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デジタルツインなど製造業におけるDXのイメージが具体的につかめる体験施設が東京にオープン

2022年10月24日

製造業におけるDXと聞いても、具体的なイメージはなかなか湧きにくいかもしれない。また、一言で製造業といっても、なにを製造するかによって工程や装置などが大きく異なってくるため、他社の事例は参考にしにくい。そこで、日本進出から130年以上の歴史を持つドイツのインダストリー企業シーメンスが、デジタルツインやロボットによる自動化など、製造工程のデジタル化およびDXに貢献するソリューションが体験できるデジタルエンタープライズ エクスペリエンスセンター「DEX Tokyo」を東京都品川区に開設。自社におけるデジタル化ソリューションやロボットの導入前後のイメージを、具体的に把握可能にするというDEX Tokyoの概要を紹介する。

製造業の現在と未来の橋渡しを担う日本で初めての施設

デジタル化やインダストリー4.0の適用により、製造業がデジタルエンタープライズへの変換を遂げるには、社員の知識やスキルを最新の産業技術に対応させる実践的な経験が必要だ。そうした経験を支援する施設となるDEXは、2022年6月時点でグローバルに43カ所設置され、すでに約9万人が訪問しているという。2022年6月1日に開設されたDEX Tokyoは日本では初めてのDEXとなり、ハードウェアとソフトウェアソリューションの融合や、リアルな世界とバーチャルな世界の融合が体験できるよう構成されている。

機械メーカーならば、DEX Tokyoでシーメンスのソフトウェア「Xcelerator」を使用し、機械の設計からエンジニアリング、試運転まで、実環境での生産性を向上させる効率的な機械加工がシミュレーションできる。また、設計から製造実行、最終製品のサービスライフサイクルに至るまでの製造工程の最適化が可能。さらにDEX Tokyoでは、オンプレミスの生産現場から経営層まで対応するコネクティビティソリューション「Industrial Edge」や、インダストリアルIoTソリューション「MindSphere」のデモンストレーションも行っている。

そしてDEX Tokyoでは、生産ラインを構成するベルトコンベヤーなどの周辺にある自動化装置も含め、装置構成やプログラム動作を確認することもできる。事前にこうした作業を行うことで、ラインを立ち上げる前の段階でロボットによる予期しない動作トラブルを未然に防ぎ、ライン立ち上げに要する時間やコストを大幅に短縮できるようになるという。

(写真1)シーメンスのデジタルソリューションを体験するコラボレーションスペース「DEX Tokyo」
(写真1)シーメンスのデジタルソリューションを体験するコラボレーションスペース「DEX Tokyo」

AGVからバーチャルトレーニング、デジタルツインまで現場に即した環境でデモンストレーション

DEX Tokyoでは、例えばロボットを用いた製造ラインのバーチャル空間での試運転となるバーチャルコミッショニングのデモ展示において、実在するシーメンスのPLC(Programmable Logic Controller)製造工場における製造工程の一部を事例として取り上げている。これによって、施設内に設置された実機のロボットがプログラム通りに動作する様子が見学できる。以下、実際にDEX Tokyoで体験できるソリョーションの一例を紹介しよう。

AGVソリューションのデモンストレーション

「SIMOVE」は場内で部品などを運ぶ無人搬送車AGV(Automatic Guided Vehicle)の開発を加速させ、AGV を付加価値のある製品へと変化させる、制御機器とソフトウェアを融合させたシステムパッケージだ(写真2)。SIMOVEには、AGV仕様によってカテゴライズされた制御機器や、車体制御に特化したPLCプログラム、スラム方式を採用したフリーナビゲーションシステムや上位監視システムのフリートマネジメントシステムなど、さまざまなソリューションが搭載されている。また、欧州で採用されているAGV通信規格「VDA 5050」にも準拠しており、さまざまな製造機器とシームレスな通信を行うことも可能だ。DEX Tokyoでは、SIMOVEを搭載したAGVを常時展示しており、SIMOVEのプレゼンテーションや機能説明、デモンストレーションが行われている。

さらに、DEX TokyoではSIMOVEが稼働する様子を見るだけでなく、機体を構成するパーツや、開発、制御のためのプログラミングツールについて、シーメンスのエンジニアから説明を受けられる。顧客ごとに最適な走行方式や運用台数などを提案する他、導入予定場所の見取り図があれば、最適な経路を算出するシミュレーションも行うなど、AGVの導入経験が少ない顧客でも最短時間で取り入れられるようサポートするという。

(写真2)シーメンスの「SIMOVE」を搭載したAGV(左)とデモンストレーションの様子(右) イメージ
(写真2)シーメンスの「SIMOVE」を搭載したAGV(左)とデモンストレーションの様子(右)

バーチャルトレーニングのデモンストレーション

「バーチャルトレーニングソリューション」は、シーメンスが保有する設備などの 3 D データを活用し、バーチャル空間に作業環境と作業対象を構築したソリューションだ(写真3)。3 D データによって、作業環境と作業対象は上下左右の全方向から確認可能だ。トレーニングのデモンストレーションでは、指示書を確認した後に3Dデータで作られたワークを手に取り、全方向から確認しながら適切な場所に取り付けられるよう構成されている。

さらに、トレーニング中のミスの回数や、ミスをした箇所も統計データとして取得できるため、これらのデータを生産管理部門や設計部門で活用して課題対策に生かすことも可能だ。こうしたリアルに近い組立作業を、実設備なしにバーチャル空間で繰り返し行えば、実機を用いたトレーニングに比べて時間とコストを削減し、作業ミスの発生も抑制できるようになるだろう。

(写真3)「バーチャルトレーニングソリューション」のデモンストレーションの様子 イメージ
(写真3)「バーチャルトレーニングソリューション」のデモンストレーションの様子

デジタルツインのデモンストレーション

バーチャルとリアルの融合が体験できるデモンストレーション「デジマシン」では、実際のロボットとシミュレーションの中で動くロボットが連携している(写真4)。現在、シミュレーションを使った設計効率の向上が企業価値を高める重要な手段と言われているが、その際にどれだけシュミレーションのモデルを現実に近づけられるかが、その精度を高める重要な要素となる。DEX Tokyoでは、こうしたデジタルツインのデモンストレーションを実施し、リアルとバーチャル融合させることによって精度の高いシミュレーションを実現する様子を見せてくれる。

(写真4)実際のロボット(左)と「デジマシン」のデモンストレーションの様子(右) イメージ
(写真4)実際のロボット(左)と「デジマシン」のデモンストレーションの様子(右)

製造業におけるDXの課題を一気通貫で解決するシーメンス

こうしたデモンストレーション以外にも、DEX Tokypではディスクリート産業やプロセス産業、そして装置やプラントメーカーにとって、DXがもたらすメリットについても紹介する。さらに、IIoT(Industrial IoT)によって生成される膨大な量のデータを収集、理解、利用するために、現実世界とデジタル世界をデジタルエンタープライズでどのように結合するかが体験できる。

シーメンスがこうした施設を世界中に増やしている背景の1つには、製造業においては産業分野や工場の規模など、DXの対象となる施設が多種多様であるという課題がある。これによって、製造業がDXを進める際に必要な外部からの支援においても、経営コンサルタントは現場の気付きやアセスメント、ビジネスプロセスのモデリングなどについてはアドバイスできるが、ツールなどの実装は不得意だ。その一方で、現場のシステム構築を支援するシステムインテグレータは、ツールやソリューションの導入、最適化は行うものの、気付きやアセスメントは支援できない。

そこで、DEXのような施設があれば、バーチャルな環境で事前にシステム構築することで現場の気付きを得たり、さまざまな課題を事前に洗い出し、ツールやソリューションの導入を最適化できる。DXの大きなうねりが世界中に広がっている中、製造業ではこのように仮想空間に実際の工場のデータを使った「バーチャル工場」を構築してシミュレーションする企業が増えており、今後DEXのようなソリューションを提供する企業が増えてきそうだ。

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