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循環経済とCO2削減に対して野心的なアムステルダムのスマートシティ

2024年4月8日

スマートシティとして有名な海外事例は、オランダのアムステルダムだ。同市のスマートシティは、産官学協業基盤である(Amsterdam Innovation Motor:AIM)と電力ネットワーク企業のLianderを中心に設立された「アムステルダム・スマートシティ・プロジェクト(Amsterdam Smart City)」(以下:ASC)によって進められている。

Amsterdam Smart Cityのサイト(出典:Amsterdam) イメージ
Amsterdam Smart Cityのサイト(出典:Amsterdam)

ASCへのプロジェクトの提案や参加はオープンが原則で、ASCは提案されたプロジェクトへのパートナーとのマッチングなどを行っている。

例えば、「MX3D Bridge」という、アムステルダム市のために12メートルのステンレス鋼の橋を3Dプリンタによって作成するプロジェクトには、9つのスポンサーが参加。実際に橋が架けられた。

「MX3D Bridge」プロジェクト(出典:Amsterdam) イメージ
「MX3D Bridge」プロジェクト(出典:Amsterdam)
「MX3D Bridge」プロジェクトによってかけられた橋(出典:MX3D) イメージ
「MX3D Bridge」プロジェクトによってかけられた橋(出典:MX3D)

スマートシティの5つのテーマ

アムステルダムの「スマートシティ」プロジェクトでは、スマートグリッド等の技術を活用したプロジェクトを、5つのテーマに沿って実施している。そのテーマは、「生活」、「仕事」、「交通」、「公共施設」、「オープンデータ」だ。

「生活」では、一般家庭にスマートメーターを設置し、エネルギー使用量を見える化している。スマートメーターはリアルタイムでのエネルギー消費データを提供し、ユーザーが自分のエネルギー使用習慣を理解し、改善に取り組むようにしている。

ASCのKlimaatstraat(クライメート)プロジェクトでは、市内のユトレヒト通り地域を、より持続可能なものにするため、CO2(二酸化炭素)とNO2(二酸化窒素)に関する街頭の基礎測定も実施された。この測定は、さまざまなソリューションを導入するための出発点として機能し、オランダの多くの家庭に導入されているスマートメーターの導入につながったという。

また、市民へのサービス提供を改善するために、アムステルダムは公共サービスのデジタル化に力を入れている。例えば、オンラインでの行政手続きの簡素化、デジタルヘルスケアプラットフォームの開発、教育や図書館サービスのオンラインアクセスの提供などがある。

「仕事」では、ビルエネルギー管理システムを導入することにより、自動的にエネルギー消費量のデータを収集し、監視・解析を行い、冷暖房/照明/セキュリティ機能を制御する。エネルギー消費は視覚化され、入居者によるエネルギー使用量の抑制も促進する。

「交通」ではスマートパーキングを導入。スマートパーキングのシステムは、街中の駐車場の空き状況をリアルタイムで提供する。これにより、ドライバーは目的地に近い駐車スペースを迅速に見つけることができ、無駄な時間と燃料の消費を減らすことができる。

一部のスマートパーキング施設では、需要に基づいて駐車料金が動的に設定されピーク時には料金が高くなり、オフピーク時には安くなることもある。これにより、駐車スペースの利用が促進され、交通渋滞が軽減されるという。さらに、市内全域に電気自動車や電動スクーターのための充電ポイントを設けている。

なお、同市は2030年から市内へのガソリン車およびディーゼル車の乗り入れを禁止すると発表している。

「オープンデータ」では、アムステルダムは、都市運営における意思決定を支援するために、ビッグデータの分析と管理に重点を置いている。都市データプラットフォームを通じて、交通流、エネルギー使用量、公共空間の利用状況など、さまざまなデータを収集・分析し、より効率的な都市計画や、リアルタイムでの問題対応が可能になっている。

同市は、公式のオープンデータポータルを通じて、交通、環境、都市計画、公共サービスなど、様々なセクターのデータを提供。オープンデータの提供は、市政の透明性を高め、市民や企業が政策形成や都市開発プロジェクトに参加する機会を拡大している。

2050年までに完全な循環経済を実現

アムステルダムのスマートシティは、CO2削減に関して野心的な目標を掲げている。同市は2030年までに1990年比で55%、2050年までには95%の排出量削減を目指している。

また、同市は、2050年までに完全な循環経済(Circular Economy)を実現することを目指している。そのため、循環経済を促進するための具体的なアプローチと目標を定めた戦略の「Circular 2020-2025 Strategy」を発表。資源の持続可能な利用、廃棄物の削減、経済と環境の両面における持続可能な成長を目指している。

建築では、サステナブルな建築材料の使用、建物の寿命の延長、建設廃材の再利用などを通じて、循環性を高めることを目指し、食料では、食品廃棄物の削減、持続可能な食品生産と消費、有機廃棄物の資源化など、食料システムの循環性を向上させることを目指している。消費財では、製品の耐久性と修理可能性の向上、再利用とリサイクルの促進を通じて、消費財のライフサイクルを延長することを推奨する。同市では、2030年までに原材料の使用量を2015年比で50%削減することを目指している。

ICTの活用も積極的

また、スマートシティでは、ICTの活用も積極的に行う予定で、その指針である「Digital City Agenda 2023 - 2026」を公表。アムステルダムのデジタル化戦略は、持続可能性、市民の生活の質の向上、経済成長を促進するために、デジタル技術とイノベーションを活用することを目指している。これには、オープンデータの利用、スマートエネルギーシステム、交通の効率化、公共サービスのデジタル提供などが含まれる。また、市民参加を促進し、スタートアップとの協力を通じて新しいソリューションを開発することも重視されている。

「Digital City Agenda 2023 - 2026」(出典:Amsterdam) イメージ
「Digital City Agenda 2023 - 2026」(出典:Amsterdam)

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