーディングカード(出典:NOBORDERZのプレスリリースより引用) イメージ
(図3)長野県の観光資源を舞台したNFTトレーディングカード(出典:NOBORDERZのプレスリリースより引用)

2024年3月24日には日本航空と博報堂の共同実証実験「KOKYO NFT」の1つとして、北海道洞爺湖のイベント「洞爺湖ロングラン花火」において、自分たちでプロデュースしたオリジナル花火の打ち上げが体験できる「洞爺湖 花火NFT」の販売が開始された。

「KOKYO NFT」は地域の特別な体験や現実資産を、希望者がNFTで購入する実証実験。「洞爺湖 花火NFT」では、創業100年を超える伝統を持つ花火製造所による花火の打ち上げ体験を3万6,300円(税込)で販売する。購入者には花火製造ワークショップへの参加権も提供され、打ち上げ当日は観覧船に乗って洞爺湖の湖上から自分たちが作った花火が鑑賞できる。

(図4)「洞爺湖 花火NFT」では花火の打ち上げ体験を販売(出典:洞爺湖温泉観光協会のWebページより引用) イメージ
(図4)「洞爺湖 花火NFT」では花火の打ち上げ体験を販売(出典:洞爺湖温泉観光協会のWebページより引用) イメージ
(図4)「洞爺湖 花火NFT」では花火の打ち上げ体験を販売(出典:洞爺湖温泉観光協会のWebページより引用)

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