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測量データや位置情報で自然の価値を「可視化」する技術を提供するマプリィ

2023年8月7日
話し手
  • 株式会社マプリィ
    代表取締役
  • 山口 圭司

スマートフォンやドローンを使い、低コストで地理空間情報を収集する測量アプリ「mapry」を開発したマプリィ。高度な測量技術を活用して、世の中のさまざまな価値を「可視化」することを目指している代表取締役の山口 圭司氏は、なぜマプリィの起業に至ったのか。今後の拡大が期待されている、地理空間情報市場への展望も含めて伺った。

株式会社マプリィ 代表取締役 山口 圭司

農業に関わったことで見えてきた森林の課題

── 山口さんは、森林などの測量データを簡単に活用できるプラットフォームを提供するベンチャーとしてマプリィを起業しましたが、もともと林業などに関わる仕事をしていたのですか。

山口氏:子どもの頃から動物が好きで自然に興味があったのですが、20代の頃はWeb系のベンチャーでCFO(最高財務責任者)として働いていました。その中で、次第に農業や生物など自分が好きな分野でサービスを提供してみたいと思うようになり、30代になって兵庫県の丹波市で農業法人を立ち上げました。

どこかの農家を継ぐとかではなく一から農業に関わったので、立ち上げから5、6年は大変でした。そうやって徐々に事業が安定してくると、森林が農業に与える影響が非常に大きいことが分かってきました。もちろん、森林が影響を与えるのは農業だけではなく、自然災害など多岐に渡ります。そこから、森林の多面的機能に対して課題解決することが社会課題の解決につながることに気づき、森林向けのサービスを作っていきたいと考えるようになりました。

実際にマプリィを創業して「mapry」の提供を始めたのは2019年からですが、森林向けのソリューションはさまざまな産業における課題に適用できるので、インフラサービスとして使っていただけようなデータ基盤を作り、地域貢献することを目標としています。

── もともとの起業の目的は、だれでもが手軽に利用できる計測システムを提供することで、社会課題を解決したいということなのですね

山口氏:そもそも、森林に関わらず、何かを計測したり正確な状態を把握するための端末やサービスの価格が高すぎることが問題です。それがもっと手軽に使えるようになれば、山や農地の経済的な価値や防災面での役割などの見える化も進んでいくと思います。

最近では、カーボンニュートラルといった環境面での取り組みについても、森林がどのような効果を与えているのか見える化を進めています。

さまざまな計測をデジタル化して低コストで解析するソリューションを提供

── 現在マプリィが提供しているのは、どのようなソリューションなのですか。

山口氏:マプリィは森林などの膨大な測量データを、だれでもが簡単に活用できるアプリプラットフォームを提供しています。例えば、従来、林業における樹木の測定には、メジャーなどのアナログな道具を使って直径と樹高を測り、材積式で計算するか材積表から読みとる必要がありました。この方法では、樹木の体積を正確に測ることはできません。

一方で、木は2センチ単位ごとにJAS規格で決まっている価格で売買するので、2センチ単位で直径を出すことも求められます。そこで、マプリィのサービスではスマートフォンを使って、目の前にある樹木の計測をデジタル化します。

(図1)マプリィが提供するデジタル計測ソリューション
(図1)マプリィが提供するデジタル計測ソリューション

── スマートフォンのカメラを使って計測するのですか。

山口氏:実際の計測にはLiDAR(Light Detection And Ranging)と呼ばれる、レーザー光を照射して対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術が必要です。ですので、現状ではiPhoneかiPad Proしか使えません。

ただ、こうしたデバイスだと樹木を1本1本計測することになり、それだと複数の木が密集している場所では面倒です。したがって、目的に応じてドローンにLiDARセンサーを搭載させて空中からも計測します。

── 従来の方法と比べて、どのくらい作業が効率化されるのですか。

山口氏:林業だと、計測した結果をその場で野帳に記録する必要があるため、計測作業の場合は2人で作業しています。私たちが提供するソリューションでは、野帳への記録も自動化されるので1人で作業できるようになります。

こうした機械によるデジタルの計測ツールは他社からも提供されているのですが、専用の計測デバイスを使う必要があり、システムの購入に500万円以上かかるなど高額な導入コストが必要になります。それに対して、マプリィのシステムはスマートフォンさえあれば25万円程度で提供されるので、導入コストも大きく抑えられます。さらに、こうしたデバイスを用いて計測したデータの解析も、無料で提供しているパソコン用の3次元解析アプリで行うことができるので、追加の投資も必要がありません。

(図2)無償で提供されるパソコン用アプリによる解析結果
(図2)無償で提供されるパソコン用アプリによる解析結果

お互いの強みを生かして全国にシェアを広げていきたい

── ミライト・ワンとは、どのように協力しながらビジネスを進めていこうと考えていますか。

山口氏:私たちは、今後マプリィのソリューションを全国の自治体や企業に広げていきたいと考えています。最近は国内だけではなく、海外もターゲットに入っているのですが、現状30人程の社員では、そういった大きな事業を進めるには限界があります。

そうした営業面での課題を、建設会社でもあり、さまざまな測量に関する知見や営業のリソースを持たれているミライト・ワンさんのノウハウや経験で補い、一緒にソリューションを普及させていければと思っています。とはいえ、ミライト・ワンさんも森林分野については初めて関わることになるでしょうから、そこは私たちが持つ知見を活かしたいと思います。

森林大国である日本では、太古の時代から林業が栄えてきました。そうした歴史がある中で、国や自治体、各地の森林組合さんなどに認めていただくことも、こうした事業を進めていく上で重要です。逆に、そういった組織から認めてもらうことができれば展開も早くなるので、互いに協力しながら進めていきたいと思います。

── マプリィの今後の展望をきかせてください。

山口氏:道路やトンネル、橋、ビルなどの構造物とちがって、経済的な価値が付けにくい空気や水、山などといった自然資本にも、さまざまな機能や経済的な価値があります。最近ではカーボンニュートラルの観点から、森林がカーボンクレジット化されて売買されるようになってきました。そのことが環境に与える影響については別に考えないといけないのですが、今後は生物多様性の観点からも自然資本の価値付けが必要になっています。

一方で企業にとっても、気候変動対策への対応を含む「大企業の非財務情報開示」が義務付けられました。これによって、自社で持っている山などの資産についても経済価値を把握しなければ、株価に影響してくるでしょう。

このように私たちが提供している"計測"というソリューションは、とても大きなマーケットになることが予測されている領域だと思います。是非ミライト・ワンさんと一緒に頑張って地球環境にも貢献していきたいと思っています。

(図3)マプリィが目指すソリューション領域
(図3)マプリィが目指すソリューション領域

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