つくば市が進めるスーパーシティ構想とは

2025年12月15日

茨城県つくば市は、「スマートシティ」や国が進める「スーパーシティ/国家戦略特区」構想などに先進的に取り組んでいる自治体の1つだ。ここでは、その概要を紹介する。

つくば市スーパーシティ構想とは

つくば市は、もともと「研究学園都市」「科学の街」として発展してきたが、国の「スーパーシティ/国家戦略特区」構想などを先進的に取り組んでいる。スーパーシティとは、AIやビッグデータ等の未来技術を活用することで、生活の中の「困りごと」の解決を図り、住民が「住みたい、住み続けたい」と感じるより良い未来社会を実現することを目指す。データの利活用と規制・制度改革を推進し、暮らしを支えるさまざまな最先端サービスを地域に社会実装していく取組みだ。

つくば市はこれまでの取組や提案が認められ、2022年4月12日に政府から「スーパーシティ型国家戦略特別区域」として区域指定された。つくば市は、住民のつながりを力にして、大胆な規制改革とともに先端的な技術とサービスを社会実装することで、⼤学や研究機関が科学的⼿法によりエビデンスを創出するだけでなく、さらにその実問題を基礎研究に還流させる大学・国研連携型スーパーシティの実現を目指している。

市長を本部長とする「つくば市スマートシティ推進本部」が推進役となり、つくばスマートシティ協議会、公募で選定した連携事業者、その他連携機関と緊密な連携・協力関係を構築のもと、スーパーシティ構想実現に向けて全庁横断的に取り組んでいる。

(図1)「つくば市スーパーシティ構想」概要(出典:つくば市) イメージ
(図1)「つくば市スーパーシティ構想」概要
(出典:つくば市)

具体的な実現項目

行政分野では、スマートフォンやタブレットで本人確認し、秘密投票が確保されたインターネット投票を実現するほか、分散する行政情報を集約し、多言語で表示するポータルアプリを構築。また、行政手続きのDXを進め、住民ニーズに合った行政手続を提供する。さらに、住民の声などを分析し、制度の隙間問題やデータ分析のバイアス等を検証し、的確なEBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)を推進していくという。

そのほか、公的個人認証により本人確認済みのIDで複数のサービスをつなぐ共通デジタルIDプラットフォーム 「つくパス」も実現する。

移動分野では、パーソナルモビリティ+ AI オンデマンドバスサービスで地域内の主要な目的地(病院、店舗、公共施設等)へのスムーズな移動を実現。「こどもMaaS」として、市内主要公園を低速自動走行モビリティで結び、親子での外出を支援する。また、タクシーの相乗りサービスや自動運転循環バス、自動走行パーソナルモビリティのシェアリングなどを実現するという。

(図2)自動運転バスの実証の様子(出典:つくば市) イメージ
(図2)自動運転バスの実証の様子(出典:つくば市)
(図3)低速自動走行モビリティの実証の様子(出典:つくば市) イメージ
(図3)低速自動走行モビリティの実証の様子
(出典:つくば市)

物流分野では、自動搬送ロボットやドローン、自動追従型荷物搬送ロボットによる購入品の搬送支援を行う。また、移動スーパー(移動販売車)の位置の見える化や、自宅と営業場所間のパーソナルモビリティの活用といった移動スーパーの高度化を実現する。

(図4)自動追従型荷物搬送ロボット実証の様子(出典:つくば市) イメージ
(図4)自動追従型荷物搬送ロボット実証の様子
(出典:つくば市)

医療分野では、健診結果や既往歴、体調等に基づいた食のレコメンドによる生活習慣病予防や医療・介護・薬局間で相互に情報を参照・分析・評価できる環境を構築。効果的な組み合わせの薬剤処方や、多様な幸せの在り方に合わせたケアを実現するという。

(図5)健診結果や既往歴、体調等に基づいた食のレコメンド(出典:つくば市) イメージ
(図5)健診結果や既往歴、体調等に基づいた食のレコメンド
(出典:つくば市)

防犯・防災・インフラサービスでは、避難所の開設状況や被害状況、混雑情報、備蓄品、電源供給可能な水素燃料電池バスの位置を地図上で可視化し、住民の安全・安心な避難を支援。 災害対策本部と避難所担当職員を双方向でつなぎ、市役所の災害対応を効率化する。また、学校が収集した不審者情報をつくばアプリの地図を経由して、保護者等希望する住民にプッシュ配信し、犯罪回避を促すことにより安全・安心なまちを実現するという。

これらの項目に関して2023年度は、予約すると移動投票車が自宅まで巡回してくれる「オンデマンド型移動期日前投票所」、国内初・自動追従ロボットによる荷物運搬支援の実証実験、つくば市の乗り合いタクシー「つくタク」をスマホアプリで予約・乗車する実証・実験を行った。「つくタク」は、乗車日の7日前から24時間いつでも予約可能で、現在は1時間に1運行だが、今後は、AIを活用することで運行本数が倍以上になるよう、1時間に複数回の運用を目指す。

(図6)「オンデマンド型移動期日前投票所」(出典:つくば市) イメージ
(図6)「オンデマンド型移動期日前投票所」
(出典:つくば市)

そのほか、つくば市の街中を巡る移動サービス「つくモビ」やカメラとセンサーで車や人の動きを捉えながら自動運転バスを運行する実証を行った。

(図7)「つくモビ」(出典:つくば市) イメージ
(図7)「つくモビ」(出典:つくば市)

2024年度は、パーソナルモビリティの活用に向けたシェアリングの実証を行った。パーソナルモビリティでは、最高速度を時速10kmにすることや制限エリアに入ると減速すること、人にぶつかりそうになると停止させる実証も行った。

また、ハンズフリーでバスの乗り降りを可能にするハンズフリーチケッティングや自動運転バスの実証も行った。

(図8)ハンズフリーでバスを乗り降りする実証(出典:つくば市) イメージ
(図8)ハンズフリーでバスを乗り降りする実証
(出典:つくば市)

ハンズフリーチケッティングは、家族が目的の場所に到着できたのか、スマホで確認でき、施設の受付でも利用することもできる。

(図9)ハンズフリーチケッティングは家族による見守りも実現(出典:つくば市) イメージ
(図9)ハンズフリーチケッティングは家族による見守りも実現
(出典:つくば市)

自動運転バスでは、2023年度は小型バスで最高速度19km/時、走行距離は3.9kmだったが、翌年度は中型バスで最高速度35km/時、走行距離は10.1kmに拡大して実施された。つくば市は、どのようなシステムであれば、赤字にならず持続可能な仕組みにできるかも研究しているという。

(図10)自動運転バスはレベルを上げて実証(出典:つくば市) イメージ
(図10)自動運転バスはレベルを上げて実証
(出典:つくば市)

また、こども「MaaS」において、低速自動運転モビリティ「YADOCARi(ヤドカリ)」の実証も行われた。

そのほか、マイナンバーカードを持つ人を対象にしたインターネット投票、障害者を対象に車いすにも対応した「オンデマンド型移動期日前投票所」、PHR(Personal Health Record)アプリを利用した食事記録を共有しながらオンライン栄養指導、遠隔操作ロボットを活用した重度障害の遠隔就労、災害や火災などを想定し住民から投稿された街の画像による状況を把握する実証なども行われた。

(図11)遠隔操作ロボットを活用した重度障害の遠隔就労の実証(出典:つくば市) イメージ
(図11)遠隔操作ロボットを活用した重度障害の遠隔就労の実証
(出典:つくば市)
(図12)住民から投稿された街の画像による状況を把握する実証(出典:つくば市) イメージ
(図12)住民から投稿された街の画像による状況を把握する実証
(出典:つくば市)

つくば市では、2027年度から順次実用を開始し、2030年度にスーパーシティ構想を実現する計画だ。

(図13)「つくば市スーパーシティ構想」のロードマップ概要(出典:つくば市) イメージ
(図13)「つくば市スーパーシティ構想」のロードマップ概要
(出典:つくば市)

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