スマートシティとは?~概念から取り組みの事例・現状課題までをわかりやすく解説~

2023年6月26日

目次

  1. ▼1. スマートシティとは?概念・定義を簡単に説明
  2. スマートシティの6つの要素
  3. ▼2. スマートシティとスーパーシティの違い
  4. ▼3. スマートシティ化が推進される背景
  5. ▼4. スマートシティがもたらす6つのメリットとは
  6. 社会インフラの向上
  7. エネルギー効率の向上
  8. 災害対策の強化
  9. 見守りによる安心・安全
  10. 交通渋滞の緩和
  11. 生活の質の向上
  12. ▼5. スマートシティにデメリットはある?
  13. システム障害のリスク
  14. プライバシー上の懸念
  15. サイバー攻撃のリスク
  16. 導入コストが高い
  17. ▼6. スマートシティに重要な技術・インフラ
  18. スマートシティの実現に欠かせない技術
  19. センシング技術
  20. ネットワーク技術
  21. アプリケーション技術
  22. データ解析技術
  23. スマートシティのインフラ
  24. スマートグリッド
  25. スマート交通システム
  26. スマートビルディング
  27. 5Gと次世代通信技術
  28. ▼7. スマートシティの実現に向けた取り組み
  29. スマートシティのフェーズと進化
  30. 日本政府のスマートシティ政策
  31. 企業と自治体の連携
  32. 日本の事例
  33. 静岡県裾野市「Woven City」
  34. 宮城県仙台市「スーパーシティ構想」
  35. 千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」
  36. 海外の事例
  37. シンガポール「Smart Nation Singapore」
  38. バルセロナ「Barcelona Digital City」
  39. ▼8. スマートシティの実現を支える!注目の最新技術6つ
  40. クラウドWi-Fi
  41. ビッグデータ
  42. AI
  43. デジタルツイン
  44. AR/VR/MR
  45. ドローン
  46. ▼9. スマートシティの現状課題と今後の展望
  47. スマートシティの普及と課題
  48. 地域住民とのコミュニケーション
  49. スマートシティの持続可能性
  50. ▼10. まとめ

スマートシティとは、IoTやAIなど最新技術を駆使して、医療、交通、エネルギー循環、防災など、あらゆる地域課題を解決する都市のことである。
近年では、スマートシティの実現に向けて、日本各地や海外でさまざまな実証実験が行われている。今後の社会実装に、人々の注目は集まるばかりだ。
この記事では、スマートシティの概念から現状、課題、事例、今後の展望まで、わかりやすく紹介する。未来の都市はどうなっていくのか、詳しく見ていこう。

スマートシティとは?概念・定義を簡単に説明

スマートシティとは、ICTなどの最先端技術を活用して、経済活動の促進、または社会課題を解決する都市や地域のことである。内閣府によるスマートシティの定義は、以下のとおりだ。

スマートシティは、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場と定義されています。
引用:スマートシティ|内閣府

スマートシティの取り組みは、国際競争力の強化を目的とした都市部だけでなく、自然と共生した豊かな地域づくりを目的としたものもある。大都市だけでなく、全国規模で推進が可能だ。

スマートシティの6つの要素

ウィーン工科大学が開発した「スマートシティに関するフレームワーク」によると、スマートシティには、次の6つの要素が含まれる。

スマートシティの6つの要素
スマートな経済 ICTなどの最先端技術を活用してイノベーション(技術革新)を起こし、生産年齢の人口減少に関する課題などを解決した状態
スマートな交通 AIなどの最新技術で、交通状況を解析して渋滞を緩和させ、新しい交通形態(EV<電気自動車>、カーシェアリングなど)を実現した状態
スマートな環境 太陽光発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」の活用、汚染物質の監視と削減で、環境に配慮した取り組みを実施している状態
スマートな住民 最新のデジタル技術を活用して、人々が教育を受けたり、生涯学習(自己啓発や生活向上のための学習)やキャリア選択が行えたりする状態
スマートな生活 スマートビルディングやeヘルスなどの発達により、生活の質が向上し、より快適に生活できる状態
スマートなガバナンス 最新技術を活用して、政府や自治体と住民がつながり、管理している状態

スマートシティを実現するには、これら6つの要素のバランスを意識しながら、開発を進めることが重要である。

スマートシティとスーパーシティの違い

スマートシティとスーパーシティの違い

スマートシティと比較される都市のあり方として「スーパーシティ」がある。
「スーパーシティ」とは、都市のあるべき姿を実現するために、複数の分野を横断して最先端技術を実装する都市のことだ。
「スーパーシティ」の目的も、「最先端技術を活用しながら、都市のあるべき姿を実現する」であり、最終的な目的は「スマートシティ」と同じである。
しかし、実現に向けたアプローチの仕方に違いがある。
「スマートシティ」は分野ごとに課題解決を図るのに対し、「スーパーシティ」は複数分野をまたいで「データ連携基盤」を整備し、実装する。
なお、スマートシティやスーパーシティのような、最先端技術を実装する都市において、データの収集や蓄積、分析など一元管理ができるプラットフォームとなるデータ連携基盤の活用は欠かせない。
データ連携基盤を用いた都市開発の一例を紹介する。京都にある施設「京都リサーチパーク」の混雑状況を、AIの「Wait Time」で可視化した実証実験がある。
「Wait Time」がサイネージなどに、京都リサーチパーク内の混雑状況をリアルタイムで配信し、利用者の行動変容を促す実験が行われた。
「Wait Time」をデータ連携基盤とつなげることで、人流データを取得して施設管理者や施設利用者の双方の利便性を向上させる狙いだ。

参考:京都リサーチパークをフィールドとしたスマート街区 W GにてAI により混雑状況を可視化する「WaitTime」を活用した実証実験を開始~混雑状況の可視化とクーポン配信により、行動変容を促進~|株式会社ミライト・ワン

スマートシティ化が推進される背景

なぜ、現在スマートシティ化は日本各地や海外で推進されているのだろうか。背景の一つとして、都市部への人口集中があげられる。
2050年には人口の7割が都市部に集中するといわれ、人口集中によるエネルギー消費の増加や環境悪化、交通渋滞が懸念されている。そこで必要となるのが、続可能な都市開発だ。
IoTやAIなど高度な技術の急速な進歩に伴い、それらの技術を適切に活用することで、社会課題の解決と、持続可能な都市づくりを実現しようとする試みが世界中で起こっている。

スマートシティがもたらす6つのメリットとは

スマートシティがもたらす6つのメリットとは

スマートシティがもたらすメリットとして、以下があげられる。

●社会インフラの向上
●エネルギー効率の向上
●災害対策の強化
●見守りによる安心・安全
●交通渋滞の緩和
●生活の質の向上

それぞれのメリットについて、詳しく見ていこう。

社会インフラの向上

IoTやAIなどの最先端技術を活用すると、「林業や農業などの一次産業」や「都市計画・まちづくりと建設業」での生産性向上、水道などの老朽インフラの改善、EV(電気自動車)の充電インフラの充実など、社会インフラ全体の向上が期待できる。
現在、各分野でインフラの改善に向けて、次のような取り組みが行われている。

社会インフラを向上する技術
林業や農業などの一次産業、都市計画・まちづくりと建設業 森林情報を一元管理できるアプリ「mapry(マプリィ)」にスマートフォンからアクセスし、森林の状況をLiDARや可視光など「リモートセンシング技術」で容易に確認。土砂災害や水害防止、獣害防止に活用できる。
水道などの老朽インフラ AIのアルゴリズムを活用した水道管の劣化状態を予測する技術や、ドローンに搭載されたセンサーやカメラで建物の壁面を点検する技術で、従業員の安全性の確保と、作業の効率化を実現する。
EV(電気自動車)の充電インフラ EV(電気自動車)の充電施設が増えることで、環境に配慮したEV(電気自動車)の導入数も増加すると期待できる。ビルに設置することで、付加価値の向上、集客、BCP対策に役立つだけでなく、低炭素社会の実現にもつながる。

参考:森林を簡単で安価に管理できるサービスを提供する 株式会社マプリィへの出資について|株式会社ミライト・ワン
水道管劣化予測・影響度評価・更新計画策定ソリューション|株式会社ミライト・ワン
ドローンフライトソリューション|株式会社ミライト・ワン
EV充電スタンドのエンジニアリング&サービスソリューション|株式会社ミライト・ワン

エネルギー効率の向上

再生可能エネルギーやクラウドの活用により、都市全体のエネルギー効率の向上につながる。
例えば、株式会社ミライト・ワン、モルゲンロット株式会社、WOODMAN株式会社の3社は、自動車開発や都市開発などの研究機関で利用される「CGレンダリング」の計算処理をクラウドで提供する「M:MDC(モルゲンロットモバイルデータセンター)」を開発した。

M:MDC(モルゲンロットモバイルデータセンター)の外観イメージ
 (出典:株式会社ミライト・ワン|GPUベースの産業用コンテナ型データセンターソリューション 「M:MDC(モルゲンロットモバイルデータセンター)」 のサービス開始)
M:MDC(モルゲンロットモバイルデータセンター)の外観イメージ
(出典:株式会社ミライト・ワン|GPUベースの産業用コンテナ型データセンターソリューション 「M:MDC(モルゲンロットモバイルデータセンター)」 のサービス開始

従来、テラバイト単位の大容量データと高速な演算処理に必要なGPUに膨大な電力が必要であったが、はるかに低コストと省エネルギーで、高速演算処理を実現している。

参考:「みらいドメイン」事業インタビュー グリーン発電事業「再エネの、扉を開く。」|株式会社ミライト・ワン
GPUベースの産業用コンテナ型データセンターソリューション 「M:MDC(モルゲンロットモバイルデータセンター)」 のサービス開始|株式会社ミライト・ワン

災害対策の強化

IoTによる多点観測で自然災害の状況を監視し、被害状況と避難所の位置を地図上に重ねて表示することで、リアルタイムで地域の状況を把握できる。
また、AIがビッグデータに基づいて、将来起こりうる地震や洪水などの自然災害を予測できれば、災害対策の強化や迅速な復旧にもつながることが期待される。

見守りによる安心・安全

街中や施設に設置したセンサーやカメラ映像の膨大なデータから、AI等を活用したデータ分析により、人々の安心・安全に必要な情報を取得できる。
例えば、「楽天イーグルスファン感謝祭2022」が開催された「楽天生命パーク宮城」では、新型のWi-Fiと5Gの通信技術によるネットワークで、個人は識別せずにカメラの映像からAIが施設内の混雑状況を分析した。
AIによる高精度な分析は、スタジアムにおける利便性の向上だけでなく、防犯体制の強化にもつながる。
また、山間部等の電源がない場所にも監視カメラや電灯を設置できる「オフグリッド電源ポール」も、地域の見守りの役に立つ。

オフグリッド電源ポール(出典:株式会社ミライト・ワン|電源がない場所でも灯りや監視カメラを設置可能に!オフグリッド電源ポール)
オフグリッド電源ポール
(出典:株式会社ミライト・ワン|電源がない場所でも灯りや監視カメラを設置可能に!オフグリッド電源ポール)

参考:楽天生命パーク宮城にて新型「DX Wi-Fi®」と5Gによる 高品質ネットワーク上で混雑可視化のPoC実施|株式会社ミライト・ワン
電源がない場所でも灯りや監視カメラを設置可能に!オフグリッド電源ポール|株式会社ミライト・ワン

交通渋滞の緩和

人口集中が懸念される都市部で最先端技術を活用すると、交通渋滞の緩和にもつながる。
道路に設置したセンサーからリアルタイムでデータを収集して分析することで、交通量の測定や予測、信号機のコントロールに活用でき、交通渋滞の緩和や事故防止が期待できる。

生活の質の向上

スマートシティは、災害に強い街づくりや快適な移動キャッシュレス社会環境に配慮した都市空間を実現する。
それにより、そこに暮らす人々、働く人々の生活の質を向上させ、住民の生活の質やウェルビーイング(幸福感)の向上に貢献できる。

スマートシティにデメリットはある?

メリットが多いスマートシティだが、デメリットはあるのだろうか。スマートシティには、次のようなデメリットや課題もある。

●システム障害のリスク
●プライバシー上の懸念
●サイバー攻撃のリスク
●イニシャルコストが高い

ここでは、それぞれのデメリットを詳しく紹介する。

システム障害のリスク

大規模なシステム障害が起こると、都市機能が停止する恐れがある。スマートシティは最先端の情報通信技術をフル活用するため、システムに関わる障害が発生する可能性があるのだ。
障害発生時に使用する予備のサーバや、通信回線を事前に確保することが重要になる。

プライバシー上の懸念

カメラやセンサーで住民の情報が収集されるため、プライバシー侵害が懸念されている。
スマートシティの運営にはデータ活用が欠かせないため、収集した個人情報が流出しないか、心配する声も上がっている。

サイバー攻撃のリスク

センサーやカメラなどIoT機器が散在し、多様なデータの流通が想定されるスマートシティでは、常にサイバー攻撃のリスクにさらされる。
守るべきデータや機能を特定し、セキュリティ上のリスクを回避するには、セキュリティ体制を整備する必要がある。

導入コストが高い

スマートシティを実現するには、システムの設計や通信環境の整備最先端技術の導入が必要となり、イニシャルコストが高くなる。
維持するためのランニングコストもかかるため、導入前に費用対効果を慎重に検討することが重要だ。

スマートシティに重要な技術・インフラ

スマートシティに重要な技術・インフラ

ここでは、スマートシティに重要な技術・インフラについて解説する。

スマートシティの実現に欠かせない技術

スマートシティには、次のような技術が使用される。

●センシング技術
●ネットワーク技術
●アプリケーション技術
●データ解析技術

センシング技術

センシング技術は、デバイスに組み込まれ、温度、湿度、光、音などの環境データや変化を検知する技術だ。交通状況や自然災害などの検知に利用される。


(動画)Built Roboticsの自動運転システムで動く重機
(出典:Built RoboticsのYoutube)

ネットワーク技術

ネットワーク技術とは、センシング技術で取得したデータを、クラウドサーバーやスマートフォンなどに送る通信手段のことである。通常、Wi-Fiや5Gなど無線通信が利用される。

アプリケーション技術

アプリケーション技術は、センシング技術で取得したデータを、可視化するための技術。活用することで、取得したデータを管理しやすくなる。

データ解析技術

AIなどの最先端技術を活用したデータ解析技術で、都市や自然災害の状況を効率的に把握できる。ビッグデータを活用するスマートシティには、必要不可欠な技術だ。

スマートシティのインフラ

スマートシティのインフラには、次のような技術が使用されている。

●スマートグリッド
●スマート交通システム
●スマートビルディング
●5Gと次世代通信技術

スマートグリッド

スマートグリッドは、電力網に情報通信技術(ICT)を導入し、電力供給と需要を最適化する技術。
従来の一方的に電力を送る電力設備とは違い、電気の供給と需要を把握しながら最適な電力利用量になるようコントロールする。

スマート交通システム

スマート交通システムは、IoTや移動需要に合わせた最適配車などを活用して交通インフラを効率化し、渋滞を緩和する技術。
交通の利便性が高まるだけでなく、環境負荷の低減にもつながる。

スマートビルディング

スマートビルディングは、IoTを活用して建物内のエネルギー消費や照明、セキュリティなどをコントロールする技術。

(出典:株式会社ミライト・ワン|ZEB・スマートビルソリューション)
(出典:株式会社ミライト・ワン|ZEB・スマートビルソリューション

建物内の利用者に関する行動データを収集してリアルタイムで可視化し、施設利用の効率性を向上できる。

5Gと次世代通信技術

次世代のモバイル通信技術である5Gを活用することで、通信速度が飛躍的に向上する。
スマートシティでは、個別に利用できるローカル5Gを設置することで、超高速で大容量の専用ネットワークの実現が可能となる。
なお、ローカル5G環境の構築には、免許申請や高度な技術が必要となる。
株式会社ミライト・ワンでは、「ローカル5Gオールインワンパッケージ」を提供している。免許申請代行から無線エリア設計、設置工事、運用保守まで対応可能だ。

スマートシティの実現に向けた取り組み

スマートシティの実現に向けて、国内では現在どのような取り組みがされているのだろうか。次の取り組みについて説明する。

●スマートシティのフェーズと進化
●日本政府のスマートシティ政策
●企業と自治体の連携

スマートシティのフェーズと進化

スマートシティのフェーズには、大きく分けて「ver1.0」と「ver2.0」がある。それぞれの意味は、次のとおりである。

スマートシティのフェーズ
ver1.0 開発事業者が主体となり、導入技術を選定する段階
ver2.0 住民の生活の質の向上を実現するために、住民起点でデジタル技術を選定する段階

現在、スマートシティのフェーズはver1.0からver2.0に進化している。
理由は、「ver1.0」のように、対象となる都市の住民を無視して開発を進めた場合に、新しいデジタル技術や生活様式を住民に受け入れられなければ、スマートシティ計画が失敗に終わるからだ。
そこで、住民とコミュニケーションを重ね、住民の満足度が高まる技術の導入や都市のあり方を重視する「ver2.0」へ移行している。

日本政府のスマートシティ政策

2019年に閣議決定された「統合イノベーション戦略2019」では、スマートシティを「Society 5.0」の先行的な姿として定義した。
Society 5.0とは、サイバーとフィジカルを高度に融合した社会のことである。Society 5.0の基本コンセプトとなるスマートシティの実現を加速させるため、内閣府や国土交通省などが中心となり「スマートシティ官民連携プラットフォーム」が発足した。

東京版Society5.0「スマート東京」の全体像(出典:未来図|グーグル・クラウドが貢献する東京版Society 5.0「スマート東京」)
東京版Society5.0「スマート東京」の全体像
(出典:未来図|グーグル・クラウドが貢献する東京版Society 5.0「スマート東京」)

災害に強く、他国がいずれ直面する「少子高齢化」の課題に先駆けて取り組んでいることを日本の強みとし、新たな価値の創造に向けた政策が進められている。

企業と自治体の連携

スマートシティの構築には、自治体だけでなく企業のノウハウや技術が必要だ。
官民連携で取り組むことで、全国各地のスマートシティへの取り組みを強化できる。
官民が一体となり取り組んだいくつかの事例について、次に解説する。

国内外におけるスマートシティの事例

ここでは、国内外のスマートシティの事例について紹介する。
今回は、日本の事例3つと、海外の事例2つをピックアップする。

日本の事例

まずは、以下の事例について紹介する。

●静岡県裾野市「Woven City」
●宮城県仙台市「スーパーシティ構想」
●千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」

日本のスマートシティの事例については、スマートシティの事例集|18選の国内外事例や失敗例、自治体による取り組みなど紹介の記事でも詳しく紹介している。

静岡県裾野市「Woven City」

トヨタは、静岡県裾野市で「Woven City」の開発を進めている。
自動運転技術、AI、ロボットなどの検証や実験を行うためのスマートシティで、実際に人が住むと想定されている。
2024年夏に建物が完成し、2025年に一部の実証実験を開始する予定だ。
「Woven City」については、デジタルツインで実現するスマートシティが都市の課題を解決も、チェックしてみてほしい。

宮城県仙台市「スーパーシティ構想」

宮城県仙台市は、持続的な経済成長を実現するために、複数分野のデータ連携と最先端技術によるスーパーシティの開発を進めている。
東北大学と「スーパーシティ構想」を取りまとめ、NTTドコモと協働でドローンやXR技術などの実証実験を行った。
さらに、カメラで取得した映像をAIで解析し、通行量や属性を集計するシステムをデータ基盤と連携させた。

参考:仙台市×東北大学 スーパーシティ構想|東北大学

千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」

千葉県柏市では、公・民・学の連携で「柏の葉国際キャンパスタウン構想」を共有し、スマートシティ実行計画が策定された。
モビリティ」「エネルギー」「パブリックスペース」「ウェルネス」の4つのテーマに取り組み、民間と公共のデータプラットフォームを活用している。

オフィスの換気や着席状況などを見える化(出典:未来図|柏の葉が目指すスマートシティ構想)
オフィスの換気や着席状況などを見える化
(出典:未来図|柏の葉が目指すスマートシティ構想

複数の分野を横断した、公・民・学の連携によるオープンイノベーションの場になるよう目指している。
なお、「柏の葉スマートシティ」については、柏の葉が目指すスマートシティ構想でも詳しく紹介している。

参考:KASHIWA-NO-HA SMART CITY|柏市

海外の事例

続いて、次の海外の事例を紹介する。

●シンガポール「Smart Nation Singapore」
●バルセロナ「Barcelona Digital City」

海外のスマートシティの事例については、スマートシティの事例集|18選の国内外事例や失敗例、自治体による取り組みなど紹介の記事でも詳しく紹介している。

シンガポール「Smart Nation Singapore」

シンガポールでは、「Smart Nation Singapore」と掲げてスマートシティ化を推進している。
2023年のスマートシティランキングにおいて、シンガポールはアジアを代表するスマートシティとして選ばれ、世界では7位にランクインした。
デジタル政府、デジタル経済、デジタル社会を柱として、99%の政府サービスのデジタル化を実現している。
例えば、企業や市民による共有のオープンプラットフォーム構築や、LifeSGと呼ばれる政府サービスにアクセスできるアプリを提供している。

参考:Smart Nation | Singapore

バルセロナ「Barcelona Digital City」

スペインのバルセロナは、デジタル公共インフラへの投資により、スマートシティの構築を進めている。
具体的には、カタルーニャ州を南欧における5Gのデジタルハブとして開発し、5G技術に関するサービスの実証実験を行う予定だ。
また、市民が意思決定に参加できるプラットフォームを活用し、議論の場を設けている。

参考:5G Barcelona | Barcelona Digital City
Decidim Barcelona | Barcelona Digital City

スマートシティの実現を支える!注目の最新技術6つ

スマートシティの実現を支える、注目の最新技術6つを紹介する。

 ●クラウドWi-Fi
 ●ビッグデータ
 ●AI
 ●デジタルツイン
 ●AR/VR/MR
 ●ドローン

クラウドWi-Fi

スマートシティにおいて複数の拠点に通信を提供するには、「クラウドWi-Fi」が有効だ。
複数の箇所にWi-Fiを設置する際、従来はコストが課題となっていたが、運用コストを抑えられるクラウドサービス「クラウドWi-Fi Cambium(キャンビウム)」がある。
「クラウドWi-Fi Cambium(キャンビウム)」は、複数のアクセスポイント(AP)を運用する際に必要となるAP管理をクラウドサービスとして無償で提供している。

(出典:株式会社ミライト・ワン|クラウドWi-FiCambium(キャンビウム))
(出典:株式会社ミライト・ワン|クラウドWi-FiCambium(キャンビウム)

全国のAPを一元管理でき、初年度は保守費用が無料。詳細はこちらから確認できる。

ビッグデータ

ビッグデータの活用は、スマートシティには欠かせない技術だ。
多量性、多種性、リアルタイム性が特徴のビッグデータを分析することで、異変の察知や未来予測、住民のニーズを把握できる。

AI

AIの活用は、スマートシティ計画で重要だ。先ほど紹介したビッグデータの分析にも、AIが用いられている。
例えば、監視カメラで取得したデータ分析にAIを活用すると、リアルタイムで状況を把握できる。
さらに、次で解説する「デジタルツイン技術」と組み合わせることで、施設利用者の行動分析や、施設運営の効率化にも役立つ。

デジタルツイン

デジタルツインは、デジタル空間上に現実空間の情報を再現する技術だ。もともとは製造業で利用されていた。
デジタルツインを用いると、高精度のシミュレーションや未来予測が実現する。
例えば、現実にある都市や住民の状況をデジタルツインで再現し、都市の人流データを解析すれば、混雑の予測が可能である。

参考:デジタルツインで実現する スマートシティが都市の課題を解決|未来図

AR/VR/MR

スマートシティでは、ARやVR、MRの活用も期待されている。それぞれの意味や特徴は、次のとおりである。

名称意味・特徴
AR(Augmented Reality)・「拡張現実」と訳される
・バーチャルの情報を現実世界に重ねて表示する技術
VR(Virtual Reality)・「仮想現実」と訳される
・実体験に近い没入感のあるバーチャル体験ができる技術
MR(Mixed Reality)・ARとVRを組み合わせた技術で「複合現実」と訳される
・VRで得られるバーチャル体験を、現実世界に重ねて表示することが可能

ARやVRは、道案内や観光で活用されている。例えば、東京都の南大沢地区では、都市データを活用したARナビの実証実験が行われた。ARナビでバリアフリールートを表示し、目的地まで誘導することで、従来の地図よりも利便性を高めることが狙いである。
また、東京駅八重洲口で開催された「未来の物産展 from 青森」では、VRゴーグルを使ったバーチャルな観光体験が提供された。VRショッピングで青森県のご当地グルメを販売する取り組みだ。東京から青森までの物理的な距離や出店コストなどの課題を解消できるとして、注目を集めている。

「未来の物産展from青森」で実証された5GとVRによる新しい形態の物産展(出典:JR東日本、JR東日本スタートアップ、ABAL、ドコモの共同プレスリリース)
「未来の物産展from青森」で実証された5GとVRによる新しい形態の物産展
(出典:JR東日本、JR東日本スタートアップ、ABAL、ドコモの共同プレスリリース)

MRは、建設業界や認知症予防の分野で活用が期待されている。例えば、建設業界で制作が必要なモックアップ(模型)をMRで代替する方法がある。モックアップを模型ではなく3Dデータで作成し、MR技術により建設予定地のリアル空間上で3Dデータを重ね合わせる。さらに、3Dデータをデジタル修正しながら設計変更作業も可能だ。これにより、作業の効率化やコスト削減につながり、建設前に竣工イメージも把握しやすい。
愛知県では、MR技術を活用した認知症予防の実証実験を実施。MRを使用したソフトウェアで脳トレを体験することで、認知症予防への関心を高める狙いだ。

参考:ままちづくりの成功事例から学ぶ 東京都南大沢のスマートシティプロジェクト|未来図
5Gを活用したVRで観光業を支援|未来図
~スマートシティモデル事業~ 大府市において「MR技術を活用した認知症予防意識向上に向けた実証事業」により脳トレ体験会を開催します|愛知県

ドローン

ドローンを活用して、建物の壁面、水管橋、インフラなど人による目視点検が難しい箇所の点検作業を実施。足場等の設置コストをかけず、従業員の安全性を確保しながら点検作業ができる。


(出典:株式会社ミライト・ワン|ドローンフライトソリューション

ドローンなら、危険箇所でもさまざまな角度から点検ができるので、不良箇所を見つけやすく安全な街づくりに貢献できる。

スマートシティの現状課題と今後の展望

スマートシティの現状課題と今後の展望

最後に、スマートシティの現状課題と、今後の展望について解説する。

 ●スマートシティの普及と課題
 ●地域住民とのコミュニケーション
 ●スマートシティの持続可能性

スマートシティの普及と課題

今後は、従来の都市基盤とDXを組み合わせることで、社会課題の解決と経済発展を両立させた、人間中心の社会「Society 5.0」の構築に向けて前進する必要がある。
スマートシティは、Society 5.0の先行的な姿だ。
日本では、最先端技術を使った実証実験は進んでいるが、事業アイデアからコンセプト立案、実証までに留まり、事業化に至る都市が少ないのが現状である。
スマートシティを実現する上で、資金調達やセキュリティ住民との合意形成が課題となっている。

地域住民とのコミュニケーション

スマートシティを実現するには、地域住民との丁寧なコミュニケーションが重要だ。
定量データだけでなく、住民の困りごとなど定性データを収集し、合意形成を得ながら住民満足度の高いスマートシティ作りを意識する必要がある。
地域住民から合意を得られなければ、スマートシティ計画が失敗に終わる可能性もある。
スマートシティの利便性やメリットを、住民にわかりやすく説明することが大切だ。

スマートシティの持続可能性

持続可能なスマートシティを構築するには、事業として成立し、社会に実装される必要がある。
多様な組織や人材が関係するスマートシティプロジェクトの事業モデルは複雑であるため、運営会社のマネジメント能力が問われる。
そこで、共通認識を持ちながら、互いに協力して推進することが重要だ。

まとめ

スマートシティ計画は、さまざまな最先端技術を活用し、地域課題を解決しながら推進することが大切だ。
住民とのコミュニケーションや収集したデータからニーズや地域課題を把握し、解決につながる技術を実装する必要がある。
また、スマートシティで活用する技術は幅広く、事例を含めた最新情報にアクセスすることが重要になる。
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