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まちびらきから10年を迎えたスマートシティ「Fujisawa SST」が次のステージへ

2025年4月21日

全国各地でさまざまなスマートシティが開発されている中、神奈川県藤沢市にあるスマートシティ「Fujisawa SST(FSST)」は、2014年のまちびらきから10周年を迎えた2024年10月に新ビジョンを発表した。ハード面だけではなくソフト面でも進化・発展を遂げるべく街の構想を改訂し、新たな企業や団体を加えて「住民の健康寿命を1年延ばすこと」などを柱とした取り組みを始めている。

工場撤退後の広大なエリアを活用した100年続くまちづくり

FSSTはもともと、2009年に閉鎖が決定したパナソニックの工場跡地を活用してまちびらきした、パナソニックグループを中心とした「まちづくり」事業の拠点だ。工場の閉鎖が決まった際に藤沢市から、撤退後の地域への影響が大きいなどとした申し入れがあり、パナソニック内でも工場跡地を単に売却するのではなく、地域や事業の発展につながるような活用方法について検討を行った。その結果、「持続的共創価値、100年成長する街」をテーマにしたFSSTが生まれた。

2011年に立ち上がったこのプロジェクトでは、JR・小田急・江ノ電の藤沢駅からバスで10分のエリアにある、東京ドーム4個分に相当する約19ヘクタールの敷地内に、段階的に約1000世帯の戸建て住宅が建設された。さらに、蔦屋書店湘南を中心とした商業施設をはじめ、健康や福祉・教育をテーマにした施設、公園やカーシェアリングスポット、ヤマト運輸の配送拠点などが同じ敷地内に置かれている。2024年10月にはシニアレジデンスとスポーツプラザが開業し、10年越しに街の全区画が完成した。

FSSTはパナソニックにとって初めての街づくりであったが、ここまで巨大な規模の開発はデベロッパー主体でも難しい。そこで、パナソニックが掲げた「孫世代まで安心して暮らせる100年続くまち」のビジョンに賛同したパートナー企業と一丸となり、技術やインフラからではなく、街に住む人たちの暮らしを起点とするスマートタウンを形成。藤沢市とも計画当初から協力体制を敷き、地域に根ざした持続する街づくりを心がけてきた。

(図1)パナソニックの工場跡地を活用したFSSTの全体概要(出典:パナソニックグループのプレスリリースより引用) イメージ
(図1)パナソニックの工場跡地を活用したFSSTの全体概要(出典:パナソニックグループのプレスリリースより引用)

次の30年に向けた新たな取り組み

2014年のまちびらきから10年間、FSSTは住人・企業・自治体・大学が一体となった産官学民による共創活動を通じて、さまざまな実証実験やマーケティング調査などに取り組み、新たなビジネスも生まれている。「100年ビジョン」を掲げてきたFSSTにとって、最初の10年は生成・構築期と捉えている。今後は30年単位で、成長期から成熟期、そしてさらなる発展期と設定し、家族3世代が住み続けられるまちづくりを推進していくという。

次の30年の目標として、10年の稼働実績から得られた知見をもとに、3つの重点テーマ「環境」「安心・安全」「健康・つながり」をアップデート。「環境」については、まちびらき当初の目標であった再生可能エネルギー利用率30%をこの10年で達成したため、2034年度までの達成目標を「使用する再生可能エネルギーの割合を60%以上とする」とした。

「安心・安全」については、具体的な目標を「災害対策として飲料と食料を7日間分確保する」としている。南海トラフ地震も見据え、非常時に3日間でライフラインを確保して通常状態へ復旧するために、すでにインフラや電源確保などを整備済みだ。飲料水と食料についても、3日間分を確保した上で、さらに4日間分を備蓄する。

「健康・つながり」については、具体的な目標として「健康寿命を1年延伸する」を掲げた。そのために、慶応大学の湘南藤沢キャンパス研究所が中心となり、未病対策や先進技術を活用したリハビリの実証プログラムを作っていく。これによって、2034年度までに住民の健康寿命を2024年度比で1年延ばそうとしている。

(写真1)FSSTの中心にあるセントラルパーク(出典:FSSTコンソーシアムのWebページより引用) イメージ
(写真1)FSSTの中心にあるセントラルパーク(出典:FSSTコンソーシアムのWebページより引用)

100年先を見据えたビジョンをアップデート

一方で、「100年ビジョン」を実現する「まちづくりの具現化シナリオ」として、「エネルギー」「セキュリティ」「モビリティ」「ウェルネス」「コミュニティ」などのタウンサービスをアップデートした。セキュリティについては、デジタルツインを活用した災害シミュレーションを行い、住人と共にCCP(コミュニティ・コンティニュイティ・プラン)ガイドラインの運用の実行性を高める。「空間・街・家・人」の4重のセキュリティも構築済みで、これに先進技術(顔認証システム、カメラ技術+AI画像解析処理技術、ドローンやロボットなど)を加えた5重のセキュリティを構築し、緊急時は遠隔監視センターでフォローを行う。加えて、フィジカルのみならずサイバーセキュリティ対策についても、データ利活用を積極的に推進し強化する。

モビリティの分野では、人や物など、その時々に最適で環境にやさしい移動をシームレスに提供する。その人やその日の条件に合わせて最適な移動手段、最適なルートを組み合わせて提案し、多世代のコミュニティ活性化にもつながる「グリーンスローモビリティ」を身近にするという。さまざまな実証実験も実施済みで、ロボットやドローンなどの次世代技術を活用したラストワンマイルの物流サービスも構築しようとしている。

近い将来、FSSTでは、敷地内をさまざまなロボットが行き交う様子が見られるようになりそうだ。

(写真2)FSST内で行われた配送ロボットによるラストワンマイル物流の実証実験の様子(出典:編集部撮影) イメージ
(写真2)FSST内で行われた配送ロボットによるラストワンマイル物流の実証実験の様子(出典:編集部撮影)

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