NECプラットフォームズ、AMRや計画最適化処理技術で生産効率30%アップ

2023年11月6日

NECプラットフォームズは、静岡県掛川市の掛川事業所内に新工場(新A棟)を建設し、今年の8月から本格稼働を開始した。

掛川事業所内 新A棟とは

掛川事業所内 新A棟の外観 イメージ
掛川事業所内 新A棟の外観

新A棟では、ローカル5Gを活用した自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)の運用や、AMRと無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)の同時複数台制御など、先進技術を活用した仕組みを取り入れることで、製造工程の自働化・高度化を図っている。

掛川事業所で導入しているAMR イメージ
掛川事業所で導入しているAMR
掛川事業所で導入しているAGV イメージ
掛川事業所で導入しているAGV

なお、AGVは事前に定められたルートを周回して物を搬送するロボットであるのに対し、AMRは事前に定められたエリア内を自律的に周回し、物を運ぶことができる。

AGVとAMRの違い イメージ
AGVとAMRの違い

AGVは工場の床に貼られた磁気テープ上を走行する。AGVは走行ルートをあらかじめ1台ずつ設定する必要がある。一方、AMRは仮想的なグリッド上を走行。カメラ映像をもとにサーバと通信しながら走行する。(出典:NEC)

新A棟は、南北100メートル、東西37メートル、地上4階建ての建物となっており、延べ床面積は15,632平方メートル。ここでは、主に5Gモバイルルータ、5Gホームルータ、ホームゲートウェイ、企業向けLANスイッチ、無線LAN製品などを製造している。

建物は災害時の避難所として指定されており、屋上には太陽光設備も設置され、年間のCO2約120トンの削減を見込んでいる。

新A棟は2階から製造を開始して、3階、4階と上げていくスタイルで、2階は電子部品をプリント基板に実装する工程、3階はコネクターなどの大型の部品を実装して、そこで完成したプリント基板を検査する。4階は3階で、完成したプリント基板を製品に組み込み完成させ、最終的な検査及び梱包を行う。1階は製作機器の受入や検査、顧客の要求に応じたカスタマイズ等を行っている。

新A棟に導入する先端技術

新A棟の特徴は3つある。1つ目は先端技術の活用だ。

工場内にはローカル5Gによる通信環境を構築し、部品、製品の自動搬送システムを構築している。

自動搬送システムでは、カメラ映像データから自己位置を推定するVisual SLAM技術を用いてAMR17台を運用。また、AGV8台も併用している。AMRの運用にあたり、NECの自律移動ロボット管制制御ソフトウェアであるNEC マルチロボットコントローラ(MRC)を採用。MRCにより、AMRの最適な走行経路をリアルタイムに計算し、渋滞回避やAGVの位置情報を活用し交差点制御を行うことで自働搬送を実現する。新A棟では自動搬送システムより、生産効率が30%向上しているという。

黄色の線に沿って運搬するAGV イメージ
黄色の線に沿って運搬するAGV

ローカル5Gは、同社の甲府事業所でこれまで実証実験を行ってきており、この経験をもとに、新工場で実運用している。AMRは撮影した画像により判断し運転しているため、高速、低遅延のローカル5Gを通信として利用しているという。

フロア内のローカル5Gアンテナ イメージ
フロア内のローカル5Gアンテナ
工場内を走行するAMR イメージ
工場内を走行するAMR

また、先端技術として、量子アニーリング技術を活用した生産計画最適化を行っている。

「製造業の現場では、生産性を向上しつつ、他種多様なお客様のニーズに対応することが求められています。その一方で、それを実現するための生産計画が複雑化するという課題があり、これに関しては熟練者でも効率的な立案が難しくなっています。そこで、われわれが培ったモノ作りの原理原則である生産機種変更のための準備作業を短縮して、設備稼働時間を最大化するという思想のもと、量子アニーリングによる計画最適化処理技術を活用して、電子部品をプリント基盤に輸送する工程で適用しています。今回新たに、作業進捗状況を踏まえ、最適な作業順序を作業者に指示する作業ナビゲーションの機能を取り入れており、これにより設備稼働率15%向上、計画立案工数90%削減、段取り工数50%削減の効果を創出しています」(掛川事業場の責任者であるNECプラットフォームズ 執行役員 石塚直美氏)

最適な作業順番をタブレットで作業者に指示する イメージ
最適な作業順番をタブレットで作業者に指示する

新A棟の2つ目の特徴はセキュリティだ。

新工場では、製品の生産現場にサイバーセキュリティとBCPの考え方を採用した独自のセキュリティ基準で、セキュアな調達、セキュアな製造、セキュアなロジスティクスを行う「セキュア生産」を実現している。

生産方式業務に応じて入退出可能な区画を設定し、ICカードと顔認証を組み合わせた入退出システムで人の出入りを管理。また、生産ラインごとにネットワークを細分化(セグメンテーション)し、セキュリティインシデントが発生した際には被害を最小限に抑える工夫を行っている。

ICカードと顔認証を組み合わせた入退出ゲート イメージ
ICカードと顔認証を組み合わせた入退出ゲート

新A棟の3つ目の特徴はクリーンだ。具体的には、エアシャワー付きバスボックスの設置や、上層階への搬送するバーチレーターをフロア内に導入して外部から異物が入り込むことを極力制御している。

エアシャワー イメージ
エアシャワー

同社ではこれらの取り組みにより、製造工程の自働化・高度化を図り、掛川事業所全体で生産効率30%向上を目指している。

「未来図メディア」メールマガジン登録

5G×IoTの最新情報やイベント・セミナー情報を
いち早くお届けします。

ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ