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ローカル5Gの活用で
観光向けモビリティも自動運転に進化

2022年05月20日NEW
ローカル5Gの活用で観光向けモビリティも自動運転に進化 イメージ
#ローカル5G#自動運転
ローカル5Gの活用で観光向けモビリティも自動運転に進化 イメージ
#ローカル5G#自動運転
話し手
  • 株式会社エイビット
    執行役員 5G事業部 事業部長
  • 池田 博樹氏

乗用車をはじめ、バスやトラックなど自動運転はさまざまな形態のモビリティで活用されようとしている。その流れは陸上だけではなく水上にも及んでおり、小型船から大型船までを自動運転によって航行制御しようとする取り組みが進んでいるようだ。そして観光分野では、地上から直接湖に着水して航行する水陸両用船(バス)を、自動で運転する実証実験が行われた。その実験をローカル5Gで支援したエイビットの池田博樹氏に、取り組みの概要や課題、将来展望などについて伺った。

水陸両用船の監視や遠隔運転をローカル5Gで

 水上における自動運転への取り組みは、少子高齢化による人口減少が進む日本では陸上の公共交通と同じように、人手不足が進む内航海運の船員の確保に影響を与えているようだ。そうした課題の解決に取り組んでいるのが日本財団で、2025年までに無人運航船の実用化を目指し、2040年には国内の内航船の半分を自動運転化するプロジェクト「MEGURI2040」を進めている。

(図1)日本財団が進める水上の自動運転プロジェクト「MEGURI2040」のコンソーシアム(出典:日本財団の発表資料より) イメージ
(図1)日本財団が進める水上の自動運転プロジェクト「MEGURI2040」のコンソーシアム
(出典:日本財団の発表資料より)

 MEGURI2040では、コンテナ船やフェリーなどさまざまな船の自動運転化に取り組む5つのコンソーシムが立ち上がっているが(2022年4月現在)、その1つが群馬県・八ッ場あがつま湖で、観光用に利用されている水陸両用船を自動運転化するプロジェクトだ。そこでは、陸上から水陸両用船の運航を監視したり、なにか不具合が起きた際に手動で遠隔運転を行うシステムの開発も行っている。このような、水陸両用船の監視や遠隔運転を、ローカル5Gの通信技術を活用して実現するシステムの開発に携わっているのがエイビットだ。

 水陸両用船の自動運転化コンソーシアムには、エイビットの他に代表を務めるITbookホールディングスと自動運転・運航を行う水陸両用船の実験車両兼船舶の開発及びソフトウェア設計・開発に関わった埼玉工業大学、そして長野原町が関わっている。エイビットがこのコンソーシアムに加わった経緯について、池田氏は「ITbookさんから、水陸両用船という新しいモビリティの開発に、立ち上がったばかりのローカル5Gが役に立たないだろうかという相談をいただきました。私たちもローカル5G活用の可能性を探りたいと、コンソーシアムに参加することにしました」と語った。

(写真1)群馬県・八ッ場あがつま湖で観光用に利用されている水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」(現地にて撮影) イメージ
(写真1)群馬県・八ッ場あがつま湖で観光用に利用されている水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」
(現地にて撮影)

LTEよりもスムーズに見られたローカル5Gの映像

 2022年3月14日には、八ッ場ダムでの水陸両用船の実証実験が公開された。5Gの通信アンテナ以外にLiDARやカメラ、ソナー、GNSS、風速計、ジャイロセンサーなどを装備した「八ッ場にゃがてん号」が、陸上を走破してそのままダム湖に入水。その後、水上の障害物を自動で感知して回避行動をとり、出水することに成功している(写真2)。

(図2)「八ッ場にゃがてん号」の車体にはさまざまなセンサーが取り付けられ(写真左)、コックピットには陸上走行用のハンドルと水上運航用の舵輪が並ぶ(写真右)(現地にて撮影) イメージ
(図2)「八ッ場にゃがてん号」の車体にはさまざまなセンサーが取り付けられ(写真左)、コックピットには陸上走行用のハンドルと水上運航用の舵輪が並ぶ(写真右)
(現地にて撮影)

 その間、ローカル5Gの通信によって、水陸両用船の運転席に設置されたカメラからの映像は遅延を感じることなく、ダム湖の側に置かれたコンテナ内のディスプレイに映し出された(写真3)。コンソーシアムでは、当日の自動運転の実証実験の前に、運転手が遠隔からバスを操作する遠隔運転についても実証が行われている。遠隔運転の実証結果について、池田氏は「事前の予想よりもスムーズに運転できました」と感想を述べる。

(写真3)実証実験の現場に置かれたコンテナ内で、水陸両用船の自動運転を監視。なにか不具合があった場合は陸上用もしくは水上用のハンドルで遠隔運転する。(現地にて撮影) イメージ
(写真3)実証実験の現場に置かれたコンテナ内で、水陸両用船の自動運転を監視。なにか不具合があった場合は陸上用もしくは水上用のハンドルで遠隔運転する。(現地にて撮影)

 遠隔運転の実証では、ローカル5Gだけではなく、公衆のLTE網も使って通信を行っている。実験に参加したオペレータの感想としては、「LTE網よりもローカル5Gを使う方が全然運転しやすかった」というものだった。その理由について、池田氏は「遅延による影響よりも、LTE網の場合は映像が途切れることが多かったそうです」と述べ、「公衆のLTE網の場合、長時間接続していると帯域が切り替わった際に一時的に接続が途切れることがあります。それに伴い、映像も途切れてしまいます。一方でローカル5Gの場合、単一の周波帯を割り当てられるので、電波が途切れることなく連続して映像が表示されるのです」と解説する。

 また、今回の実験の課題について池田氏は、「それまで、ローカル5Gの実験は屋内で続けてきたのですが、屋外で電波を使用する免許を取って運用するのは初めてでした。そのため、当初はどのくらいの距離まで映像が届くかを手探りで確認しながら実験を繰り返しました」と振り返る。一方、水陸両用船なので水上での電波使用についても初めての試みとなった。「水面だと地面とは電波の反射の仕方が違うので、そうしたことを考慮した上できちんと電波が飛ぶかのかについても未知の領域で苦労しました」(池田氏)。

モビリティの移動に追従するローカル5G

 エイビットにとって今回の実証実験は、ローカル5Gで観光用の水陸両用船を監視し遠隔運転を実現することだったが、池田氏は「初めて移動するものにローカル5Gの電波を飛ばして、追従させることに挑戦しました。今回の実験によって、どのくらいの性能があればローカル5Gがモビリティに追従できるのかが把握できたので、他のさまざまなモビリティにもこの技術が応用できそうです」と語る。

 観光分野や自動運転での5G利用に関しては、すでにドコモソフトバンクなどが公衆網の5Gを利用した実証実験をいろいろと進めている。5Gでもスタンドアローン方式ならば超低遅延も実現できるが、今回のケースのように人里離れた場所にある観光地では、スタンドアローン方式の5G公衆網の敷設の優先順位は低い。池田氏はそういった場所にこそ、ローカル5Gの活用が有効になると考えている。

株式会社エイビット 執行役員 5G事業部 事業部長 池田博樹氏株式会社エイビット 執行役員 5G事業部 事業部長 池田博樹氏

 「遠隔からの監視や操縦には、特に低遅延という5Gの特性が必要になります。ノンスタンドアローンでの公衆網の5G通信では往復に50ミリ秒くらいかかるのですが、今回の実験ではローカル5Gは往復で10ミリ秒程度の低遅延を実現できました」(池田氏)。

 モビリティへのローカル5G応用は、観光分野だけでなくさまざまな分野でも活用できると池田氏は述べる。「例えば、工場の中ではAGV(自動搬送車)のように無人で動くものにカメラを付けて画像を配信すれば、製品や部品の搬送だけでなく、工場内の監視にも活用できそうです」(池田氏)。

 その他、ローカル5Gの指向性アンテナを使ってドローンの飛行にも追従させれば、「災害時に被災地にローカル5Gのシステムを持っていき、ドローンに搭載されたカメラを使って被災者の捜索にも役立てることができそうです」と池田氏は語る。

公衆網やWi-Fiと共存するローカル5G

 ローカル5G活用の展望について池田氏は、「キャリアの公衆網5Gがカバーしていないところをローカル5Gがカバーするなど、それぞれのメリットを生かし、さらにWi-Fiと合わせて3種類の通信網が共存していくと思います」と意見を述べた。

 Wi-Fiの場合、通信の立ち上がりが遅く、大量に接続されると接続が不安定になったり遅延が大きくなったりする。「インターネットコンテンツの閲覧ならば問題ないのですが、産業分野での活用では問題があります。そうした分野には、ローカル5Gが利用されていくでしょう。一方で、LTEの通信費はどんどん下がっているのに、Wi-Fiのエリアが減ってきたとは感じていません。結局、屋外は公衆網の5G、屋内はWi-Fiが使われ、将来は第3のセグメントとしてローカル5Gが普及していくのではないかと感じています」(池田氏)。

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