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ウォーカブルな都市空間を目指す「スマートシティさいたまモデル」とは

2025年9月8日

「スマートシティさいたまモデル」とは

国土交通省では、先駆的なスマートシティプロジェクトに対し、資金、ノウハウの支援を行っている。「スマートシティさいたまモデル」も2020年7月に国土交通省の先行モデルプロジェクトに指定されたプロジェクトのひとつだ。

同プロジェクトは、さいたま市の副都心である美園地区を、駅を核としたスマート・ターミナル・シティにするため、モビリティを軸とした分野間連携により、ウォーカブル(居心地がよく歩きたくなる)都市空間・環境の形成を目指すものだ。

それに向け、市民生活を構成する分野を対象に、AIやIoT、データを活用することで、さまざまな社会課題を解決する生活支援サービスを提供するとともに、人と人とのつながりであるコミュニティを形成する取組みを並行して実施する。

(図1)「スマートシティさいたまモデル」概要(出典:国土交通省) イメージ
(図1)「スマートシティさいたまモデル」概要(出典:国土交通省)

このプロジェクトは、2020年1月に設立された「さいたま市スマートシティ推進コンソーシアム」が主体となり、さいたま市や埼玉大学、東京都立大学、芝浦工業大学といった大学のほか、NTTドコモ、ENEOS、JTB、LINEヤフー、ソフトバンクなどの民間企業も参加している。

2020年度から3つの施策を実施

2020年度から2024年度の実行計画では、駅を核としたウォーカブルで誰もが移動しやすい、人中心に最適化された都市空間・環境「スマート・ターミナル・シティ」の形成を目指した。そのために、AI・IoT等のスマート化技術や官民データの活用により、地域課題・ニーズにきめ細かく対応しながら、「モビリティサービスの拡充」、「ライフポート型MaaS」、「スマートプランニングによるウォーカブルな都市空間・環境の形成」という3つの施策を実施した。

モビリティサービスの拡充

「モビリティサービスの拡充」では、AIがリアルタイムで最適な配車を行うオンデマンド交通サービスの実証運行やシェア型マルチモビリティ(SMM)の実証実験を行った。

オンデマンド交通サービスとしては、地域住民の通勤・通学、買物、通院等の日常的な域内移動をメインターゲットに据え、AIオンデマンド交通サービス実証事業「みそのREDタクシー」の運用を実施した。「みそのREDタクシー」は、スマートフォンアプリを介して利用者が乗降予約を行い、AIシステムが最適な運行ルート設定や配車をリアルタイムで行う相乗り輸送サービス。予約アプリを使って浦和美園駅周辺の主要施設、店舗など指定の乗降場所40箇所以上で乗降できるというものだ。

(図2)「みそのREDタクシー」の概要(出典:さいたま市スマートシティ推進コンソーシアム) イメージ
(図2)「みそのREDタクシー」の概要(出典:さいたま市スマートシティ推進コンソーシアム)

SMMとは、電動アシスト付自転車やスクーター、電動サイクルの貸出及び返却場所の検索、利用予約、決済までの一連の手続きを専用アプリケーションによって行い、「ワンウェイトリップ(乗り捨て)方式」で、エリアを問わずすべてのステーションに返却することが可能なモビリティサービスだ。

(写真1)モビリティステーションの例(出典:さいたま市スマートシティ推進コンソーシアム) イメージ
(写真1)モビリティステーションの例(出典:さいたま市スマートシティ推進コンソーシアム)

実証の結果、「みそのREDタクシー」は利用状況に合わせて運行体制を変更したことで利用者が伸びたという。利用シーンとしては、朝晩の通勤や通学、育児に関連した送迎、買い物、公園で遊ぶためといったものが多く、アンケートでは、6-8割の利用者が満足と回答している。
課題としては、収支の安定が挙げられ、利用者の増加や地域協賛の展開のほか、利用状況に応じた稼働台数の調整が必要だとした。
一方、SMMは利用回数や頻度が順調に増加し、平日に加え、非常時の代替手段でのポテンシャルを確認できた。特に、スクーターや超小型EVなどの中長距離モビリティは利用者数や利用回数が徐々に伸びているという。
しかし、シェアサイクルと異なりステーション開設のためにある程度広い土地が必要になるため、利便性向上に寄与する場所へのステーション拡大が思うように進んでいないという課題があった。

ライフポート型MaaS

「ライフポート型MaaS」では、路線バスなどの既存公共交通の需要減という懸念に対して、SMMとの連携を図ることで、公共交通全体の移動総量を増加させることが可能かを検証した。それにより、路線バスや鉄道などの既存公共交通と、シェアサイクルやAIオンデマンド交通などの新しい移動手段を組み合わせ、公共交通全体の利用回数や利便性を高めることを目指している。

実証の結果、異なるSMM同士のID等のデータ連携の促進や個人情報の取得・利活用の促進と整備、データ共有における事業者との合意形成といった課題が出たという。

スマートプランニングによるウォーカブルな都市空間・環境の形成

「スマートプランニングによるウォーカブルな都市空間・環境の形成」では、大宮駅・さいたま新都心駅周辺を対象に、3D都市モデルを活用した空間評価モデルを構築し、3D都市モデル上での分析結果表示手法がまちづくり推進主体にとって有効であるかを検証する。

さいたま市は国土交通省のデジタルツインプロジェクト「PLATEAU」に参画し、全市域の3D都市モデルを整備・オープンデータ化した。最新データは2024年度まで整備されており、市民や事業者がWebビューワーで閲覧可能となっている。
大宮・さいたま新都心駅周辺では、3D都市モデルを使って日陰の投影範囲を時間帯や季節ごとに分析。さらに人流データと重ね合わせることで、ウォーカブルな(歩きやすい)都市空間の評価と設計が可能となった。

これらの施策により、SMMがさいたま市の課題解決に一定程度寄与することが確認された。 また、各種サービス間やサービスと利用者間における情報連携やマーケティングの新たな手法として、デジタル技術の高い有用性についての実証結果を得たという。

2025年度以降の実行計画

そして今後は、これらの活用を踏まえたさらなるスマートシティサービスの拡充により、さまざまな課題の解決を図っていくとともに、これらの施策/取組の計画的かつ持続的な運用を図るべく、管理手法や体制等の整備、刷新、構築が重要になるという。

具体的には、SMMの本格実施、交通結線機能強化や交通マネジメントの拡充、「さいたま市みんなのアプリ」を活用したサービス展開、3D都市モデル等の地理空間情報を活用したサービス展開を行い、さらなるスマートシティの醸成を目指す。

SMMの本格実施では、事業採算性の確保と公共交通の補完に向け、ステーションの拡充、ニーズに合わせたモビリティの導入による選択肢の確保、自動返却に関する技術導入などを行う。
交通結線機能強化や交通マネジメントの拡充では、鉄道やバス、新モビリティをつなぐ結節点(モビリティハブ)の整備、既存駐車場を活用した交通マネジメントの実施などを行うという。
「さいたま市みんなのアプリ」の活用では、移動の目的になるイベントや便利なモビリティ情報をアプリ上で発信、ポイント等のインセンティブを活用したスマートシティサービスの検討を行う。

(図3)「さいたま市みんなのアプリ」(出典:フェリカポケットマーケティング) イメージ
(図3)「さいたま市みんなのアプリ」(出典:フェリカポケットマーケティング)

そして、「3D都市モデル等の地理空間情報を活用したサービス展開」では、さまざまなプレイヤーからの主体的な企画提案・連携により、まちづくり、防災、環境、交通における3D都市モデル等を活用したサービス展開を行っていくという。

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