農業用ドローンとは?種類や導入するメリット・デメリット、活用事例を紹介

2023年11月6日

慢性的な人手不足や高齢化が進む農業分野では、課題解決のひとつとしてドローンの活用が期待されている。しかし、「 ドローンは農作業でどのように利用できるのだろう 」と疑問に思う人もいるだろう。

この記事では、 農業用ドローンの種類と活用状況、農業にドローンを活用するメリットとデメリット、さらに活用事例を紹介する。 農業分野にドローンの導入を検討している場合、ぜひ参考にしてほしい。

なお、IoTやAIなどの最新技術を活用したスマート農業の概要や、ドローン以外のロボットについては、「 スマート農業でロボットを活用するメリットとは?種類や最新技術の導入事例を紹介 」で詳しく説明している。

農業用ドローンとは

農業用ドローンとは イメージ

農業用ドローンとは、 作物の上空を飛行して農薬や肥料を散布したり、作物の育成状況を上空から撮影して観察したりする無人航空機のこと。 用途に応じて、農薬を入れるタンクやカメラなどが搭載されている。

農業用ドローンを使用すると、 人が入りにくい複雑な地形でも農薬や肥料を散布でき、負担軽減につながる として注目されている。

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スマート農業でロボットを活用するメリットとは?種類や最新技術の導入事例を紹介

農業用ドローンの種類と活用状況

農業用ドローンにはどのような種類があるのだろうか。ここでは、 7種類の農業用ドローンと活用状況を紹介する。

農薬散布用ドローン
肥料散布用ドローン
播種用ドローン
授粉用ドローン
農作物等運搬用ドローン
センシング用ドローン
鳥獣被害対策用ドローン

それぞれ、詳しく説明していく。

参考: 令和4年度 農業分野におけるドローンの活用状況|農林水産省

農薬散布用ドローン

ヘリコプターによる防除事業(害虫対策など)の補完として、ドローンを活用した防除の作業が行われている。たとえば、 高齢化が進む農地で農薬散布をドローンで実施している。 農薬散布用ドローンの活用を進めるため、ドローン防除のオペレーター育成事業が展開されている。

2022年に農林水産省が発表した「 農業分野におけるドローンの活用状況 」によると、 ドローンによる農薬散布面積を100万haへ拡大する目標が設定されている。 2020年には、約11.9万haの面積でドローン防除を行っている。

ドローンに適した登録農薬数に関しては、2018年は646件であったが、2021年には1,050件まで拡大している。

株式会社ミライト・ワンは、ドローンフライト業務に必要な機材を販売している。次の画像は「農業用ドローン TSV-AQ2」という名前で、初心者でも使いやすい農薬散布用ドローンである。

(出典:株式会社ミライト・ワン|ドローン販売) イメージ
(出典:株式会社ミライト・ワン| ドローン販売

ほかにも設備点検用ドローンや小型空撮ドローンを提供しているので、以下のページをチェックしてほしい。

ドローン販売 | 株式会社ミライト・ワン

肥料散布用ドローン

中山間地の水田で、 ドローンによる液体を含む肥料散布が実施されている。 中山間地での作業は体力を消耗しやすいことから、ドローンの活用で負担軽減につながる。

肥料散布では、 CLAS対応の農業用ドローンが活用されている。 CLASとはセンチメータ級測位補強サービスのことで、従来のRTK方式のように基地局や事前測量を必要としない。RTK方式と比べて作業時間が短縮される効果がある。

播種(はしゅ)用ドローン

水稲の直播(ちょくはん)作業にもドローンが活用されている。 ドローンを利用することで田植作業が不要となるため、農作業を効率化できる。

従来の直播機と比較して、 ドローンの方が5分の1も作業時間を削減 できたという実証実験もある。収穫量は直播機を使用したケースと変わらない量を確保できているため、播種用ドローンの活用で生産性向上が期待できる。

授粉用ドローン

りんごなど、 果物の授粉作業にドローンを利用できる。 ホウ素を混ぜた花粉溶液をドローンが約1mの高さから散布することで、結実率を向上させる狙いだ。

岩手県で行われた実証実験によると、手作業で8時間かかっていた授粉作業が、ドローンの活用で10分にまで大幅削減された。また、 防水性の高いドローンを使用することで、天候に左右されず作業がおこなえる。

農作物等運搬用ドローン

収穫した農作物を運ぶドローンも注目されている。ドローンが農作物を運ぶことで、 免許を返納した高齢者が多い地域でも、新たな配送手段を確保できるようになる。

千葉県で行われた実証実験では、7kgものネギとイチゴをドローンに積載し、約800m先の広場まで飛行させたところ、5分38秒で到着した。 高齢の農家が新たな配送手段を確保 できれば、地方創生にもつながるだろう。

センシング用ドローン

ドローンが上空から撮影した作物の育成状況や土壌、病虫や雑草の発生状況の画像を分析する「 センシング技術 」も実用化が進められている。作物の見回り作業にセンシング用ドローンを活用すると、業務効率の改善が期待できる。

広島県の実証実験では、これまでキャベツの見回り作業に1haあたり約50分かかっていたが、センシング用ドローンの活用で約30分にまで短縮できた。 作業時間の短縮により、栽培面積の拡大 にもつながったという。

鳥獣被害対策用ドローン

鳥獣被害対策 にも、ドローンが使用されることがある。

一部の自治体では、赤外線カメラを積んだドローンが上空からイノシシなどの生息数や分布を撮影し、画像解析システムを使って分析。分析結果をもとに環境整備などの対策を取ることで、イノシシの確認数が46頭から5頭まで減少した事例がある。

農業用ドローンを活用するメリット・目的

続いて、 農業用ドローンを活用する3つのメリット を紹介する。

作業負担を減らせる
人が入りにくい場所で使える
栽培計画を立てやすい

それぞれ、詳しく説明していく。

作業負担を減らせる

ドローンを農作業で活用することで、 作業時間を大幅に削減でき、農作業の負担が軽減する。

山間部での作業は負担が大きく、場所によっては危険を伴うことも。ドローンを使って農薬や肥料散布、農作物の運搬を実施することで、きつい作業から解放される。

人が入りにくい場所で使える

ドローンは高度を変えやすいので、 傾斜地のような人が入りにくい場所でも、効率的に農作業ができる。

背が高くなりやすい果樹を傾斜地で育てていると、葉裏への農薬散布が難しい。ドローンなら樹高に合わせて高度を調整できるので、効率的に散布作業が行えるようになる。

栽培計画を立てやすい

ドローンが上空から農地の様子を撮影することで、 雑草や害虫などの状況を把握でき、栽培計画を立てやすくなる。

センシング技術でドローンが撮影した農地全体の画像を分析すれば、 育成のバラつきを改善できる。

農業用ドローンを活用するデメリット・課題

農業用ドローンを活用するデメリット・課題 イメージ

続いて、 農業用ドローンを活用するデメリットや課題 を紹介する。

コストがかかる
操縦者が不足している
使用可能な農薬が限定される

それぞれ、詳しく説明していく。

コストがかかる

農業用ドローンの導入にはコストがかかる。 農林水産省のホームページ によると、農業用ドローンの初期費用の目安は 80万円?300万円 と記載されている。初期費用に加えてメンテナンス費用もかかることを考えると、導入を踏みとどまる農家の方もいるだろう。

コスト面の課題を解消するために、補助金を活用する方法がある。 株式会社ミラテクドローンでは、ドローンビジネスを始める際の補助金申請サービスを提供している。詳細は、下記のページを参考にしてほしい。

補助金申請サービス|株式会社ミラテクドローン

なお、2023年9月時点において、代表的な補助金制度は次のとおりである。

補助金制度 概要
担い手確保・経営強化支援事業 農業経営の発展を目的として、農業用機械や施設の導入を支援する制度
小規模事業者持続化補助金 持続的な農業経営に向けた計画を作成して取り組む「小規模事業者」を支援する制度
強い農業づくり総合支援交付金 産地基幹施設の支援や卸売市場支援、生産事業モデル支援、農業用機械の導入に活用できる制度

それぞれの概要を、詳しく見ていこう。

担い手確保・経営強化支援事業

担い手確保・経営強化支援事業は、 農業経営の発展を目的として、農業用機械や施設の導入を支援する制度。

適切な人・農地プランが作成され、 農地中間管理機構を活用している地域において、条件を満たすと助成金が交付される。

助成金の算定方法は3つあり、①~③において算定された金額のうち、もっとも低い額が助成金額となる。それぞれの上限額は次のとおり。

算出方法 上限額
①事業費×1/2 法人...3,000万円
法人以外...1,500万円
②機械導入のための融資額
③事業費ー融資額ー地方公共団体等による助成額 100万円

担い手確保・経営強化支援事業の詳細について、詳しくは下記のページをチェックしてほしい。

担い手確保・経営強化支援事業(令和4年度補正予算)|農林水産省

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、 持続的な経営に向けた計画を作成して取り組む小規模事業者を支援する制度のこと。

補助率と補助上限額は、次のとおり。

類型 概要 補助率 補助上限
通常枠 小規模事業者が自ら作成した農業経営計画に基づき、商工会や商工会議所の支援を受けて、販路開拓などの取り組みを行うことを支援する 2/3 50万円
賃金
引上げ枠
販路開拓の取り組みに加え、地域別最低賃金よりも、 30円以上高い最低賃金を設定している 小規模事業者 2/3 (赤字事業者の場合は3/4) 200万円
卒業枠 販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やして 「小規模事業者」の従業員数を超えて、事業規模を拡大する 小規模事業者 2/3
後継者
支援枠
販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園で「 ファイナリスト 」または「 準ファイナリスト 」に選ばれた小規模事業者
創業枠 産業競争力強化法に基づいた「 特定創業支援等事業の支援 」を受け、販路開拓に取り組む「 新たに創業した小規模事業者

(参考:全国商工会連合会| 小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック

小規模事業者持続化補助金の詳細は、次のページをチェックしてほしい。

小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック|全国商工会連合会

強い農業づくり総合支援交付金

強い農業づくり総合支援交付金とは、 産地基幹施設の支援や卸売市場支援、生産事業モデル支援、農業用機械の導入に活用できる制度のこと。

農業用ドローン(農業用機械)の導入における補助率や上限額は、次のとおり。

・補助率:1/2以内
・上限額:1,500万円

強い農業づくり総合支援交付金の詳細は、下記のページをチェックしてほしい。

強い農業づくり総合支援交付金|農林水産省

操縦者が不足している

農業用ドローンのデメリット・課題として、 農業用ドローンの普及はこれからとなるため、現場で活用方法について助言できる人や、操縦者が不足していることも挙げられる。

ドローンのルートを設定する方法や用途ごとの機体の特徴など、 専門知識を持つ人も少ない。

農業用ドローンを上手く活用していくには、実際に操縦をして慣れることも大切だが、セミナーやスクールなどを通して、操縦に必要なスキル・知識を習得することも必要である。

株式会社ミライト・ワン グループでは、ドローンスクールサービスを展開している。JUIDA認定コースを受講でき、3日間で基本技術や法規、安全に関する基本知識を学習できる。詳細については、以下のページをチェックしてほしい。

ドローンスクール(JUIDA認定教習場)|株式会社ミライト・ワン

使用可能な農薬が限定される

ドローンで使用可能な農薬は農林水産省によって定められており、 登録されていない農薬は使用できない。 ドローンに搭載する薬剤タンクの容量は小さく、高濃度かつ少量で散布できる農薬のみ、上空からの散布が認められている。

ドローンに適した農薬とは、使用方法が次のような内容に当てはまる農薬などを指す。

● 無人航空機による散布
● 無人ヘリコプターによる散布
● 無人航空機による滴下、または、無人ヘリコプターによる滴下

それぞれの農薬の薬剤の例は、次のとおり。

種類 薬剤の例
無人航空機による散布 アドマイヤーフロアブル、ダントツ水溶剤、ナティーボフロアブルなど
無人ヘリコプターによる散布 ハスモン天敵、インプレッション水和剤、ウララ粒剤など
無人航空機による滴下、または、無人ヘリコプターによる滴下 東ソーシーゼットフロアブル、アグロスシーゼットフロアブル、トクソーワンベストフロアブルなど

農林水産省は、登録数の少ない果樹用農薬などを中心に、登録数の拡大を図っている。ドローンで使用可能な農薬に関する最新情報は、農林水産省のホームページを参考にしてほしい。

参考: ドローンで使用可能な農薬|農林水産省

農業用ドローンの活用事例

農業用ドローンは、実際どのように使われているのだろうか。ここでは 海外・日本における、次の3つの活用事例 を紹介する。

温室内の害虫対策|オランダ
ドローン防除事業|山口県長門地域
ドローンとAIによるトマトの授粉|日本工業大学

それぞれ、詳しく説明していく。

温室内の害虫対策|オランダ

蛾を駆除する屋内ドローン(出所:PATS Indoor Drone Solutions YouTubeチャンネル) イメージ
蛾を駆除する屋内ドローン(出所:PATS Indoor Drone Solutions YouTubeチャンネル)

ドローンは屋外だけでなく、 温室でも活用が始まっている。

オランダで開発された自律飛行するドローンは、 温室内で育てられた作物から蛾を駆除することができる。 殺虫剤を使用せず害虫から作物を保護できるため、高値で販売できるという。

関連リンク
オランダから学ぶ、日本のスマート農業の未来

ドローン防除事業|山口県長門地域

山口県長門地域では、ドローンによる防除事業を実施。300haの農薬散布をドローンが行い、 効率的な防除作業を実現している。

また、 若手農業者をドローンの操縦者として育成するために活動している。

参考: 令和4年度 農業分野におけるドローンの活用状況|農林水産省

ドローンとAIによるトマトの授粉|日本工業大学

日本工業大学では、 ドローンとAIを活用してトマトの授粉に取り組んでいる。 通常、トマトの授粉は虫を介して行われるが、代わりにドローンを活用することで室内でも授粉を成功させる狙いだ。

授粉に最適とされるトマトの花をドローンが撮影し、画像をAIが学習する。 虫の代わりになる小型ドローンも開発し、農作物の生産性向上を目指している。

参考: ドローンとAIでトマトの授粉 日本工業大、未来の農業に挑む|Science Portal

まとめ

ドローンを農業に活用すると、人間の作業負担を減らせるなどさまざまなメリットがある。農業用ドローンは、 農作業の効率化や生産性向上に欠かせないことから、実用化に向けて実証実験が行われている。

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