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日本初、世界でも2例目の浸透圧発電設備が福岡で稼働
カーボンニュートラルを目指す企業や自治体にとって、自家発電の導入は単なるエネルギー対策に留まらず、脱炭素戦略の中核となっている。太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを活用することで、発電時のCO2排出量をゼロにできるほか、自社で消費する電力を再エネでまかなうことで、Scope2の排出量を削減できる。また、自家発電設備を持つことで、外部から再エネ証書や非化石証書を購入せずに、再エネ比率を高められるというメリットがある。
採用が進むオンサイトPPAモデル
最近増えているのは、オンサイトPPAモデルを活用した自家消費型太陽光発電システムの導入だ。
三井住友トラスト・パナソニックファイナンスは今年の8月、再生可能エネルギーの活用促進に向けたオンサイトPPAモデルによる太陽光発電設備の導入に関する契約を締結した。
オンサイトPPAモデルは、発電事業者が、電気を使う企業などの敷地内に太陽光発電設備を設置し、発電された電気を需要家に供給する仕組み。PPAは、Power Purchase Agreement(電力購入契約)の略だ。
太陽光発電設備は、鶴弥の阿久比工場(愛知県知多郡)敷地内に設置され、2026年7月より運用を開始する予定だ。年間発電量は1,414MWhを想定しており、これにより年間約581トンのCO2排出量の削減効果が見込まれる。
矢崎総業も今年の7月、静岡県牧之原市にあるものづくりセンターに、国内最大級となる3.8MWのソーラーカーポートを設置し、子会社のテクノ矢崎を発電事業者として、グループ内PPAを開始した。テクノ矢崎が新たにデザインしたソーラーカーポートは、太陽光パネル分離型になっているため、交換も容易に行える仕様となっており、長期にわたって発電電力を活用していくことが可能だという。

(写真1)テクノ矢崎のソーラーカーポート(出典:矢崎総業)
矢崎グループの研究開発などを行うものづくりセンターでは、この発電電力によって、事業所全体の使用電力量の約21%をまかなう見込みだ。今後は強度の低い屋根でも設置可能な薄膜型太陽光パネルも活用し、0.3MWの太陽光パネルの増設を行い、ものづくりセンター全体で年間1,980トンのCO2排出量削減を見込んでいる。
また、東洋メビウスは、高槻物流センターの屋根上に自家消費型太陽光発電システムを設置し、オンサイトPPAモデルとして所有・維持管理を行い、再生可能エネルギー電気の供給を行う。発電容量は約2.3MW、年間想定発電量は約261万kWhとなり、GHG排出削減量(ある期間に削減された温室効果ガス(Greenhouse Gas)の総量)は年間約1,101トンとなる見込みだ。

(写真2)東洋メビウス 高槻物流センター(出典:東洋メビウス)
日本初となる浸透圧発電施設の稼働が開始
浸透圧発電という珍しい発電設備の稼働を開始したのは、協和機電工業だ。同社は今年の8月、福岡市及び福岡地区水道企業団と共同で、海の中道奈多海水淡水化センター(通称:まみずピア)に日本初、世界でも2例目となる浸透圧発電施設の稼働を開始した。
浸透圧発電とは、海水と真水を浸透膜で隔て、塩分濃度が薄い真水側から濃い塩水側に水が移動する際の運動エネルギーを利用してタービンを回す発電方式だ。天候や時間帯に影響されることなく発電することができる。

(図1)浸透圧発電のしくみ(出典:協和機電工業)
この施設は、まみずピアから放流される「濃縮海水」と、和白水処理センターから放流される「下水処理水」の塩分濃度差を活用しており、未利用資源の有効活用という点でも注目されている。
正味発電電力は約110kW。年間発電量は最大88万kWhとなる。今後、実証を重ね、脱炭素化を図っていくという。
3電池の連携制御の再生可能エネルギー
英国で電子レンジなどの開発・製造・販売を行うパナソニック マニュファクチャリングイギリス(PMUK)は、純水素型燃料電池に太陽電池と蓄電池を組み合わせた3電池の連携制御により、電子レンジ組立工場の電力を再生可能エネルギーで賄う実証設備の導入が完了し、昨年末、試運転を開始した。
PMUKの拠点内で必要な電力のみを効率的に発電、蓄電することでレジリエンス性を高め、また工場の電力需要変化と英国の気象変化に追随するエネルギーマネジメントシステム(EMS)を構築し、電子レンジ組立工場に安定して再生可能エネルギーを供給するEMS運用を開始する予定だ。
PMUKでは、電子レンジ組立工場の使用電力量に最適化した分散型システムとして、5kWタイプの純水素型燃料電池を21台導入、372 kWの太陽電池と1 MWhの蓄電池を組み合わせて必要な電力を100%再生可能エネルギーで供給する運用を目指す。
純水素型燃料電池は、21台を連携制御することで運転時間の平準化を図り、無停電メンテナンスを可能にするなど保守性を高める。

(写真3)左から純水素型燃料電池、太陽電池(PMUK全体)、蓄電池(出典:パナソニック)
太陽光発電設備については、昨年、PMUK社屋の屋根に設置された合計760 kWの太陽電池のうち、372kW分を電子レンジ組立工場に使用する。既設の太陽電池に、新設した純水素型燃料電池と蓄電池を組み合わせて3電池の連携制御を行う実効性の高いソリューションの開発および有効性を検証していくという。
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