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二度の熊本地震で進化した災害ドローン活用−可視化、屋内調査、復旧判断を支えた空からの災害対応
2026年7月に熊本を襲った令和8年熊本地震では、道路の寸断、斜面崩壊、住宅被害、河川や橋梁の損傷など、広範囲にわたる被害状況を短時間で把握する必要があった。こうした初動対応で存在感を示したのがドローンだ。熊本では2016年4月に起きた平成28年熊本地震でも、南阿蘇村の大規模斜面崩壊や益城町周辺の住宅被害、道路・橋梁の損傷確認などでドローンが活用されている。この取り組みが、日本の災害対応においてドローンの有効性が広く認識されるきっかけの一つになったと見られている。
被災地の可視化と復旧判断の支援
令和8年熊本地震では、平成28年熊本地震の経験を踏まえた対応が取られた。ドローンの活用は、単に空撮する段階から、取得したデータを即時に共有し、復旧工事や避難判断に結び付ける運用へと進化している。特に注目される事例の一つが、航空測量や地理空間情報、防災分野に関わる国際航業による、被災地の状況把握支援だ。同社は災害発生後にドローンや航空写真、衛星画像、地図情報を組み合わせ、被害範囲の把握や復旧計画の基礎資料作成に関わっている。
こうした災害で特に効果を発揮するのは、山間部や斜面崩壊が発生した地域での3次元データ化だ。地震後の斜面は余震や降雨によって二次災害の危険が高く、調査員が徒歩で近づくことは容易ではない。そのため、ドローンで上空から連続撮影を行い、写真測量によって地形の変化を立体的に把握することで、崩壊土砂の分布、道路への流入状況、河川閉塞の可能性などが短時間で確認できる。
一方で、ドローンで取得されたデータは、災害対策本部での判断にも役立っている。災害時には緊急車両などが通行できるように、早急に最低限の瓦礫処理を行い、簡易な段差修正等によって救援ルートを開ける「道路啓開」が重要になる。その優先順位を決める際、どの路線が完全に寸断されているのか、迂回路として使える道路が残っているのかを地図上で確認できることは大きい。従来であれば現地報告を待って判断していた場面でも、ドローンで取得した画像を共有することで、複数機関が同じ状況認識を持ちやすくなった。

(図1)令和8年熊本地震に伴う地殻変動の3次元解析結果(出典:国土地理院)
危険区域での状況確認を実施し映像を取得
また、震災後には商業施設で爆発事故が発生し、建物内部の天井や壁が崩落し、鉄骨や配管がむき出しになるなど、原形をとどめない状況となった。そうした現場において、人が安全に立ち入ることのできない空間の奥へ進入したのもドローンだった。JUIDA(日本UAS産業振興協議会)からの協力要請を受けた、リベラウェア、ブルーイノベーション、テラドローン、テラ・ラボ、イームズロボティクスなどの民間ドローン事業者は、自衛隊や消防、警察などと連携しながら、屋内捜索、被害状況の確認、広域の情報収集、有人機を含む航空運用の調整など、それぞれの役割を担った。
例えばブルーイノベーションは、設備点検などの屋内飛行の運用ノウハウを活かし、イオンモール熊本においてドローンを活用した建屋内の状況確認を実施している。そこでは、GNSSが利用できない屋内環境や粉じん・暗所でも安定した飛行が可能な屋内点検用ドローンなどを活用。人が立ち入ることが困難な災害現場において、救助隊員が入る前にドローンを偵察役として送り込むなど、災害時におけるドローン活用の幅を広げている。また、テラドローンでは、現地で、屋内目視点検用ドローン「Terra Xross 1」を用いて、イオンモール熊本において、要救助者の捜索ならびに倒壊した建物や構造物など、人が立ち入ることが困難な場所の状況把握をした。

(図2)爆発事故を起こしたイオンモール熊本内の様子をドローンで撮影した画像(出典:テラドローンのYouTube動画より)
広域での被災状況把握と孤立地域への物資輸送
一方で、地震直後は橋梁の損傷や落石、道路陥没によって車両が進入できない地域が生じ、住民の安否確認や建物倒壊の有無、火災や土砂崩れの発生状況をいかに早く把握するかが課題となる。そこでは赤外線カメラを搭載したドローンが上空から集落全体を見渡し、屋根瓦の崩落、道路閉塞、孤立家屋の有無を確認することで、救助隊がどの経路で入るべきかを判断しやすくした。山間部の孤立地域では、小型の医薬品や通信機器、衛生用品をドローンで届ける試みも行われた。重量や飛行距離には制約があるものの、道路復旧を待つしかなかった従来の対応に比べ、初動の選択肢を広げた点は重要だ。
平成28年熊本地震の経験が支えた災害ドローン活用の進化
平成28年熊本地震では、前震と本震が相次ぎ、益城町や南阿蘇村を中心に甚大な被害が発生した。阿蘇大橋周辺の斜面崩壊、道路や鉄道の寸断、住宅の倒壊など、地上から全体像をつかむことが難しい被害が多く、ドローンによる空撮や測量の有効性が強く認識された。当時は、災害時にドローンをどのように飛ばすか、誰が許可を取り、どの機関にデータを渡すかといった運用面に課題もあった。撮影した映像があっても、地図情報と結び付いていなければ、復旧工事や避難計画に使いにくい。飛行ルール、安全管理、操縦者の確保、データ共有の手順など、災害現場で実用的に使うためには多くの整備が必要だった。
令和8年熊本地震の対応では、こうした課題への改善が見られた。国際航業のような地理空間情報の専門企業、自治体、消防、建設会社、インフラ事業者がそれぞれの役割を分担し、取得した画像や3次元データを防災システムや地図上で共有する流れが強まり、ドローンは単独の機材ではなく、災害情報を集めるセンサーの一つとして位置付けられるようになったと言える。また、ドローンが災害対応の周辺技術から、初動調査、救助支援、復旧計画を支える基盤技術へと変わりつつあることを示した。
一方で、複数機関が同じ空域で飛行する場合の調整、強風や降雨時の安全確保、バッテリーや通信環境の制約、住民のプライバシー保護などの課題も残る。特に震災直後はヘリコプターによる救助や報道飛行も行われるため、ドローンの飛行管理を誤れば二次的なリスクになりかねない。今後も、災害の規模や状況によってドローンの活用目的や形態は様々に変化していくと思われるが、被災地を安全に、早く、正確に見る技術として、ドローンの役割はさらに広がっていくだろう。

(図3) 航空機およびドローンによる観測データを統合した「共通状況図」(出典:テラ・ラボのプレスリリースより)
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