AIと無人建機が変えるインフラ施工の最前線

2026年10月13日

道路やダム、トンネルなどのインフラ工事は、天候や地盤の状態によって作業条件が変わるうえ、設計変更も多い。工場のように完全に管理された環境ではないため、自動化が難しい分野とされてきた。しかし、近年はICT技術を活用し、AIやドローン、3次元測量、建機の自動制御、クラウド型施工管理などを組み合わせて、測量から施工、検査までをデータでつなぐ動きが広がっている。自動化の対象も、単一の建機操作から複数工程の最適化へ移りつつある。

ICT建機を活用して施工データを一体化

国内における建設DXの代表例が、コマツの「Smart Construction」だ。ドローンやレーザースキャナーで現場を測量し、取得した地形データと設計図面を3次元化する。施工前後の形状を比較することで、掘削量や盛土量、工事の進捗をクラウド上で把握できる仕組みになっている。従来の土木工事では、測量担当者が現場に入り、杭や目印を設置したうえで、オペレーターが経験を頼りに建機を操作していた。Smart Constructionでは、GNSS(衛星測位システム)や各種センサー、3次元設計データを活用して位置や作業を自動制御・補助するICT建機に設計データを送ることで、油圧ショベルの掘り過ぎを防いだり、ブルドーザーの排土板を自動制御したりする。

近年は、すべての建機を高価な最新機種へ入れ替えなくても、既存の油圧ショベルに後付けして位置情報や施工履歴をデジタル化できる「3D Machine Guidance」なども展開。現場全体をデジタル空間に再現するデジタルツインの活用も進み、土量の配分、建機の配置、運搬経路を施工前に検討できるようになった。

とはいえ、現状のSmart Constructionは、建機があらゆる状況を判断して工事を完結させる完全自動化ではない。埋設物や軟弱地盤、周辺作業員の動きというような想定外の事象には、人による監視と判断が必要になる。現段階では、人による監視と判断を前提に、少人数でも安全かつ効率的に現場を運営できるよう支援する仕組みといえる。

(図1)車両の位置や高さなどの走行・施工履歴データを自動で取得・保存する「3D Machine Guidance」(出典:EARTHBRAINのWebサイトより引用) イメージ
(図1)車両の位置や高さなどの走行・施工履歴データを自動で取得・保存する「3D Machine Guidance」(出典:EARTHBRAINのWebサイトより引用)

生成AIを活用して工程遅延や安全リスクを予測

建設現場では、膨大な写真、検査記録、指摘事項、作業日報が作成される。管理者がそのすべてを確認し、重大な問題を見つけ出すには時間がかかる。そこで、建機の自動運転とは別の方向から自動化を進めているのが、Autodeskのクラウド型施工管理だ。同社の「Autodesk Construction Cloud」は、設計図面や工程、品質、安全管理に関する情報を集約でき、AIを用いた「ConstructionIQ」が現場のリスク分析を支援する。また、ConstructionIQは過去のプロジェクトや現場で蓄積された情報を分析し、品質不良、手戻り、安全上の問題につながる可能性が高い項目を優先的に表示する。これによって、現場監督はすべての報告を同じ密度で確認するのではなく、注意すべき箇所に人員と時間を集中できるという。

生成AIを組み込んだ、「Autodesk Assistant」の活用も進んでいる。自然言語で質問し、必要な仕様やプロジェクト情報を探すことができるため、図面や文書を横断して確認する作業の短縮が期待される。将来的には、工程の遅れや資材搬入の競合をAIが予測し、代替工程を提案する運用も可能になるかもしれない。

ただし、AIが示すリスクは、入力されたデータの量と質に左右される。日報の表現が統一されていなかったり、現場写真が不足していたりすれば、適切な判断は難しい。将来的にAI施工管理を定着させるには、ソフトウェアの導入だけではなく、記録方法や責任分担を標準化する必要があるだろう。

(図2)AutodeskのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトウェアに組み込まれたAutodesk Assistantのイメージ(出典:AutodeskのWebサイトより引用) イメージ
(図2)AutodeskのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトウェアに組み込まれたAutodesk Assistantのイメージ(出典:AutodeskのWebサイトより引用)

無人建機を集団制御する自動施工

中国の建機メーカーであるXCMGやSANYは、高速道路や鉱山、ダムなどの大規模工事を対象に、複数の無人建機を同時に動かす技術の開発を進めている。例えば、無人ローラーやアスファルトフィニッシャー、運搬車を5G通信や高精度測位と連携させ、施工隊列として制御する技術を開発している。道路舗装では、フィニッシャーが設定された走行経路に沿ってアスファルトを敷き、その後を複数の無人ローラーが追従する。AIは走行速度、転圧回数、路面温度などを分析し、締め固めの不足や重複を抑える。人が搭乗し続ける必要がないため、高温、粉じん、高地といった厳しい環境での安全性向上にもつながる。

この取り組みでは、個別作業の自動化にとどまらず、現場全体を一体的なシステムとして運用しようとしている。映像、建機の位置、燃料消費、施工品質を遠隔管制センターに集約し、異常があれば人が介入する。鉱山では無人運搬車の商用運用も拡大しており、一般の建設現場より早く、限定区域内での高度な自動化が実現している。

一方で、市街地の工事には歩行者や一般車両が入り、地下埋設物などの不確定要素も多い。通信障害や測位誤差が発生した場合の停止ルール、事故時の責任、サイバー攻撃への対策も欠かせない。このため、近い将来に普及するのは完全無人の現場ではなく、AIが施工計画と機械制御を担い、人が安全監視と例外対応を行う「監督型自動化」になると考えられる。建設DXの到達点は人を現場から排除することではなく、人にしかできない判断へ役割を集中させることにあるだろう。

(図3)サウジアラビアの道路補修工事に使われたXCMGのロードローラー(出典:XCMGのWebサイトより引用) イメージ
(図3)サウジアラビアの道路補修工事に使われたXCMGのロードローラー(出典:XCMGのWebサイトより引用)

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