ホテル・旅館におけるDXとは?取り組み状況や5つの事例を解説

2024年11月18日

他の産業と同様、ホテル業界でもDX推進が求められている。宿泊の予約管理業務や清掃業務、フロント業務などにデジタル技術を活用してDXを推進することで、人手不足の解消や業務効率化などにつながると期待されている。

本記事では、ホテルにおけるDXの意味や推進できる業務、取り組むメリットについて解説する。記事の後半では国内・海外のホテルにおける事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてほしい。

ホテル・旅館におけるDXとは

ホテル・旅館におけるDXとは イメージ

ホテル・旅館におけるDXとは、先進的な技術を活用して宿泊業界の課題を解決しながら、他にはない新しいビジネスモデルを創出することである。

そもそもDXにはどのような意味があるか、デジタル化との違いも含めて見てみよう。

そもそもDXとは

DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)について、経済産業省は以下のように定義している。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

引用:デジタルガバナンス・コード2.0|経済産業省

DXは、データやデジタル技術を活用し、顧客視点で新たな価値を創出していくことで、企業文化やビジネスモデルの変革を伴う。

デジタル化との違い

DXは、単なるデジタル化とは意味が異なる。

デジタル化とは、アナログ業務やフローにデジタル技術を導入して効率化・省人化を図ること。具体的には、ホテルの宿泊者情報を紙の台帳に代わり、システムを用いて管理する方法などが挙げられる。

一方、DXはデジタル化によってビジネスモデルそのものを変革し、競争力を高めていくことを指す。

例えば、勘と経験に頼っていた宿泊プラン販売について、過去のデータを分析して宿泊者の動向やニーズを掴み、地域経済の活性化にもつながる新プランを生み出すことなどが、DXに当てはまるだろう。

宿泊業界におけるDXの取り組み状況

宿泊業界におけるDXの取り組み状況は、他の業界と比べて遅れている。2023年、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表した「DX白書」によると、宿泊業におけるDXの取り組み状況は20%未満という結果だった。

産業別に見るDXの取り組み状況
割合 20%未満 20%以上30%未満 30%以上
産業群 ・宿泊業、飲食サービス業
・農業、林業、漁業
・運輸業、郵便業
・医療、福祉
・建設業
・製造業
・卸売業、小売業
・サービス業
・不動産業 など
・情報通信業
・金融業、保険業
・電気・ガス・熱供給・水道業

参考:DX白書2023|IPA

具体的には、宿泊業、飲食サービス業のDXの取り組み状況は16%で、運輸業の17%とほぼ変わらないことがわかった。もっともDXが進んでいるのは情報通信業と金融業、保険業の45%で、宿泊業と大きな差が見られた。

宿泊業でDXが遅れている理由の一つとして、IT人材の不足によってデジタル化へ対応できない点が考えられる。しかし、ホテルもデジタル化やDXに取り組まなければ、ホテルスタッフの業務負担軽減や業務効率化を図れず、離職率が高まってさらなる人手不足に陥ることが懸念される。

ホテルや旅館でDXを推進できる業務の例

ここからは、ホテルや旅館において、DXを推進できる業務の例と具体的なソリューションを見ていこう。今回は、次の5つの業務を紹介する。

 ● 宿泊の予約管理業務
 ● 清掃業務
 ● フロント業務
 ● 館内の案内業務
 ● レストランの配膳業務

宿泊の予約管理業務

宿泊の予約管理業務について、以下の方法でDX実現を推進できる。

 ● 電話予約が中心の場合...OTA(宿泊予約サイト)や自社Webサイトを活用する
 ● 紙の台帳で管理している場合...PMS(宿泊管理システム)を導入する
 ● 宿泊の予約管理業務の自動化を図りたい場合...RPAを導入する

電話予約を中心に予約を受け付けている場合、電話の内容を間違えないように正確に記録する必要があり、手間がかかる。さらに、電話予約では受付時間が限られてしまう。そこで、OTA(Online Trave Angent)と呼ばれる宿泊予約サイトや自社Webサイトを活用することで、予約情報を一元管理できるようになる。また、24時間いつでも対応でき、海外からの予約受け付けも容易になるだろう。

次に、紙の台帳で管理しているケースを想定してみよう。紙で顧客管理を行っている場合、スタッフとの共有や情報更新が煩雑で、さらに紛失リスクも伴う。そこで、PMS(Property Management System)の導入によって、予約管理や請求書発行、顧客管理などを効率的に行えるようになり、ペーパーレス化が実現する。

さらなる業務効率化や省人化を図りたい場合は、RPA(Robotic Process Automation)の活用がおすすめである。RPAは、定型業務を自動化するデジタル技術のことで、ホテルの予約受付や確認、変更、キャンセルなどの自動化を図ることができる。

宿泊者名や人数、日程といった基本情報だけではなく、宿泊予約サイトごとの詳細情報をホテル側のシステムに自動反映するよう設定することも可能。RPAの活用によって、予約管理担当者の業務品質を大幅に軽減し、人手不足対策になると考えられる。

株式会社ミライト・ワンは、ホテルの予約管理業務のRPA化支援サービスを展開している。サービスの詳細は以下のサイトで紹介しているので、ぜひチェックしてみてほしい。

予約管理業務自動化RPAソリューション

清掃業務

ホテルの清掃業務は「人が行う必要がある」というイメージがあるかもしれないが、これもDXを進めることが可能である。具体的には、自律走行する清掃ロボットの導入で、共有スペースを自動で掃除できるようになり、担当者の業務負担を軽減できる。

また、清掃スタッフとフロントスタッフの連絡方法をデジタル化することによって、リアルタイムの情報共有が実現する。

これまでは、フロントスタッフが客室の清掃状況を確認するために、内線や紙の連絡メモなどが主に利用されていた。しかし、この方法では内線電話がつながらない、連絡メモに漏れがあるなどの課題が残ってしまう。そこで、清掃完了後に簡単な操作でフロントへ通知する仕組みを構築することで、ゲストを案内できる部屋を瞬時に把握できるようになる。

株式会社ミライト・ワンでは、エレベーターと連携し自動で移動する清掃ロボットの導入を支援している。複数のフロアを移動しながら、通路の壁際までゴミを吸い込み、水拭きや乾拭きするロボットで、清掃スタッフの人手不足対策にもつながるだろう。

また、株式会社ミライト・ワンは、客室に設置してホテル情報を発信するだけでなく、スタッフ間の連絡にも使える「イータブ・プラス®」も提供している。「清掃管理画面」では全客室の清掃状況が一覧表示され、フロントスタッフは宿泊ゲストを清掃済みの部屋へスムーズに案内できるだろう。

2つのサービスについて、詳細は以下のリンクで解説している。ぜひ参考にしてみてほしい。

エレベータ昇降できる自律移動ロボット~後付けで連携可能~
~宿泊業DX~ ホテル客室タブレット「イータブ・プラス®」

フロント業務

宿泊中のゲストからフロントへの問い合わせ業務についても、DX化を進められる。

例えば、「Wi-Fiのパスワードを教えてほしい」「館内設備について知りたい」「アメニティを届けてほしい」などの要望を、内線電話ではなく、客室の専用タブレットから連絡する方法へ切り替えることができる。

宿泊ゲストにとっては、深夜や早朝でも必要な情報をタブレットですぐに確認できる点がメリット。フロントスタッフにとっては、頻繁に問い合わせのある項目をタブレットに掲載することで、宿泊ゲストからの内線電話が減り、業務効率化につながるだろう。

株式会社ミライト・ワンは、ホテルの施設・サービス情報を一元管理して宿泊ゲストに発信する「イータブ・プラス®」を提供している。「イータブ・プラス®」は客室専用のタブレットで、情報発信やアンケートの実施、アメニティやルームサービスのオーダーまで対応できる。

「イータブ・プラス®」の詳細は、以下のサイトで紹介している。ぜひチェックしてみてほしい。

~宿泊業DX~ ホテル客室タブレット「イータブ・プラス®」

館内の案内業務

館内の案内業務においても、DXを推進できる。

例えば、多言語対応ができるロボットを導入し、ゲストへ施設やサービス案内を自動化することで、フロントスタッフの負担軽減につながるだろう。現在、インバウンド需要が伸びている中、多言語対応ができる人材を確保するのが難しい場合、デジタル技術によって解決できる可能性があるので検討してみよう。

ロボットによっては、コンシェルジュとしての役割を果たすだけでなく、センサーやカメラなどが搭載され、遠隔地から操作できホテル内の巡回も実現する。

株式会社ミライト・ワンは、AIアシスタント機能搭載の「AI コミュニケーションロボット"temi"」を提供している。海外ゲストの案内を自動化したい場合、以下のサイトをチェックしてみてほしい。

AI コミュニケーションロボット"temi"

レストランの配膳業務

レストランの配膳業務についても、自律走行するロボットを導入することで効率化でき、DX化の一歩につながる。

例えば、株式会社ミライト・ワンが導入支援している配膳ロボットは、4人分のお皿をお盆に載せて料理をテーブルに届けることができる。料理はスケルトンの扉に囲まれているため、衛生的に運搬することが可能。配膳ロボットの詳細は、以下のサイトで紹介しているので、参考にしてほしい。

エレベータ昇降できる自律移動ロボット~後付けで連携可能~

ホテル・旅館がDXに取り組むメリット3つ

ホテル・旅館におけるDXとは イメージ

ホテルや旅館など、宿泊業がDXに取り組むメリットとして、主に次の3つがあげられる。

 ● 人手不足の解消につながる
 ● 接客品質の向上が期待できる
 ● ゲストの利便性が高まる

それぞれ、詳しく見ていこう。

人手不足の解消につながる

DXに向けた取り組みの一環として、ロボットや予約システムなどを活用すると、業務効率化や省人化につながることにより、人手不足が解消することが期待できる。

宿泊業の離職率は他の産業と比べて高く、慢性的な人手不足が課題の一つとなっている。人手不足が続くとスタッフ一人ひとりの業務負担が増え、疲弊してさらに離職する人が出てくるなど、負のスパイラルに陥る可能性がある。

そこで、ロボットやデジタル技術を活用して一部のホテル業務を自動化することで、スタッフへの負担が軽減し、限られた人員でも十分に対応できるようになるだろう。

関連リンク
ホテルで人手不足が深刻化する原因とは?5つの対策を紹介

接客品質の向上が期待できる

DX推進によって、業務効率化が実現してスタッフの負担が軽減し、余裕が生まれることで接客の質を高められることが期待できる。

リゾートホテルや旅館など、宿泊施設のタイプによっては高いホスピタリティが求められる。ロボットやデジタル技術の活用によって生まれた時間を、付加価値の高い業務にあてることで、顧客満足度の向上を図ることができるだろう。

ゲストの利便性が高まる

チェックインを自動化したり、チェックアウト時は自動精算機を導入したりすると、宿泊ゲストの利便性が高まる点も、ホテルでDXを進めるメリットの一つ。

ビジネスホテルやカプセルホテルでは、スタッフによる接客やホスピタリティよりも、利便性が重視される傾向にある。

チェックインの自動化や自動精算機の導入は、宿泊ゲストのフロントでの待ち時間を減らす役割がある。フロントスタッフにとっては、現金でのやり取りや計算ミスの減少、日々の売上集計の効率化につながるなど、双方にメリットがある。

ホテル・旅館におけるDXの事例5つ

ここでは国内を中心に、ホテルや旅館で実際に取り組まれているDXの事例5つを紹介する。

 ● 【国内】三井ガーデンホテル銀座築地|配送ロボットの導入
 ● 【国内】尾道国際ホテル|ノータッチステイサービス
 ● 【国内】ほほえみの宿 滝の湯|ビッグデータ分析で新プランを考案
 ● 【国内】白玉の湯 泉慶・華鳳|客室にタブレットを設置
 ● 【海外】Hilton|スマートフォンが鍵になるデジタルキー

【国内】三井ガーデンホテル銀座築地|配送ロボットの導入

三井ガーデンホテル銀座築地では、エレベーターと連携する配送ロボットを導入し、アメニティやレストランからの飲食物などを、全館183もの客室へ届けている。

これまでは、配送ロボットとエレベーターを連携させるには高額なコストと長い時間がかかっていた。しかし、株式会社ミライト・ワンが提供するエレベーター連携ロボットによって、短期間・低コストでの連携が実現した。

配送ロボットがエレベーターを自動昇降し、必要なものを客室へ運搬することで、スタッフの業務負担軽減や宿泊ゲストの利便性向上につながった事例である。詳しくは、以下のサイトもチェックしてみてほしい。

関連リンク
エレベーターと連携する配送ロボットを「三井ガーデンホテル銀座築地」に導入~従業員の配送業務の軽減や宿泊者の利便性向上に貢献~

【国内】尾道国際ホテル|ノータッチステイサービス

広島県の尾道国際ホテルでは、LINE経由でチェックインから会計まで対応する「ノータッチステイサービス」を提供している。

これは、LINE公式アカウントに登録し、予約情報の確認や、レジカードの電子署名などを事前に行うことで、宿泊当日にフロントでチェックインする手間が省ける仕組み。ホテル到着時に、LINE公式アカウントを通じて受け取ったQRコードをフロントで読み込ませるだけで、チェックインが完了する。チェックアウトも、LINE公式アカウント経由で済ませることが可能。

ホテル側のシステムと連携されているため、管理画面から宿泊ゲストのチェックイン・チェックアウトの状況を一目で確認することもできる。ノータッチステイサービスの詳細は、以下の記事でも紹介しているので、チェックしてみてほしい。

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ウィズコロナ時代の最新リゾートテック情報

【国内】ほほえみの宿 滝の湯|ビッグデータ分析で新プランを考案

山形県のほほえみの宿 滝の湯では、予約率の改善を図るために自社ホームページの現場分析を実施。さらに、ビッグデータも参考にしながら広域マーケティングに取り組み、周りに宿泊施設が少ない近隣温泉も楽しめる宿泊プランを再構築し、新たな付加価値を提供した。

その結果、外国人観光客を含めて注目度が向上して昨対で予約数が大幅に伸び、団体予約の獲得につながったという。

参考:宿泊業の生産性向上 事例集2|観光庁

【国内】帝国ホテル|客室にタブレットを設置

帝国ホテル 東京では、全ての客室に「イータブ・プラス®」という専用タブレットを設置した。

宿泊ゲストはタブレットからホテルの施設案内をチェックできたり、空調や証明など室内設備のコントロールができたりと、ホテルのサービス向上につながった。観光客が取り扱いやすいよう、操作画面はシンプルなデザインが採用されている。

参考:客室設置型タブレット「ee-TaB*® (イータブ・プラス)」による客室内設備のリモートコントロール機能を初導入~帝国ホテル 東京 本館にて、8月9日よりサービス開始~

【海外】Hilton|スマートフォンが鍵になるデジタルキー

国内だけでなく、海外ホテルもDXに取り組んでいる。Hiltonでは、無料のスマートフォンアプリを活用して「デジタルキー」が利用できる。デジタルキーは、滞在しているホテルの客室やエレベーター、フィットネス、駐車場など各施設にアクセスする際に必要となる。

常に肌身離さず持ち歩いているスマートフォンをデジタルキーとして使うことで、オートロックのホテルで部屋から締め出されるロックアウトの心配がなくなるだろう。

参考:ヒルトン。とまるところで、旅は変わる。|Hilton

まとめ

宿泊業界は、他の業界と比べてDXが遅れている傾向にある。しかし、フロントや清掃、レストランなど、多くのホテル業務はデジタル技術を取り入れて効率化を図ることができる。その結果、空いた時間を新たな宿泊プランや、付加価値の高いサービスの創出に使えるようになり、顧客満足度が高まるだろう。

株式会社ミライト・ワンは、ホテル運営の効率化と顧客満足度の向上だけでなく、脱炭素化も考慮した「MIRAIT ONE ホテルソリューション」を提供している。ホテルでのロボット活用や、ICT・通信設備環境の構築、環境対策までトータルでサポートするため、ホテルサービスの品質向上やブランドのイメージアップが期待できる。詳細は以下のサイトで紹介しているため、ぜひチェックしてみてほしい。

MIRAIT ONE ホテルソリューション

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