再エネ100%電力と蓄電池を活用し、脱炭素化

2025年10月6日

政府が進める2050年のカーボンニュートラルに向けては、再生可能エネルギーを主力電源として導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していく必要がある。そのような中、脱炭素に向けた動きも加速しており、ここでは、最新の事例を紹介する。

NXワンビシアーカイブズがデータセンターを100%再エネ化

生成AIの浸透により、今後、GPUを実装した高負荷サーバの増加により、データセンターの電力使用量が大幅に増加することが懸念されている。そのため、環境省は徹底した省エネを行いながら再生可能エネルギーを100%活用するゼロエミッション・データセンター促進事業を実施している。

このような状況のなか、NXワンビシアーカイブズは8月8日、電子契約・契約管理サービスをはじめとするデータ・ソリューション事業の運用を支える自社データセンターにおいて、2024年度の電力使用量の100%を再生可能エネルギー化したと発表した。これにより、849.31tのカーボンオフセットを実現したという。

(写真1)NXワンビシアーカイブズのデータセンター(出典:NXワンビシアーカイブズ) イメージ
(写真1)NXワンビシアーカイブズのデータセンター
(出典:NXワンビシアーカイブズ)

また、同社の各情報管理センターでは、効率的な空調設備への切り替えやLED照明の導入を推進しているほか、関東第3センター(埼玉県)においては、太陽光発電設備を導入し、稼働を開始した。

(写真2)関東第3センター設置の太陽光パネル(出典:NXワンビシアーカイブズ) イメージ
(写真2)関東第3センター設置の太陽光パネル
(出典:NXワンビシアーカイブズ)

再生可能エネルギー100%で運営するデータセンターは、2024年10月1日に北海道の石狩にオープンしているほか、NECは、「NEC神奈川データセンター二期棟」と「NEC神戸データセンター三期棟」を開設している。

また、ソフトバンクとIDCフロンティアは、東京や大阪に並ぶ新たな拠点として、北海道内の再生可能エネルギーを100%利用し、地産地消型のグリーンデータセンターを北海道苫小牧市に開設することを予定している。今後は、このようなカーボンフリー電力で稼働するデータセンターが増加していくと思われる。

市原市が小中学校等68施設で再エネ100%の電力を利用

コスモ石油マーケティングは8月18日、2025年10月1日より千葉県市原市の小中学校等68施設に、再生可能エネルギー100%電力を供給すると発表した。供給されるのは、小学校38施設、中学校21施設、廃校施設4施設、学校給食共同調理場3施設、中央図書館、教育センターだ。

(写真3)供給対象となる市原市立ちはら台桜小学校(左)、市原市中央図書館(右)(出典:コスモ石油マーケティング) イメージ
(写真3)供給対象となる市原市立ちはら台桜小学校(左)、市原市中央図書館(右)
(出典:コスモ石油マーケティング)

市原市は、市の事務事業で発生する温室効果ガスを2030年度までに2013年度比で約50%削減し、2050年までには温室効果ガスを実質ゼロとする「ゼロカーボンシティ」を目指している。

コスモ石油マーケティングは、市原市の対象施設に再エネ電力プラン「コスモでんきビジネスグリーン」を提供する。「コスモでんきビジネスグリーン」は、コスモエネルギーグループのコスモエコパワーが発電する風力電源等を用いて、再エネFIT電源に紐づくトラッキング付非化石証書を組み合わせた再エネ電力プラン。
今回の導入により、市原市の68施設の年間使用電力量約635万kWhが再エネ電力に切り替わり、排出量を年間約2,595トン削減できる見込みで、これは市原市の事務事業に使用される電気の約11%に相当するという。

ローソンが蓄電池の遠隔制御によりCO2排出量削減

MHCリニューアブルネットワークス、MCリテールエナジー、ローソンは、8月8日、ローソン店舗のCO2排出量削減および電力の需給バランス調整のため、分散型蓄電池を活用したソリューションを展開すると発表した。

分散型蓄電池を活用したソリューションは、蓄電池をローソンの店舗に初期費用なしで設置し、運用費用も不要の取り組みだ。蓄電池の活用により、既設の太陽光発電設備の発電電力量を最大限活用するエネルギーマネジメント体制の構築を行う。本ソリューションの第一弾として、2026年3月をめどにローソンの約50店舗に蓄電池を設置し、遠隔制御による店舗群エネルギーマネジメントを行う。その後、50店舗での検証結果を踏まえ、可能な範囲で設置店舗数を増やしていくという。

(図1)スキーム図(出典:ローソン) イメージ
(図1)スキーム図
(出典:ローソン)

MCリテールエナジーは、蓄電池を遠隔制御することにより、店舗で発電された太陽光の電力を蓄電池に充電・放電を行い、再生可能エネルギーを最大限に活用してローソン店舗のCO2排出量を削減するとともに、太陽光発電設備の設置が困難な他店舗へ融通を行う。

ローソンは、太陽光発電設備導入による再生可能エネルギーの活用によりCO2排出量削減を進めているが、太陽光発電は夜間の消費電力を賄えないことや、太陽光発電設備を設置できない店舗も存在するため、チェーン全体の脱炭素実現に向け、今回の取り組みを行うという。

セブン-イレブンも可動式蓄電池を活用して脱炭素化

セブン-イレブンでも、可動式蓄電池「バッテリキューブ」とエネルギー管理システムを導入し、脱炭素化と循環経済社会への貢献に向けた実証実験を開始した。
具体的には、日立製作所が、セブン-イレブンの店舗向け共同配送センターの1つであるチルド・フローズン日野センター(東京都日野市)に、可動式蓄電池「バッテリキューブ」とエネルギー管理システムを導入する。

(写真4)チルド・フローズン日野センター(出典:日立製作所) イメージ
(写真4)チルド・フローズン日野センター
(出典:日立製作所)

「バッテリキューブ」とは、EV/PHEV(プラグインハイブリッド)の駆動用バッテリーを再利用した中古バッテリーを搭載している可動式蓄電池のことだ。チルド・フローズン日野センターでは、太陽光パネルにより作られた再生可能エネルギーを蓄電池に蓄電し、日立が持つ車種に依存しないEVバッテリーパック運用制御、EV充放電器制御、およびクラウド上の遠隔監視を組み合わせて、運用・管理を行う。

エネルギー管理システムでは、昼間に太陽光パネルにより発電し、「バッテリキューブ」に蓄電した電気は、夜間に店舗配送用トラックの庫内を事前に冷やす作業に活用する。この際に、エネルギー管理システムで電力の使用量を見える化し、「バッテリキューブ」の充放電をより効率的に行えるように制御するという。

また、利用している電力が再生可能エネルギー由来であることを証明するサービス「Powered by Renewable Energy」により、本取り組みにおけるエネルギー循環を証明する。

そして今後は、バッテリキューブ内でメンテナンスが必要となったバッテリーパックを、選別してリサイクル工場で再資源化する仕組みを構築する予定だという。

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