カーボンニュートラルとは?日本や世界の動向、取り組みの具体例も紹介

2024年4月8日

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、実質ゼロにすることを指す。

CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量をできるかぎり削減し、脱炭素化が難しい部分については植林やCO2を回収する技術を用いるなどの対策が必要となる。

この記事ではカーボンニュートラルの意味や必要とされる理由、カーボンニュートラルの実現に向けた日本・世界の動向、取り組みの具体例をわかりやすく紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

カーボンニュートラルの意味をわかりやすく説明

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と森林などによる吸収量を均衡させて、実質ゼロにすること。2010年、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルと、脱炭素社会の実現を目指すと宣言した。

昨今において世界中で異常気象が発生し、気候変動問題が顕在化している。その原因として指摘されている温室効果ガスの排出削減や、CO2を吸収する森林保全活動などが求められている。気候変動問題への対応は人類共通の課題であるため、官民が一体となって取り組まなければならない。

なお、カーボンニュートラルの実現はサプライチェーン全体で考える必要がある。サプライチェーンの温室効果ガス排出量を分類する3つのスコープは、以下の記事で詳しく解説している。あわせて参考にしてほしい。

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カーボンニュートラルとサプライチェーンにおける3つのスコープ(スコープ1,2,3)とは

温室効果ガスとは

温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)とは、大気を構成する成分のなかでも、熱が逃げにくい状態を作って地球の温度を上昇させるものを指す。

二酸化炭素(CO2)だけでなく、メタンや一酸化二窒素なども含まれており、それぞれの特徴は次のとおり。

温室効果ガスを構成する成分 特徴
二酸化炭素(CO2) ・化石燃料の燃焼などによって排出される
・代表的な温室効果ガスのひとつ
メタン(CH4) ・天然ガスの主成分
・家畜の腸内発酵、廃棄物の埋め立てなどによって排出される
一酸化二窒素(N2O) ・工業プロセスなどによって排出される
・害はない窒素酸化物

脱炭素社会とは

脱炭素社会とは、温室効果ガスの8割以上を占めるCO2排出量ゼロを実現する社会のこと。対するカーボンニュートラルは、CO2を含めた温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを指す。

企業には、気候変動対策の視点を織り込んだ「脱炭素経営」が求められている。CO2削減に向けた日本企業の取り組みや、脱炭素経営については下記の記事も参考にしてほしい。

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CO2削減に向けた日本企業の動向や取り組み事例を紹介
脱炭素経営とは?企業が実施するメリットや進め方、事例を紹介

カーボンニュートラルの実現が必要とされる理由

カーボンニュートラルの実現が必要とされる理由 イメージ

カーボンニュートラルの実現が急務とされる理由として、気温上昇や異常気象などの気候変動問題が世界中で起こっている点が挙げられる。何も対策しなければCO2をはじめとする温室効果ガスが大気中に放出され続け、平均気温の上昇が続くと懸念されている。

気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」では、平均気温の上昇について以下の共通目標を掲げた。

 ● 産業革命以前に比べて「2℃より十分低く保つ(2℃目標)」
 ● 「1.5℃に抑える努力を追求する(1.5℃目標)」

この目標を達成するには、2050年までのカーボンニュートラルが必須である。

カーボンニュートラルの実現には、官民が一体となって取り組む必要があり、産業界の全部門にも対応が求められている。部門別で見ると、とくに産業部門(工場)のCO2排出量が最多となっている。詳細は以下の記事で解説しているので、参考にしてほしい。

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カーボンニュートラルに向けた工場(製造業)の取り組み|中小企業の事例も

カーボンニュートラルの実現に向けた日本・世界の動向

カーボンニュートラルの実現に向けた日本・世界の動向 イメージ

カーボンニュートラルの実現に向けて、日本や海外政府はどのような取り組みを進めているのだろうか。それぞれの動向を見てみよう。

日本政府の動向

2020年10月、日本政府はカーボンニュートラルを実現すると宣言し、2021年には温室効果ガスの排出量を2030年までに46%削減すると目標を表明した(2013年比)。これらの高い目標を実現するためにさまざまな戦略が策定されている。

具体的に見ると、2023年2月には「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石エネルギー中心の構造をクリーンエネルギー中心に転換することを指す。

GXの推進によって、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つの同時実現を目指している。

世界の動向

次に、世界の動向に目を向けてみよう。2023年、国連気候変動枠組条約の第28回締約国会議(COP28)が、ドバイで開催された。COP28では「化石燃料からの脱却」について初めて合意を得られ、注目が集まった。

2021年に開催されたCOP26では、平均気温の上昇幅に関して2.0℃ではなく「1.5℃目標」へ向かって努力すべきだと正式に合意された。しかし「1.5℃目標」の実現は厳しい道のりで、世界全体で温室効果ガスの排出量を大幅に削減する必要がある。

そこでCOP28では、再生エネルギー発電容量を世界全体で3倍に、省エネ改善率を世界平均で2倍にするなど、取り組みを強化する内容が決定文書に盛り込まれた。

カーボンニュートラルを実現する取り組み5つ【企業や自治体の具体例も】

カーボンニュートラルを実現する取り組み5つ【企業や自治体の具体例も】 イメージ

次に、カーボンニュートラルの実現に向けて、必要な取り組みと具体例を見てみよう。

 ● 省エネ対策の実施
 ● 再生可能エネルギーの導入でCO2排出量を削減
 ● ネガティブエミッション技術を利用
 ● 木質バイオマス発電の設置
 ● カーボンオフセットの活用

カーボンニュートラルを達成するには、単独の施策に取り組むのではなく、複数を組み合わせることがポイントとなる。

なお企業や自治体、個人がどのように取り組めばよいかは、以下の記事で事例とともに詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

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カーボンニュートラルの取り組み事例9選!企業から自治体まで一覧で紹介
カーボンニュートラルの実現を目指す企業の取り組みや具体例を紹介

省エネ対策の実施

省エネ対策は比較的簡単で、コストをかけずに取り入れやすい。例えば、以下の省エネ対策は企業でも実施しやすいだろう。

 ● 照明をLEDへ置き換え
 ● 人感センサーの導入
 ● 窓ガラスの断熱強化
 ● 高効率な機器へ更新 など

省エネ対策はエネルギー消費量の削減にもつながるため、企業はコストメリットが期待できる。

また、建物全体でエネルギーをどのくらい消費しているか、可視化して管理することも重要となる。株式会社ミライト・ワンでは、建物自体を省エネ化するスマートビルソリューションを提供している。詳しくは、以下のサイトを参考にしてほしい。

ZEB・スマートビルソリューション

出典:株式会社ミライト・ワン|ZEB・スマートビルソリューション イメージ
出典:株式会社ミライト・ワン|ZEB・スマートビルソリューション

なおエネルギー使用量1,500kl/年以上の特定事業者等には、省エネ法によって対応が義務づけられていて、違反すると罰則がある。

カーボンニュートラルへの対応を義務づけている2つの法律に関して以下の記事で解説しているので、自社で適切に対応できているかどうかを見てみてほしい。

関連リンク
カーボンニュートラルの実現を目指す企業の取り組みや具体例を紹介

省エネ対策の実施事例:株式会社資生堂 掛川工場

株式会社資生堂の掛川工場における省エネ改革で、資源エネルギー庁長官賞を受賞した事例を見てみよう。

掛川工場では、430もの主要ブレーカーに電力量計を設置し、電力消費量をリアルタイムで把握するエネルギーマネジメントシステムを導入。工場の電力消費量を可視化することで合理的な改善プランを全員で実行し、大幅な節電につながった。

参考:経営改善につながる省エネ事例集2023年度|一般財団法人省エネルギーセンター

再生可能エネルギーの導入でCO2排出量を削減

再生可能エネルギーを調達して企業活動に用いることで、CO2排出量の削減につながる。

再生可能エネルギーとは、自然のなかに存在する枯渇しないエネルギーのこと。代表的な再生可能エネルギーとして、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱が挙げられる。

従来使用されてきた化石エネルギーは利用時にCO2を排出し、地球温暖化の要因になると指摘されている。そこで、発電時にCO2を排出しない、再生可能エネルギーが求められるようになった。

政府は2030年までに、再生可能エネルギーの電源構成比「36〜38%(3,360億〜3,530億kWh)」を目指している。しかし日本の再生可能エネルギーの導入率は各国と比べて低く、利用拡大が必要とされている。

株式会社ミライト・ワンでは、太陽光発電システムの導入を支援している。詳しくは以下のサイトを参考にしてほしい。

太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス

また再生可能エネルギーの詳細については、以下の記事で詳しく解説している。

関連リンク
再生可能エネルギーとは?種類やメリット・デメリット、導入方法を紹介

再生可能エネルギーの導入事例:ワタミエナジー株式会社

ワタミエナジー株式会社は、ワタミグループにおいて再生可能エネルギー100%の実現を目指している。

そこで株式会社ミライト・ワンが保有する、静岡県の富士宮太陽光プラントで発電された再生可能エネルギーを調達。従来の自家発電設備に加え、安定した再生可能エネルギーの電力を長期的に確保できるようになった。

図1 ビジネススキーム 出典:株式会社ミライト・ワン|グリーン電力の調達により、安定した再エネプラン販売を実現 イメージ
図1 ビジネススキーム
出典:株式会社ミライト・ワン|グリーン電力の調達により、安定した再エネプラン販売を実現

ワタミエナジー株式会社の事例は、以下のページで詳しく紹介しているのでぜひチェックしてみてほしい。

グリーン電力の調達により、安定した再エネプラン販売を実現 | 株式会社ミライト・ワン

ネガティブエミッション技術を利用

ネガティブエミッション技術は、大気中のCO2を回収して固定化することで、大気中のCO2を除去する技術を指す。

企業はカーボンニュートラルの達成に向けて、まずはCO2排出削減に取り組む必要がある。しかし、どうしてもCO2の排出を伴う場合は、相殺するための手段としてネガティブミッション技術が用いられている。

ネガティブエミッション技術として、以下のようにさまざまな方法が挙げられる。

 ● 新規エリアの森林化や植林活動
 ● バイオマスを土壌へ貯蔵
 ● バイオマスを炭化して炭素を固定 など

ネガティブエミッション技術の利用事例:清水建設株式会社

清水建設株式会社では、バイオ炭をコンクリートに混入して、CO2をコンクリート内に貯留させる技術を開発している。

木材からできたバイオ炭には光合成で吸収したCO2が固定されており、粉々にしたバイオ炭を混和材として活用している。

通常、セメントの製造時にCO2を排出するが、固定するCO2の量が排出量を上回ることで相殺できる。

参考:バイオ炭を用いてコンクリート構造物に炭素を貯留|清水建設

木質バイオマス発電の設置

木質バイオマス発電とは、木質バイオマスを燃焼してタービンを回し、発電する仕組みのこと。木質バイオマスを燃やすとCO2が排出されるが、生物由来のCO2であるため森林が吸収して実質ゼロとなる。

対する化石燃料の炭素が大気中に排出されると、地中には戻すことができない。木質バイオマス発電はカーボンニュートラルであるといわれており、化石燃料の代替として活用できるだろう。

木質バイオマス発電の設置事例:高知県梼原町

(図1)化石燃料からのシフトでCO2の削減効果を発揮する、木質バイオマス地域循環利用の取り組み (出典:梼原町のホームページより引用) イメージ
(図1)化石燃料からのシフトでCO2の削減効果を発揮する、木質バイオマス地域循環利用の取り組み
(出典:梼原町のホームページより引用)

温室効果ガス排出を削減し、CO2排出の実質ゼロを目指す「脱炭素先行地域」として選定された高知県梼原町では、木質バイオマス発電を設置している。

木質バイオマス発電からの排熱供給や木質ペレット工場の増設など、化石燃料からシフトしてCO2削減に向けた取り組みを積極的におこなっている。

高知県梼原町の取り組みは以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。

関連リンク
四国から広がる地域GXの取り組み - Beyond X 最前線 | 未来図(ミライズ)

カーボンオフセットの活用

カーボンオフセットとは、削減に向けて努力したものの、どうしても排出される温室効果ガスに関して、排出量に相当する削減活動に投資して埋め合わせること。

国内では「J-クレジット制度」と呼ばれる仕組みを利用することで、さまざまな活動によるCO2の削減量や吸収量を国が認証した「クレジット」として購入できる。

企業や地方自治体などの購入者は、購入したクレジットをカーボンニュートラルの目標達成に活用できるので、必要であれば活用を検討してみよう。

カーボンオフセットの活用事例:株式会社ジョイカルジャパン

株式会社ジョイカルジャパンは、カーリースサービスにおいて「ECOTO(イーコト)」を実施している。これはユーザーが車の使用時に排出するCO2を、森林整備事業によって相殺するカーボンオフセットプロジェクトのこと。

契約期間中にカーボンオフセットに必要なコストを上乗せすると、同社を通じて植樹や間伐などの森林整備事業へ支援することになり、CO2の吸収に役立つ。

参考:ECOTO|株式会社ジョイカルジャパン

まとめ

カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質ゼロにすること。

国内の企業や自治体では省エネ対策、再生可能エネルギーの導入などを通じて、実現に向けた取り組みが進められている。本記事で紹介した具体例を参考に、自社環境に合ったプランを立てて実行していこう。

株式会社ミライト・ワンでは、太陽光発電設備の導入や、再生可能エネルギーの売電につながるサービスの導入を支援している。また建物自体を省エネ化するスマートビルソリューションも展開している。詳細は以下のサイトを参考にしてほしい。

太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス
グリーンエネルギー事業
ZEB・スマートビルソリューション

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