注目の製造業向けスタートアップAIソリューション
目次
製造業企業が進めるDXにおいて、スタートアップの独自技術を使った業務の効率化が注目されている。特にAIを活用したソリューションは、多くの大手企業に採用されている。ここでは、そのようなスタートアップの製品をいくつか紹介する。
知能ロボットコントローラを提供するMujin
株式会社Mujin(ムジン)は知能ロボットコントローラ「Mujinコントローラ」を提供しており、ピッキングや組み立て工程などでのロボットの自動化を可能にしている。カメラで空間や製品を認識するロボットビジョンシステム「Mujinビジョン」、ロボットハンドの「Mujinハンド」、無人搬送車のAGVをまとめて制御し、知能ロボットシステムを実現している。

「Mujinコントローラ」(出典:株式会社Mujin)

「Mujinコントローラ」がロボットセル全体を統合制御(出典:株式会社Mujin)
Mujin独自のソフトウェアプラットフォームは、3Dビジョンシステムやロボットハンドアーム、各種センサー類を一括制御することで、最適なロボット動作を計算・生成する。また、事前にロボット動作を一挙手一投足教え込む必要がなく、複雑な形状の素材を扱う場合も、知能ロボットの柔軟な対応を可能としている。
自動車の製造を行う株式会社SUBARUでは、同社の群馬県大泉工場において、「Mujinコントローラ」とバラ積みピッキング知能ロボット「PickWorker」を用いて、クランクシャフト鍛造粗材の加工ライン投入作業を自動化している。

SUBARUに導入したバラ積みピッキングロボットPickWorker(出典:株式会社Mujin)
PickWorkerは、さまざまな部品のピッキングをティーチレス(teachless)で自動化する知能ロボット。3Dビジョンによる三次元認識を活用し、バラ積みされた置き方が一定ではない状態のクランクシャフトのピッキングを実現した。
自動フォークリフトやピッキングアシストロボットを提供するラピュタロボティクス
Rapyuta Robotics(ラピュタロボティクス)株式会社は、クラウドロボティクスプラットフォームを提供し、工場内の自律移動ロボット(AMR)の導入を支援している。同社が提供するラピュタ自動フォークリフトは、人工知能(AI)と3Dセンサーなどを活用して自律的に動作し、倉庫や工場内でのパレット運搬や荷物の積み下ろしを行う。

ラピュタ自動フォークリフト「ラピュタAFL」(出典:Rapyuta Robotics株式会社)
ラピュタ自動フォークリフトは、位置を確認するための反射板や磁石を必要としないため、運用変更やレイアウト変更に柔軟な対応が可能だ。定点間搬送、垂直搬送機を利用する際の仮置き搬送、格納・パレットピッキングといった機能を持つ。
プログラムされた動きではないため、収まるべき枠に対しパレット貨物が傾いて蔵置されている場合でも、リアルタイムで動作軌道を修正し、パレットをピックアップすることができるという。
また、タブレット操作によって、これまで熟練スタッフに頼っていたフォークリフトのパレット搬送が簡易化され、スタッフを確保するのが難しい夜間深夜帯の稼働も可能となっている。
2024年7月には「トラック積み下ろし」や「ランダムな高さに対応可能なパレット段積み」といった機能を追加している。

「トラック積み下ろし」機能(出典:Rapyuta Robotics株式会社)
また、同社が提供する協働型ピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」は、作業スタッフとロボットが協働でピッキング作業を行う。AIが最短のピッキングルートを作業スタッフに提案し、荷物の搬送代行も担うことで、作業スタッフの歩行距離を削減。生産性の向上、および作業スタッフの負荷軽減を可能とする最新のロボティクスソリューションとなっている。

「ラピュタPA-AMR」(出典:Rapyuta Robotics株式会社)
そして2024年8月には、「ラピュタPA-AMR」に新たなピッキング方式(リストスキャン方式)を追加。事前に印刷された帳票類のバーコード(出荷番号やピックIDなど)を使って、行いたい作業を好きな作業順でロボットに割り当てることができるようになった。その結果、帳票類と荷物の事後照合の必要がなくなり、リレーピッキングにも対応し、他のエリアでのピッキング作業の引き継ぎが可能だという。

リストスキャン方式対応の概要(出典:Rapyuta Robotics株式会社)
画像解析とAIによるセキュリティ監視のAsilla
株式会社アジラは、画像解析とAI技術を使い、製造現場での異常検知やセキュリティ監視を行うソリューションであるAI警備システム「AI Security asilla」を提供している。
「AI Security asilla」は、行動認識技術を基にしたAI警備システムで、既存のカメラをAI化し、カメラ映像の中から異常行動(転倒、卒倒、ケンカ、破壊行動)や不審行動(千鳥足、ふらつき、違和感行動)を検出したときのみ、映像を通知する。また、防犯カメラ映像から人数カウントや混雑状況の把握など、人流の解析も可能だ。
「AI Security asilla」は、顔認識を用いずに行動パターンを検出するため、個人情報を特定せずに防犯や安全管理が可能で、工場の安全管理、商業施設や公共の場での防犯対策など、さまざまな環境で活用されている。また、物流センターや倉庫内での作業者の安全確保にも応用可能だという。
今年の1月にバージョンアップされた2.4では、あらかじめ設定したエリアに設定した人数以上の滞留を観測したときにアラートを発生させる混雑検知機能や、検知した異常や不審な動きを含む映像を自動的に切り分け、それぞれの映像クリップにメモを付け加える警備日報用動画メモ機能が追加された。
図面データ活用クラウドを提供するキャディ
キャディ株式会社は、2022年6月から図面データ活用クラウド「CADDi DRAWER」(キャディドロワー)を提供している。
「CADDi DRAWER」は、図面解析技術を活かして開発した図面データ活用による調達原価削減・図面検索工数削減のためのサービス。図面データを独自のアルゴリズムで自動解析することにより、図面に記載されている寸法、記号、テキスト等の情報を構造化されたデータとして蓄積。形状の特徴をもとに、過去の図面群から必要な図面を検索できる「類似図面検索」機能を搭載している。
また、今年の10月には3D CADデータに対応し、年明けからオープンβ版提供を予定している。追加されたCAD機能によって、図面と3D CADデータを紐付け、シームレスに双方を行き来できるようにすることで、設計者以外の人も3D CADデータをクラウド上で確認可能になり、製造・組立時の3D形状の参照や、営業デモとしての活用などが行える。

「CADDi DRAWER」の一覧画面(出典:キャディ株式会社)
将来的には、3D CADデータに対して多様な関連データを紐付けたり、3Dの類似形状検索を可能にしたりすることで、部品の標準化や原価予測など、さらなる業務の効率化・高度化を実現するという。
ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。
最新の特集

医療DX