業界一体となって自動化やDXに取り組む食品分野

2024年12月2日

現在、日本の製造業においてはほとんどの産業分野で、「労働力不足」や「原価高騰」などへの対応が喫緊の課題となっている。特に労働力不足に関しては、今後も長期にわたって人口減少が続くことを考えると、抜本的な対応策が必要になる。そうした対応策の一つと考えられているのが、製造工場における自動化やDX活用であり、最近では工業製品分野だけではなく食品分野でも、こうした改革に積極的に取り組もうとしている。

「未来型食品工場コンソーシアム」結成

長年日本の食品産業を支えてきた、カゴメ、キューピー、永谷園、ニチレイフーズ、日清製粉グループは2024年7月4日、調理ロボットや業務ロボットの製造を手がけるTechMagic株式会社と共同で、食品工場が抱える非競争領域の共通課題の解決を目標に「未来型食品工場コンソーシアム」を結成したと発表した。

「未来型食品工場コンソーシアム」では非競争領域の共通課題に対して、高度なロボットテクノロジーを活用し、持続可能な食インフラの構築を目指そうとしている。具体的には、持続可能な食品工場の構築に必要な産業課題の抽出や要求仕様の策定、共通基盤の構築、他の企業の製造プロセスの効率化に向けた最先端な取り組みに関する勉強会などを通じて、食品工場の未来について協議・協力するという。

また、コンソーシアムで協議した課題に対して、共同開発プロジェクトを立ち上げてソリューション開発に取り組む。まずは各社の共通課題である秤量工程の自動化に向けた分科会を立ち上げ、解決策を検討する。そして、コンソーシアム参画企業とTechMagicが食品製造に関わるロボットなどを共同開発することで、開発コストの分散からソリューションの汎用化、専門的な技術やノウハウの共有、市場導入のスピードアップなどを図っていく。コンソーシアムではこれらの取り組みが、各社の課題解決のみならず、食産業全体の課題解決に寄与できるものと捉えている。

(写真1)左から、カゴメ 取締役執行役員 生産調達本部長の葉色義久氏、キューピー 取締役 常務執行役員の渡邊龍太氏、TechMagic 代表取締役社長の白木裕士氏、永谷園 取締役 生産本部長の相澤直史氏、ニチレイフーズ 常務執行役員 生産統括部付部長 兼 生産統括部国内生産管理部長の山本友紀氏、日清製粉グループ本社 取締役常務執行役員 技術本部長の髙𣘺誠一郎氏(出典:TechMagic株式会社のプレスリリースより) イメージ
(写真1)左から、カゴメ 取締役執行役員 生産調達本部長の葉色義久氏、キューピー 取締役 常務執行役員の渡邊龍太氏、TechMagic 代表取締役社長の白木裕士氏、永谷園 取締役 生産本部長の相澤直史氏、ニチレイフーズ 常務執行役員 生産統括部付部長 兼 生産統括部国内生産管理部長の山本友紀氏、日清製粉グループ本社 取締役常務執行役員 技術本部長の髙𣘺誠一郎氏(出典:TechMagic株式会社のプレスリリースより)

食品分野における非競争領域の共通課題とは

「未来型食品工場コンソーシアム」が取り組もうとしている、「食品分野における非競争領域の共通課題」とはなにか。今、日本の食品会社は規模の大小に関わらず、円安や原材料価格の高騰、利益率の低下、労働力不足などの問題が山積している。さらに、人口減少は労働力不足だけでなく、食品需要の減少にもつながる。こうした、1社だけでは解決できない共通課題に対して、企業同士が連携して解決を目指そうとしているのが「未来型食品工場コンソーシアム」というわけだ。

今回のコンソーシアム設立にロボット製造業として関わっているTechMagicは、こうした非競争領域の共通課題の中でも、製造工程の効率化や人材の有効活用などの解決に貢献しようとしている。TechMagicでは、これまでにも食品分野でさまざまな業務効率化を図るロボットを製造してきた。例えば「調理ロボット」は、飲食店におけるオーダーから調理まで、厨房における一連の工程を自動化する。テーブルに設置されたタブレットからのオーダーに応じて、自動で料理を作るだけではなく、食材やソースの自動供給の他、熟練のシェフの味やレシピをデータベース化して料理を再現することもできるという。

また、「業務ロボット」は、食品工場での調理に付随する単純作業を自動化。固形や不定形物の盛付けや洗浄室での食器の仕分けなど、調理に付随した作業を担うことで人手不足の解消を図る。機械学習を活用し、ロボットアームの自律動作を実現して業務を自動化することも可能だ。

(写真2)シェフのレシピを自動で再現しながら炒飯・野菜炒めなどを調理するTechMagicの「調理ロボット」(出典:TechMagic株式会社のプレスリリースより) イメージ
(写真2)シェフのレシピを自動で再現しながら炒飯・野菜炒めなどを調理するTechMagicの「調理ロボット」(出典:TechMagic株式会社のプレスリリースより)

業界が一体となった取り組みに期待

一方、「食品分野における非競争領域の共通課題」への取り組みは、物流の領域にも広がっている。食品業界では、「食卓に届くまでに無駄が多い」ことも共通課題とされているが、その解決には工場から流通倉庫、さらにその先の小売店を結ぶ物流の効率化が必須だ。

2024年10月22日には、味の素、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループ、ハウス食品グループを株主とする運送事業者F-LINEが、株式会社T2が開発した自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験を高速道路の一部区間で実施すると発表。食品分野では1社だけでは解決できない、物流に関わるトラックドライバー不足という共通課題を、「競争は商品で、物流は共同で」を基本理念としながら各社の共創によって解決しようとしている。

(写真3)実証実験は2025年2月から関東・関西間の高速道路の一部区間で実施される(出典:株式会社T2のプレスリリースより) イメージ
(写真3)実証実験は2025年2月から関東・関西間の高速道路の一部区間で実施される(出典:株式会社T2のプレスリリースより)

これまでの食品業界は自動化やDXなどの改革が遅れていた分野だけに、今後業界が一体となってどのように業務改善が進んでいくのか注目される。

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