市内事業者の健康経営への取り組みをICTで推進する豊橋市

2023年5月15日

急速な高齢化や環境問題などさまざまな地域課題の解決を図るため、政府だけではなく自治体においても、スマートシティの実現がまちづくりの重要なテーマとなってきた。愛知県ではスマートシティの取り組み促進に向け、民間企業と連携したICTなどの先進技術の実用化・事業化の公募を、県内市町村を対象に2022年4月から開始。6月には岡崎市、半田市、刈谷市の3市、9月には豊橋市、春日井市、大府市の3市の選定が発表された。これらの中でも、市内事業者における健康経営の取り組みを推進する、豊橋市の「ICTを活用した健幸なまちづくり(糖尿病予防)事業」の事例を見てみよう。

健康経営の取り組みを推進する事業者を市内で募集

豊橋市は2022年10月に、SOMPOひまわり生命保険(血糖値モニタリング)、タウンドクター(カウンセリング・指導、分析)、カゴメ(野菜摂取量推定器機の設置)、八神製作所(セミナー・コンテンツ作成)の4社と連携し、「豊橋市ICTを活用した健幸なまちづくりコンソーシアム」を結成。市内を対象に、最新のヘルスケアサービスによる糖尿病予防を目的とした、「ICTを活用した健幸なまちづくり(糖尿病予防)事業」に参加する事業所を募集した。

(図1)豊橋市がめざす「ICTを活用した健幸なまちづくり(糖尿病予防)事業」の概要(出典:豊橋市のホームページ)
(図1)豊橋市がめざす「ICTを活用した健幸なまちづくり(糖尿病予防)事業」の概要
(出典:豊橋市のホームページ)

豊橋市は40?74歳の糖尿病有病率(予備軍を含む)が76.3%と、愛知県(59.5%)や国(57.6%)と比べても高い傾向にあり(2021年度国民健康保険特定健康診査より)、2019年度より豊橋商工会議所や協会けんぽ愛知支部と協定を結び、市内の健康経営・普及促進のために独自の認定・支援制度を設けてきた。そこでは、150社以上の「とよはし健康宣言事業所」が認定されているが、事業所によっては業務や勤務形態の兼ね合いにより、市が提供する集合型研修の実施が難しいことが課題となっている。

「ICTを活用した健幸なまちづくり(糖尿病予防)事業」では、集合型研修を見直し、従業員がスマートフォンを使って自身のペースで取り組める健康づくりプログラムを企画・実施。一方で、豊橋市民は糖尿病予防と関連する、野菜の摂取量が全国平均に比べて低いことも懸念しており、市内のスーパーおよび道の駅で、野菜摂取量が推定できる機器を設置して野菜の摂取を啓発する。

「ICTを活用した糖尿病予防プログラム」と「社会環境整備」を提供

具体的な取り組みとしては、参加事業所の従業員に対して「上腕に装着したセンサーによる血糖値モニタリングAIによる健康アドバイス」や「生活習慣改善に役立つ食事・運動に関するセミナーの開催」、「AIを活用した食事カウンセリングによる食生活の改善指導」を提供。さらに、社会環境整備の取り組みとして、前述の「野菜摂取啓発」に加えて「企業の健康課題の整理と健康づくりのアクションプラン作成支援」が提供された。

精神科医監修のもとで行われる「食生活の改善指導」では、対象者1人1人の生活改善に対するモチベーションを4段階で定量的に見える化し、各レベルに合わせてカウンセリングとリコメンドのアドバイスを提供。カウンセリングでは、日常生活や食事・運動・睡眠などの生活状況の振り返りを通じて、心理面および生活面で評価した。その結果を踏まえ、1万件を超える食事・運動・睡眠のアドバイスカードの中から対象者の普段の生活状況を踏まえ、最適なものがリコメンドされた。

(図2)タウンドクターが提供する「AIを活用した食事カウンセリングによる食生活の改善指導」(出典:タウンドクターのプレスリリースより)
(図2)タウンドクターが提供する「AIを活用した食事カウンセリングによる食生活の改善指導」
(出典:タウンドクターのプレスリリースより)

また、「血糖値モニタリング」では、血糖値との相関が高いグルコース値を常時測定するSOMPOひまわり生命保険の「リンククロス 血糖コーチング」が提供され、「野菜摂取量の推定」では、センサーに手のひらを当てるだけで推定野菜摂取量が分かるカゴメの「ベジチェック」が使用された。

(図3)SOMPOひまわり生命保険が提供する「リンククロス 血糖コーチング」(出典:SOMPOひまわり生命保険のプレスリリースより)
(図3)SOMPOひまわり生命保険が提供する「リンククロス 血糖コーチング」
(出典:SOMPOひまわり生命保険のプレスリリースより)

健康づくりを自分事と捉えるようになった参加者

2022年度は、2022年11月から2023年2月までに8社(8業種)の従業員58名が参加し、ICTを活用した糖尿病予防プログラム(血糖値モニタリング、オンラインセミナー、オンラインカウンセリング)を実施。また、2022年11月から12月までに、市内のスーパー5店舗の野菜売り場に野菜摂取量推定デバイスを設置し、約10,000回(人)分を測定した。

こうした取り組みの結果、参加者にとっては健康づくりが「自分事」となり行動変容が導かれたという。また、今回は複数の業種の従業員が参加したが、各サービスのいずれも職場環境によって実施ができなかったという声はなく、市の支援メニューに実装可能であると評価している。

一方で、センサーの装着失敗や途中で外れることもあったり、アプリ連携ができないなどのストレスを感じた参加者もいた。オンラインセミナーや動画配信に関しても、「時間がなかった」を理由に想定よりも視聴数が伸びなかった。豊橋市では今後こうした課題を改善し、「とよはし健康宣言事業所」の支援メニューに、今回のICTを活用したサービスを随時追加。市内事業所が広く利用できるような環境を作っていく。

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