建設作業を効率化するスタートアップが提供する斬新なロボット&アプリ
地域建設業新未来研究会(CCA)が主催する建設テック×ピッチイベント「CCA Startup Conference」が2月21日に開催され、7社のスタートアップが自社製品のプレゼンを行った。ここではその中から、大賞受賞を含む、注目3製品を紹介する。
鉄筋結束を全自動化する「トモロボ」
建ロボテック(香川県)は、人と共に働く鉄筋結束ロボット「トモロボ」を紹介した。これまで「令和3年度 四国地方発明表彰 文部科学大臣賞」、「第34回中小企業優秀新技術・新製品賞 中小企業庁長官賞」を受賞するなど、すでに外部からの評価を得ている。
(写真1)鉄筋結束ロボット「トモロボ」
(出典:建ロボテック)
「トモロボ」は、建築現場で鉄筋を結束する作業を人と一緒に行うロボットだ。200mmピッチ、結束機2台使用時には、1カ所あたり2.7秒以下で結束。鉄筋の交点を感知しながらピッチの変化に自動対応し、ピッチ誤差は±20mmだという。12時間稼働することが可能だ。
同ロボットは2020年から販売を開始し、これまで18社に50台以上を販売したという。「トモロボ」を導入してメリットが出るラインは26.5m四方(約700㎡)からで、40m四方(約1600㎡)からはさらに効果が高まるという。
さらに「トモロボ」は、現在、自動的に作業が行えるように進化している。これは新たにオペレータロボットを開発したことで実現されており、「オペレータロボット」がこれまで人が行っていた「トモロボ」の横移動やオペレーションを代替する。「オペレータロボット」が「トモロボ」と連携することで、全自動を実現した。
また同社は、NTT西日本と建設ロボットの遠隔操作・オペレーション支援環境構築に向けた共同実験協定を昨年9月に締結。自律性を高めるための横移動機能・機構の開発をするとともに、リモートオペレーターがロボットを遠隔制御・操作するために必要なクラウドロボティクス基盤を開発するという。これはクラウド上でロボットの操作や管理を最適化する基盤で、今までロボット側のエッジで処理・判断していたものが、クラウド上での処理・判断する基盤移行ができるという。
(図1)NTT西日本がめざすクラウドロボティクス基盤
(出典:NTT西日本)
80mの構造物も製造できる3Dプリンタ
日本唯一だという建設用3Dプリンタを紹介したのはPolyuse(ポリウス、東京都)だ。モルタルを積み上げることで、型枠なしでコンクリート構造物を造ることができる3Dプリンタだ。CADデータを使って半自動的で行う。水を混ぜ、流動化したコンクリートを崩れず、つぶれないように形状を保持しながら凝固させる技術が同社の優位性だという。
(写真2)Polyuseの建設用3Dプリンタ
(出典:Polyuse)
実際の国道のバイパス工事での土台、曲部の縁石工事、曲線の壁などに利用され、すでに18の都道府件で使用されているという。
(写真3)曲線の壁の施工例
(出典:Polyuse)
マシン自体は3m四方しかないが、これは2.9tのバックホーで釣り上げることを想定しているためだという。ただ、小さい部材を組み合わせることで、より大きなものにも対応でき、これまで80m×4m×4mの実績もある。逆に小さいものだと、10cm×20cmも可能だという。
強度は3日で30N、28日で約70Nを発揮し、内部が緻密一体化している点も優位性だとした。
iPhoneのみで部屋中を計測し3D化できるアプリ
このイベントで最優秀賞を獲得したのが、nat(東京都)の3Dスキャン計測アプリ「Scanat」(スキャナット)だ。「Scanat」は、iPhoneやiPadのLiDARセンサーを活用したAI測量アプリだ。動画を撮影するように室内全体をスキャンするだけで計測可能な3Dモデル(OBJ、FBX、STLなど)と写真データ、図面(DXF、DWG、JWW、PDF)作成ができる。アプリのみでmm単位で計測でき、ネットワークがない現場でも撮影と処理が行える。同社はリフォームの見積書作成の計測で効果を発揮すると説明した。
(写真4)3Dスキャン計測アプリ「Scanat」
(出典:nat)
2%以下の誤差でmm単位での計測を実現しており、加速度センサー、ジャイロセンサー、撮影写真を使う独自のアルゴリズムにより精度を高めているという。
料金は1IDあたり年間72,000円(税別)。昨年1月に販売を開始し、これまで160社以上の契約があるという。
なお、同製品は昨年、都内中小企業等のVR、AR、AI等の先端技術を活用した社会課題解決に資する優れたコンテンツやソリューションを表彰する東京都の「Tokyo Contents/Solution Business Award 2022」で大賞を受賞した。
「Scanat」は機能拡張も随時行っており、昨年7月には、オプションとしてScanatで作成した3Dモデルの平面図化を行う「図面作成機能」を追加したほか、任意の3点以上をタップした後、内側の領域が計算可能な「面積計測機能」、撮影した3Dモデルをアプリ内で歩き回るようにしながら、各部屋の内部や住宅の外側を見て回ることが可能な「ウォークスルー機能」などをリリースした。
さらに今年の2月には、iOS16で利用可能になる「RoomPlan」APIを使用した「間取りスキャン機能」もリリース。この機能は、部屋や会議室などを撮影するだけで、床・壁・テーブルなどの対象物を読み取り、3D間取り図を作成する。スキャンと同時に撮影された写真を貼り付けることによって、単なる3D間取り図データだけではなく、3Dモデルへ処理を行うことも可能だという。
(図2)間取りスキャン機能
(出典:nat)
「Scanat」はリフォーム用途以外にも、現場の天井高、梁のサイズなどを計測する建設業、内見の代わりに3Dモデルを閲覧できる不動産業、引越しの見積もり等でも利用でき、将来は、一般の消費者にも提供し、部屋の模様替え等にも活用できるようにしていくという。
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