宇宙からの監視も可能になったAIを活用した水道管理

2026年6月8日

都市インフラの老朽化が進むなか、水道管の漏水や異常をいかに早期に発見し、水資源の損失を抑えるかが、多くの自治体や事業者にとって重要な課題となっている。こうした課題の解決策として注目されているのが、AIを活用したスマートインフラ技術による水道管理だ。

漏水の早期発見を支えるAI水道管理

従来の水道管理では、路面状況の変化や通報、定期点検などを通じて異常を把握する場面が多く、実際に漏水箇所を特定するまでに時間と労力がかかることが少なくなかった。これに対し、AIを用いた漏水検知システムでは、水道管網の各所に設置したIoTセンサーが水圧、流量、振動といったデータを継続的に取得。その変動パターンをAIが分析することで、目に見えない地下の異常を推定する。漏水や異常を早い段階で捉えることで、修理コストや水損失の削減につながる点が評価されている。

この仕組みの強みは、単に異常の有無を捉えるだけでなく、通常時の挙動と異常時のわずかな差分を学習し、漏水の可能性を早期に示唆できる点にある。水道管の状態は、時間帯ごとの使用量の変動や周辺環境からも影響を受けるため、一定の閾値だけで異常を判断する方法では見逃しや誤検知が起きやすい。AIはこうした複雑な変化を踏まえてデータを評価できるため、現場の調査対象を絞り込みやすくし、保守運用の効率化にもつながる。

さらに、近年は人工衛星から取得した電磁波データや水道水の反射波データ、地表面温度データ、過去の漏水記録、埋設年数などをAIが分析し、漏水リスクの高い箇所を地図上にヒートマップで表示するなど宇宙の利用も進んでいる。衛星データの解析では、漏水の疑いがある範囲を半径100m程度まで絞り込むことも可能になった。

(図1)人工衛星による水道水の反射波データをAIで解析して漏水区域を特定するシステムのイメージ(出典:国土交通省「水道行政の最新動向について」より引用) イメージ
(図1)人工衛星による水道水の反射波データをAIで解析して漏水区域を特定するシステムのイメージ
(出典:国土交通省「水道行政の最新動向について」より引用)

水資源管理の高度化を進めるシンガポール

海外では、漏水検知なども含めた水資源管理にAIを活用し、都市インフラ全体の高度化の一環として位置付ける動きが目立っている。その代表例の1つとして挙げられるのが、シンガポールでの取り組みだ。限られた国土の中で、安定した水供給と効率的な資源利用が求められるシンガポールでは、島内の貯水池に加えて、隣国からのパイプラインによる水供給に依存する必要もあった。そうした課題を解決するため、AIを用いた水道の監視・管理を導入するなど、国を挙げて水問題の解決に取り組んでいる。

シンガポールの水資源管理戦略の中核を担う公益事業庁(Public Utilities Board:以後は「PUB」に統一)のインテリジェント水管理システムは、センサーとAIを駆使して水道網を監視。こうしたスマート水道網の構築によって、IoTデバイスがリアルタイムで漏水を検知できるようにした結果、非収益水(漏水などにより料金収入につながらない水)の割合を10%削減した。PUBのデジタルツインは洪水予測も可能で、2020年には排水システムのデジタル化で雨水収集を最適化した事例も報告されている。

水需要予測においても、AIによってPUBが平日や週末の需要パターンを分析し、天候に基づく調整を実行。これにより、水処理プラントの運用効率が大幅に向上した。さらに下水道分野では、CCTV画像のAI分析によって管の状態を自動評価している。

シンガポールのように都市全体のスマート化を進める地域では、水道管理も単独で完結するのではなく、エネルギー、交通、防災といった他分野のデータ活用と親和性を持ちながら、都市の基盤を支えるスマートインフラの一部として評価されているようだ。

(図2)シンガポールの水資源循環(出典:PUBのWebページより引用) イメージ
(図2)シンガポールの水資源循環(出典:PUBのWebページより引用)

国内でも広がるAIを活用した水道DXの取り組み

日本でも水道インフラの老朽化、人手不足、維持管理コストの増大といった課題を背景に、AIやIoTを活用した水道DXへの関心が高まっている。特に漏水検知は、限られた予算と人員で効率的に保全を進めるうえで重要なテーマであり、従来の巡回点検や経験則に依存した運用から、データに基づく保守管理への移行が求められている。

例えば、ミライト・ワンでは通信やインフラ分野で培ってきた知見を生かしながら、水道設備の監視や運用高度化に関する取り組みを展開。水道局が保有する水道管設備データと漏水データ、環境ビッグデータを用いて、管路ごとに将来の漏水確率を予測する。これによって更新優先順位を明確にすることで、漏水事故の未然防止・管路の長寿命化を図れるようになる。

AIによる漏水検知システムは、単に新しい技術を導入するだけでは十分ではなく、センサー設置、通信環境の整備、データの蓄積、現場運用との連携まで含めて設計する必要がある。その意味で、インフラ運用に関する実務的なノウハウを持つ事業者の役割は、今後さらに重要になってくるだろう。

(図3)AIを活用した管路劣化診断のイメージ(出典:国土交通省「水道行政の最新動向について」より引用) イメージ
(図3)AIを活用した管路劣化診断のイメージ(出典:国土交通省「水道行政の最新動向について」より引用)

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