平成から令和で通信サービスはどう進化するか

2024年1月15日

インターネットとモバイルが一気に広まった平成期に活躍した、「PHS」「ISDN」「ADSL」といった通信サービスが令和になって続々と終了する。「PHS」は2023年3月にすでに役割を終えており、「ISDN」は2024年1月、「ADSL」は2024年3月にサービスが終了する予定だ。そして令和の時代は、いよいよ電話からインターネットまで「オールIP」「オール光」の通信インフラが確立することになる。これによって、今後はどのような通信サービスが提供されるのだろうか。

平成の通信サービスが大きく変えた日本人のライフスタイル

平成の30年は、モバイル通信ネットワークを人々の生活における身近なインフラにした。総務省でも日本における近年の通信の進化を、1993年(平成5年)頃までの「移動通信サービス黎明期」、1993年頃から1998年(平成10年)頃までの「携帯電話普及開始期」、1998年頃から2008年頃(平成20年)までの「フィーチャーフォン全盛期」と、大きく3つの時代に分けて整理している。

一方で、携帯電話の普及に先立ち、平成初期の1980年代後半から1990年代前半にかけて普及したモバイル通信サービスとしてポケットベルが挙げられる。ポケットベルは、当時家や職場でなければ電話ができなかった時代にあって、外出中など電話が受けられない人ともコミュニケーションを取れるようにした。すなわち、家や職場ではなく、個人と直接コミュニケーションが取れるようになり、ここから日本人のライフスタイルが大きく変わっていったとも言える。

総務省がまとめた日本のモバイル通信サービスの普及と進化(出典:総務省資料より抜粋) イメージ
総務省がまとめた日本のモバイル通信サービスの普及と進化
(出典:総務省資料より抜粋)

オールIPで期待されるサイバーとフィジカルの融合

このように、モバイル通信サービスは音声通話から始まり、データ通信サービス、マルチメディア通信サービスなど世代を経るごとに発展を続け、生活や産業の基盤を担い続けてきた。また、2G、3Gのネットワークでは、回線交換方式(CS:Circuit Switched)による音声通信用ネットワークと、パケット交換方式(PS:Packet Switched)によるデータ通信ネットワークの2つのネットワークが並存していた。それが、2010年の4G(LTE)サービスの開始によって音声通信もパケット交換方式となり、モバイル通信ネットワーク全体がIP化されて通信の効率化や多様なアプリケーションの活用などさまざまなメリットが生まれている。

2020年3月からサービスが開始された5Gは、高速大容量や低遅延、多接続といった技術的特徴をもち、それ以前のマルチメディア通信サービスを高度化するだけではなく、AIやIoTとともに、これからの産業や社会を支える基盤として新たな価値を提供することが期待されている。

こうしてネットワーク全体がIP化されたモバイル通信と、2024年から進む固定通信のIP化による、通信のオールIP化によって、「アナログとデジタル」「モバイル通信と固定通信」「コンピューティングとネットワーク」「サイバー空間と物理空間」など、従来は分断されていた4つの環境の「融合と協調」が進み、デバイスやネットワーク、アプリケーションの情報処理や情報流通がシームレスに連携される。

それによって実現が期待される新たなサービスの1つが、「CPS(サイバーフィジカルシステム)」だ。「CPS」とは、実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをIoT技術を使って収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術などを駆使して見える化することで、産業の活性化や社会問題の解決を図っていくテクノロジーのこと。さらに、近い将来AIが通信サービスに統合されれば、実世界の人間の行動や事象をサイバー空間上で認知したAIが、人間に代わってコミュニケーションをとることでさまざまな問題を解決することも期待される。

オールIP化向けたNTTの局内設備の切替(出典:NTT西日本のプレスリリースより引用) イメージ
オールIP化向けたNTTの局内設備の切替
(出典:NTT西日本のプレスリリースより引用)

モバイル通信と固定通信を融合させたサービス

オールIP化によるモバイル通信と固定通信に関しては、現時点でもそのメリットを生かしたサービスが提供されている。NTTコミュニケーションズは、アクセス回線をワイヤレス化することで、固定電話回線における場所の制約や工事の手間などを解消した「Arcstar IP Voiceワイヤレス」と、モバイル端末で固定電話番号による発着信を実現することで、オフィスの電話環境のフルモバイル化を可能にする「モバイル オフィス番号セット」の2つのサービスを2023年6月30日より提供している。

「Arcstar IP Voiceワイヤレス」は、固定電話回線を敷設することなく固定電話機で0ABJ番号(「03」から始まるなど、従来の固定電話の番号)が利用可能なサービス。アクセス回線がワイヤレス化されているため、事務所や工場、郊外型モールなどレイアウトやテナント位置の変更が多くて電話回線の敷設が難しい場所でも固定電話が利用でき、敷設に伴う工事の手配や費用も削減される。また、利用中の端末(アナログの固定電話機やFAXなど)をそのまま利用できるため、新たな設備投資は不要。転送などの付加機能も利用でき、従来の法人向け固定電話に求められる役割をそのまま継続できる。

「モバイル オフィス番号セット」は、モバイル端末で090などのモバイル向け電話番号に加え、0ABJ番号での発着信が可能になるサービス。モバイル向け電話番号と0ABJ番号を発着信できるため、モバイル端末1台でオフィスと個人の電話環境が構築できる。

モバイル通信と固定通信を融合した「Arcstar IP Voiceワイヤレス」サービス(出典:NTTコミュニケーションズのプレスリリースより引用) イメージ
モバイル通信と固定通信を融合した「Arcstar IP Voiceワイヤレス」サービス
(出典:NTTコミュニケーションズのプレスリリースより引用)

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