再エネ活用で温室効果ガス排出削減を目指すデータセンター
国際エネルギー機関(IEA)が2025年4月10日に発表した「Energy and AI」では、データセンターの電力消費量は2030年までに、現在の日本の総電力消費量を上回る約9,450億kWhになると予想。こうした報告を受け、今後データセンターが消費する電力をいかに再生可能エネルギーなどに置き換え、地球温暖化防止につなげていくかが、世界共通の課題になってきた。
NTTデータがデータセンターの電力を実質再エネ100%に
NTTデータグループは2025年5月23日、2025年度中に自社保有の「三鷹データセンターEAST(三鷹EAST)」における使用電力を、実質的な再生可能エネルギー100%に転換すると発表。これにより、三鷹EASTにおけるScope2(購入電力による間接排出)温室効果ガス排出量の実質ゼロが達成されるという。さらに、三鷹EASTを利用する顧客も再エネ100%のデータセンターを利用可能とすることで、NTTデータグループのScope3(事業者の活動に関連する他社の排出)温室効果ガス排出量の削減も見込んでいる。
これらの実現に向けては、東京電力エナジーパートナーが提供する、30分値単位で電力供給の実績を把握可能な生グリーン電力も活用される。また、国内13拠点全てのデータセンターにおいても、自社が使用する電力を再エネ100%に転換し、2025年度中にScope2温室効果ガス排出量の実質ゼロ達成を目指す。
今後の目標として、NTTデータグループは2030年度までに国内データセンターの自社使用電力について、PPA(電力購入契約)導入比率約10%を目指す。さらに、非化石証書による実質再エネ化のみならず、新たな再エネ設備への投資を含めた選択肢を幅広く検討し、より積極的な環境負荷低減を推進していくという。

(図1)NTTデータが目指す2040年までの目標と温室効果ガスの削減イメージ
(出典:NTTデータグループ プレスリリース)
富岡市に再エネを最大限活用したデータセンターが開業
2025年7月29日、アガタは群馬県富岡市において、再生可能エネルギーを最大限活用したデータセンター「富岡再エネデータセンター」を開業したと発表。同データセンターは環境省の「データセンターのレジリエンス強化促進事業」の採択によって建設された施設であり、太陽光発電所を隣接させることにより再生可能エネルギーで発電した電力を効率的に活用する。
アガタによると群馬県は震度4以上の地震の発生数が全国でも少なく、特に富岡市は県内でも地震が少ないことから、データセンターとしての立地条件として安全性が高いという。さらに、災害対策として免震装置を設置し、24時間365日の有人常時監視を行う。施設内には蓄電池やUPS(無停電電源装置)、バイオディーゼルを活用した非常用発電装置が設置され、有事の停電時でも安定して電力を供給する。
データセンターの設置ラック数は90ラック(42ユニットサイズ)で、最大設置時で使用電力の約30%を太陽光発電の電力で賄い、年間500トン以上のCO2排出量削減を見込んでいる。また、太陽光発電による電力を最大限利用するために、従来の設備で使われているパワーコンディショナーを廃止し、送電変換時に失われていた電力効率を改善する。顧客向けにも再エネ100%を達成するプラン提供を検討しており、顧客側の再エネ比率の向上やSDGsにも貢献するという。

(図2)富岡再エネデータセンターに隣接する太陽光発電所
(出典:アガタ プレスリリース)
再エネに頼らないクリーンな電力を活用するデータセンター
一方、データセンターの脱炭素化は、再生可能エネルギー以外の電力の活用にも期待されている。東京電力と中部電力の火力発電・燃料事業の統合によって設立されたJERAと、さくらインターネットは2025年6月5日、電力インフラと連携したデータセンターの新設に向けた基本合意書を締結したと発表。再生可能エネルギーに限らない、クリーンな電力活用でも脱炭素化を目指すさくらインターネットと、エネルギー分野のゼロエミッションに取り組むJERAがお互いの強みを活かして社会課題解決に貢献するという。
基本合意の主な検討内容として、JERAが所有する既存LNG(液化天然ガス)火力発電所敷地内に、さくらインターネットのデータセンターが進出する際の利用条件を協議する。また、LNG冷熱を利用した省エネ設計として、発電所の設備から発生する冷熱をデータセンターの空調冷却に再利用することで、エネルギーの効率化を目指す。さらに、さくらインターネットが開発するデータセンター設備への電力供給、各種技術による電力供給について、将来的な脱炭素化を検討する。
今後は合意内容をもとに、技術的・経済的な実現可能性調査(フィージビリティスタディ)を共同で実施し、その結果を踏まえて実際の設計・建設フェーズに進むかを判断するという。

(図3)さくらインターネットとJERAのロゴ
(出典:JERA プレスリリース)
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