リアルの街と連動する都市型メタバースの進化が加速

2022年5月6日

2020年にオープンしたバーチャル渋谷に続き、2022年2月には、バーチャル大阪が本格オープンした。2022年は、バーチャルならではの取組や仕掛けが実際の都市と連動する都市型メタバースに収益化の仕組みが生まれ、都市型メタバースが大きく進化する年になりそうだ。メタバースでの経済活動を適切に管理し、著作権などをめぐるトラブルを予防、解決するための取組みも始まった。大阪や渋谷の取組みからどんな未来が生まれるのか、みてみよう。

大阪の魅力を発信する「バーチャル大阪」が本格スタート

2022年2月28日、バーチャル大阪の本格展開が始まった。バーチャル大阪は、2025年に開催される大阪・関西万博に先がけ大阪の都市の魅力を発信したり、新たな文化の創出、コミュニティの形成を目指す。2021年12月のプレオープン時には、お笑いコンテスト「M-1グランプリ2021」のライブ配信を行った。2019年王者となったミルクボーイの実況とともにライブ配信を楽しむことができる仕組みで、アバターで参加する他のユーザーと一緒に、会場で漫才を見ているような体験を提供した。

本格展開の開始にあたり、メタバース内には新たに「新市街」が誕生。道頓堀をモチーフに大阪の街の雰囲気を再現したエリアや、大阪城やスカイビルなどを設置したフォトスポットの広場などが用意された。カウントダウンセレモニーには、吉村大阪府知事、松井大阪市長等がアバターで登壇し、イベントを盛り上げた。

バーチャル大阪 カウントダウンセレモニーの様子(出所:バーチャル大阪YouTubeチャンネル) イメージ
バーチャル大阪 カウントダウンセレモニーの様子
(出所:バーチャル大阪YouTubeチャンネル)

バーチャル大阪は、"City of Emergence"(創発する都市) をテーマに掲げる。今後、作成していくエリアや、実施するイベントの内容についても、ユーザーの声を聴きながら決めていくという。大阪にはこのような魅力がある、というアイデアを持っている人は、バーチャル大阪のツイッターに、#VOsakaVoiceと共に投稿してはいかがだろうか。

メタバース経済圏の誕生に向け、「バーチャル渋谷」はさらに進化

都市型メタバースの「先輩」であるバーチャル渋谷も、さらなる進化を続けている。 「5Gが可能にする「メタバース」でのバーチャルエンターテインメント」 で紹介したように、2021年に実施された「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」には、世界から延べ55万人が参加し、「FUN FOR GOOD」(楽しむことで社会貢献できる)というコンセプトのもと、さまざまなバーチャルイベントが開催された。

今年は、このような活動がさらに進化し、メタバース経済圏が生まれていく。この春に開催された「バーチャル渋谷 au 5G シブハル祭 2022」では、「バーチャル渋谷」と、「バーチャル大阪」が繋がり、2つの空間を舞台に多くのアーティストやVTuber等が出演するイベントが開催された。

バーチャル渋谷 au 5G シブハル祭 2022のイメージ(出所:KDDIニュースリリース) イメージ
バーチャル渋谷 au 5G シブハル祭 2022のイメージ
(出所:KDDIニュースリリース)

このようなパフォーマンスに対して、「投げ銭」で送金する仕組みは、すでに「バーチャル渋谷」で限定的ではあるが実装されている。今後は、一般人がストリートパフォーマンスをバーチャル渋谷内で行い、収入を得るような市場が生まれるだろう。バーチャル渋谷とバーチャル大阪にはワープゾーンがあり、一瞬で行き来ができる。渋谷でライブをして、その後すぐに大阪に移動してライブするようなことも、メタバースなら可能になる。

さらに、都市型メタバースで試したことを、リアルの都市にフィードバックするという活用法がある。再開発が進む渋谷では、渋谷駅桜丘口地区の再開発が2023年度に竣工、また、渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)が2027年度に開業する予定だ。メタバースを活用すれば、リアルで先駆けてバーチャルで営業してユーザーの反応をみたり、逆に、ユーザーの声をテナント選定に活かすようなことができる。

都市型メタバースの健全な発展にルール整備が必須

メタバースに集まる人の数が増え、経済活動が本格化していけば、トラブルも増えていくことが危惧される。米メタが提供する「ホライゾン・ワールド」ではハラスメントやヘイトスピーチが問題視され、3月、アバターから半径60センチメートルに境界線を引き他人と距離を取る仕組みが導入された。1月には、仏エルメスが、人気バッグ「バーキン」を模したデジタル製品「メタバーキン」を作成・販売していた個人を商標権侵害で提訴するという事件もあった。

アバターへの暴言は犯罪なのか。メタバース上に再現されたモノの著作権は誰が持つのか。
日本でも3月に、架空のキャラクターを使って動画の投稿を行うVTuberへの名誉毀損をめぐる裁判で、裁判所が発信者情報の開示請求を認めたことが話題になったが、既存の法律でカバーされない問題にどのように対応していくかが、都市型メタバースの今後の行方を大きく左右する。KDDIなどで、2021年11月に「バーチャルシティコンソーシアム」を設立し、都市連動型メタバースのガイドライン整備に向けて動き出している。4月22日には、第一弾として、「バーチャルシティガイドライン ver.1」が発表された。こうした指針を踏まえつつ、仮想空間ならではの自由さを保ちつつユーザーの権利や安全を守るかじ取りが求められる。

バーチャルシティコンソーシアム(出所:KDDIニュースリリース) イメージ
バーチャルシティコンソーシアム
(出所:KDDIニュースリリース)

2021年12月には、健全なるビジネス環境及び利用者保護体制の整備を目的として、一般社団法人日本メタバース協会が設立された。このような活動を通じ、都市型メタバースを起点とした健全なイノベーションの場となることを期待したい。

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