随所でAIを活用したスマートシティを目指す福岡市

2026年2月24日

九州最大の都市である福岡市は、AIや最先端技術を駆使したスマートシティの構築を目指し、市民の利便性向上と都市の持続可能な成長を両立させる先進的な取り組みを展開。象徴的なプロジェクトの1つ、旧九州大学箱崎キャンパス跡地を中心に展開する「FUKUOKA Smart EAST」では、約50万㎡という広大な土地で、福岡市や大学、民間が連携したスマートシティ・モデル都市をつくる大規模な再開発を進めている。

粗大ごみ収集をLINEで申請する福岡市の公式アカウント

FUKUOKA Smart EASTは、最先端のAI技術をゼロから都市基盤に組み込む「グリーンフィールド型」のスマートシティとして注目されている。そこでは、AIを用いた自動運転バスの運行や、ドローンによる配送サービス、さらにはパーソナルモビリティの活用といった次世代型交通インフラの実証実験が精力的に行われている。

こうした実証は単なる技術の導入に留まらず、AIが交通需要をリアルタイムで予測し、最適な運行ルートや配車を管理することで、渋滞の緩和や高齢者の移動手段確保といった地域課題の解決を目指している。都市の成長に伴うエネルギー消費の問題に対しても、AIを活用した効率的なエネルギーマネジメントシステム(BEMS/HEMS)が導入されており、街全体でCO2排出量を最適化する環境負荷の低いモデルケースとなっている。

行政サービスにおいても、AIチャットボットが市民の生活を支えるツールとして機能している。例えば「福岡市粗大ごみ受付LINE公式アカウント」は、福岡市とLINEヤフーらが締結した「地域共働事業に関する包括連携協定」に基づき、24時間いつでもLINE公式アカウント上から粗大ごみ収集申し込みを可能にするなど、市民サービスの向上を目的に導入された。

(図1)LINEアカウントによる粗大ごみ収集の受付画面(出典:LINEヤフーコミュニケーションズのプレスリリース) イメージ
(図1)LINEアカウントによる粗大ごみ収集の受付画面(出典:LINEヤフーコミュニケーションズのプレスリリース)

スタートアップの実証実験を市がフルサポート

福岡市には国立の九州大学をはじめとする15の大学と9つの短期大学があり、産学官連携の取り組みによるスマートシティ化を牽引。さらに、国家戦略特区として培った規制サンドボックスと「福岡市実証実験フルサポート事業」の取り組みによって、リアルな街区で素早く試せるさまざまな実証実験環境が整備されている。特に、地場企業や大学・研究機関、クリエイティブ人材が交わるコミュニティが、顔認証による入退室や会員証のモバイル化、AIカメラの匿名化人流解析、外国人向け多言語コンシェルジュや決済連携など、生活者起点のサービスを磨いている。

AIカメラによる画像解析を用いた人流データの可視化は、観光地の混雑緩和や店舗のマーケティング、さらには防犯対策など多岐にわたる分野で応用されている。例えば、福岡市交通局は市営地下鉄の駅内に計10台のカメラを設置し、画像解析AIを活用した安全性向上の実証実験を実施。天井が低い地下空間の環境においても画像解析が正常に機能するのかや、あらかじめ想定した通りの事象を画像解析によって検知できるのかなどを確認した。

また、AIカメラを活用したエスカレーターの利用マナー向上の取り組みでは、主要地下鉄駅のエスカレーターにLiDARセンサーを設置。エスカレーター上を歩いている人には歩行を止めるよう音声で注意喚起し、片側が空いていて乗り口付近に待機列が発生した場合は、2列で利用するように音声で呼びかける仕組みを構築している。

(図2)AIカメラを活用した低天井の地下空間での人流データの可視化(出典:福岡市交通局の資料より抜粋) イメージ
(図2)AIカメラを活用した低天井の地下空間での人流データの可視化(出典:福岡市交通局の資料より抜粋)

実証実験の結果を他の自治体でも活用

一方、福岡市のような都市では雨水管路網の整備によって雨水は管路から河川に排出されるが、近年の豪雨ではマンホールや側溝から雨水が溢れる「内水氾濫」も起きている。そのため、都市部で排水できなくなった雨水をポンプで汲み上げ、強制的に河川へ排水することが求められているが、手動で操作する雨水ポンプ場では、いつポンプを操作するかわからない中で待機する作業員の負担が大きくなっている。

そこで福岡市は、日水コンとクボタ環境エンジニアリングが開発中の、AIを活用してリアルタイムに浸水を予測し、雨水ポンプ場の運転を支援する「水害対策ワンストップソリューション」の実証実験をフルサポート事業として採択。2025年7月より市内の雨水排水施設を対象に、実際の豪雨時における精度や効果を検証している。

本ソリューションは福岡市で得た実証結果をもとに、全国各自治体への適切な施設管理体制の構築支援を目指している。こうした実証実験を積極的に支援する福岡市にとって、AIは単に便利な道具ではなく、急速な人口減少や超高齢社会、地球温暖化による異常気象への対応といったさまざまな社会課題を乗り越え、豊かで活気あるスマートシティを構築するための羅針盤の役割を担っているようだ。

(図3)水害対策ワンストップソリューション(都市下水予測)のイメージ(出典:日水コンのプレスリリース) イメージ
(図3)水害対策ワンストップソリューション(都市下水予測)のイメージ(出典:日水コンのプレスリリース)

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