海外のドローン災害対応事例紹介

2026年9月7日

大規模災害の現場では、発災直後から「どこで何が起きているのか」を短時間で把握することが求められる。しかし、地震で道路が寸断されたり、山火事で煙が広がったり、洪水で市街地が浸水したりすると、人が現場に入って確認すること自体が危険になる。こうした課題の解決に、海外ではドローンを用いた災害対応が広がっている。上空からの映像や熱画像、3次元データを活用することで、被害状況の把握、要救助者の捜索、消防・警察・自治体の意思決定を支える仕組みが整いつつある。

広域被害の把握を支えたトルコ地震

ドローンによる災害対応の代表的な事例の一つとして挙げられるのが、2023年2月に発生したトルコ地震での活用だ。マグニチュード7.8の大地震により、トルコ南部を中心に広範囲で建物が倒壊し、道路や通信網にも大きな被害が出た。被災地が複数の都市にまたがったため、行政や救助機関は限られた時間の中で、どの地域に救助隊や重機を優先的に送るべきかを判断する必要があった。

このような場面で、ドローンは上空から倒壊建物の分布や道路の通行可否、避難場所周辺の混雑状況を確認する手段として活用された。地上からの確認では時間がかかる地域でも、ドローンを飛行させることで、数分から十数分の単位で被害の全体像を把握できる。特に、余震によって2次災害の危険がある建物周辺では、救助隊が直接近づく前に上空映像で危険箇所を確認できる点が重要だった。

また、赤外線カメラや高倍率カメラを搭載した機体は、がれきの中に取り残された人の発見や、夜間の状況確認にも役立った。もちろん、ドローンだけで生存者を特定できるわけではなく、救助犬や音響探知機、人による捜索と組み合わせることで、捜索範囲を絞り込める。トルコ地震の事例は、ドローンが単なる記録用の機材ではなく、救助活動の優先順位を決めるための情報基盤になり得ることを示した。

一方で、大規模災害時には多数の機関が同時に活動するため、飛行ルートや高度、通信手段の調整が不可欠となる。救助ヘリや医療搬送機との空域調整が不十分であれば、ドローン自体が新たなリスクになる。トルコ地震では、災害対応におけるドローンの有効性と同時に、指揮系統、データ共有、飛行許可の標準化という運用面の課題も浮き彫りになった。

(写真1)2023年2月6日に発生したトルコ地震の様子(出典:VOA, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由) イメージ
(写真1)2023年2月6日に発生したトルコ地震の様子(出典:VOA, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由)

空から延焼リスクを監視するロサンゼルスの山火事

近年、米国カリフォルニア州では乾燥や強風を背景に大規模な山火事が繰り返し発生しており、ロサンゼルス周辺でも住宅地に迫る火災への対応が大きな課題となっている。山火事では、炎そのものだけでなく、風向きの変化、飛び火、煙による視界不良が消防活動を難しくする。こうした環境では、ドローンによる上空監視が現場の状況判断を支えることになる。

ロサンゼルス周辺の消防機関では、熱画像カメラを搭載したドローンを使い、火の勢いが強い場所や地表下に残る熱源を確認する取り組みが進められている。日中は煙で見えにくい場所でも、熱画像を使えば高温部分を検出しやすくなる。夜間や消火後の巡回では、再燃の恐れがあるホットスポットを見つけることができ、消防隊員が危険な斜面や焼け残った建物に不用意に近づくリスクを減らせる。

山火事対応で重要なのは、ドローンが取得した情報を現場指揮にどう結び付けるかだ。上空映像を地図上に重ね、延焼方向や避難路、住宅密集地との位置関係を共有できれば、放水の優先地点や住民避難の判断に活用できる。ヘリコプターや固定翼機による消火活動と比べると、ドローンは積載量では劣るものの、低高度で柔軟に飛行し、危険区域を近距離から観察できる点に強みがある。

一方、ロサンゼルスの山火事のような大規模火災では、無許可の民間ドローンが消防航空機の運航を妨げる問題も指摘されている。実際に米国では、火災現場周辺での無断飛行により、消火ヘリや航空機が一時的に活動を止めざるを得ないケースが発生した。そのため、災害対応にドローンを活用するには、機体性能だけでなく、飛行禁止区域の周知、機体識別、緊急機関との連携ルールが欠かせない。ロサンゼルスの事例は、ドローンが消防活動を高度化する一方で、空域管理そのものを災害対応の一部として設計する必要があることを示している。

(写真2)ロサンゼルスの山火事で焼けた車両(出典:Unsplash Venti Views) イメージ
(写真2)ロサンゼルスの山火事で焼けた車両(出典:Unsplash Venti Views)

捜索と復旧判断に活用されたスペインの洪水

(写真3)スペインのドニャーナ国立公園の冠水の様子 イメージ
(写真3)スペインのドニャーナ国立公園の冠水の様子

欧州では、気候変動に伴う豪雨災害への対応でもドローンの活用が進んでいる。スペインでは近年、短時間に激しい雨が降ることで河川の氾濫や市街地の浸水が発生し、道路、橋、鉄道、住宅地に大きな被害が出ている。特に洪水災害では、水が引くまで現場に近づけない地域が多く、流木や泥、倒壊物によって2次災害の危険も高い。

スペインの洪水対応では、警察、消防、軍の緊急部隊などがドローンを使い、孤立地域の確認や行方不明者の捜索、被災インフラの点検を行った。上空からの映像により、浸水した道路の通行可否、橋梁の損傷、車両が流された場所などを素早く把握できる。広範囲を俯瞰できるため、地上部隊がどのルートで進入できるかを判断する材料にもなる。

洪水後の復旧段階でも、ドローンは重要な役割を担っている。例えば、農地や住宅地に堆積した土砂の範囲、河川堤防の損傷、送電線や通信設備の被害を記録することで、復旧工事の優先順位が決めやすくなる。従来は職員が現地を歩いて確認していた作業も、ドローンによる撮影データをもとにすれば、短時間で広域の被害を比較できる。さらに、同じ地点を時間を置いて撮影することで、水位の低下や道路啓開の進捗を継続的に確認できる。

スペインの事例では、ドローンが発災直後に被災状況を記録し、関係機関で共有している。これによって、復旧計画や住民説明への活用までを一連のプロセスとして設計するなど、ドローンが災害対応全体の情報インフラになっている。

こうした海外事例は、日本における災害対応ドローンの導入を考えるうえでも、さまざまな教訓を示している。地震、山火事、洪水のいずれの災害においても重要なことは、得られた情報を安全かつ迅速な意思決定につなげるためのドローンの運用体制を早急に確立させることだろう。

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