カーボンニュートラルの実現を目指す企業の取り組みや具体例を紹介
目次
- ▼1. カーボンニュートラルとは
- ▼2. 日本企業に義務づけられているカーボンニュートラルへの対応とは
- ・ 温対法による義務
- ・ 省エネ法による義務
- ・ 罰則が科されることも
- ▼3. 企業がカーボンニュートラルの実現を目指すメリット
- ・ 省エネによりコストを削減できる
- ・ 脱炭素ビジネスで事業拡大につながる
- ・ 投資を受けるためのアピールにつながる
- ・ 人材獲得において有利になる
- ▼4. カーボンニュートラルの実現に向けて企業ができること
- ・ 温室効果ガス排出量の可視化
- ・ 再生可能エネルギーの活用
- ・ 省エネ対策の実施
- ・ 電気自動車の導入
- ▼5. カーボンニュートラルを目指す企業の具体例
- ・ イオン株式会社
- ・ 大日本印刷株式会社
- ・ Apple
- ・ FedEx
- ▼6. カーボンニュートラル実現に向けた企業の課題
- ▼7. まとめ
日本は、 2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言している。 カーボンニュートラルの達成には官民が一体となって変革を起こす必要があり、企業によっては法律で対応が義務づけられている。
この記事では、 企業がカーボンニュートラルの実現を目指すメリットやできること、具体例や課題を紹介する。
そもそもカーボンニュートラルとは
そもそもカーボンニュートラルとは、 温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量から植林などによる吸収量を差し引いて、合計をゼロにすること。
GHGのほとんどがエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)で、燃料の燃焼や電気・熱を利用する際に排出されている。
2020年、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言した。近年、GHGが大気中に増えて地球温暖化が進行し、異常気象が頻発していることから、 GHGの削減に向けた取り組みが世界中で求められている。
日本企業に義務づけられているカーボンニュートラルへの対応とは
カーボンニュートラルを実現するには、政府と民間企業、国民などが協力して取り組む必要がある。企業は、 以下の2つの法律によってカーボンニュートラルへの対応が義務づけられている。
● 地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)
● エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)
各法律の概要や、対応しなかった場合の罰則について、詳しく見ていこう。
温対法による義務
地球温暖化対策の推進に関する法律「温対法」(2022年4月)によると、 GHGを多量に排出する事業者に対して、排出量を算定して国に報告することが義務づけられている。 報告した情報は国が集計して公表されるため、国民や事業者は閲覧が可能となる。
対象となる事業者とGHGの種類は、次のとおり。
対象となる事業者とGHGの種類 | |
エネルギー起源のCO2 | ● 全事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者 ● 貨物輸送事業者に輸送させる貨物輸送量が3,000万トンキロ/年以上の荷主 など |
そのほかのGHG | ● GHGの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO2換算で3,000トン以上 ● 事業者全体で常時使用する従業員数が21人以上 以上の要件を満たす事業者 |
温対法の対象となる一般事業者は毎年7月末日まで、輸送事業者は6月末日までに、前年度の排出量を事業所管大臣に報告すると、環境大臣や経済産業大臣を通じて公表される。その際、事業者はGHGが増減した理由もあわせて報告できる。
参考: 制度概要|環境省
省エネ法による義務
エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律「省エネ法」(令和5年4月)は、 工場・事業場と運輸分野を直接規制している。 対応が義務づけられた対象者を詳しく見てみよう。
工事・事業場 | 運輸 | ||
特定貨物/旅客輸送事業者 | 特定荷主 | ||
報告義務の対象者 | エネルギー使用量1,500kl/年以上の特定事業者等 | 保有車両トラック200台以上等 | 年間輸送量3,000万トンキロ以上 |
これらの対象者には、 エネルギー管理者の選任、中長期計画の提出、エネルギー使用状況の定期報告などが義務づけられている。
なお、省エネ法は2023年4月に改正されており、従来の省エネ法との違いは次のとおりである。
従来の省エネ法 | 改正省エネ法 |
化石エネルギーが報告対象 (石油、揮発油、可燃性天然ガス、石炭など) |
化石エネルギーに加え、非化石エネルギーも報告対象に (黒液、木材、廃タイヤ、水素、アンモニアなど) |
対象となる特定事業者には、 非化石エネルギーへの転換に関する計画書の提出も求められている。 詳しくは、下記のサイトをチェックしてほしい。
参考:
省エネ法の概要|資源エネルギー庁
省エネ法の手引き|資源エネルギー庁
改正省エネ法の「非化石エネルギー」には、太陽光発電も含まれている。株式会社ミライト・ワンは太陽光発電設備の導入をサポートしているので、改正省エネ法の対応が必要な場合は、下記のサイトをぜひ参考にしてほしい。
対応しなかった場合は罰則が科されることも
温対法と省エネ法の対象になっている事業者であるにもかかわらず、 対応しなかった場合には、罰則が科されることもある。
それぞれ、具体的な罰則内容は次のとおり。
法律 | 温対法 | 省エネ法 |
罰則内容 | 報告をしない、または虚偽の報告をした場合、20万円以下の罰則がある | 定期報告をせず、または虚偽の報告をした場合や、立入検査を拒否した場合などは、50万円以下の罰金がある。また命令に従わないと100万円以下の罰金が科される |
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットとは
一部の企業はカーボンニュートラルへの対応が法律で義務づけられているが、 対象事業者でなくても、カーボンニュートラルの実現を目指すことで、次のようなメリットが得られる。
● 省エネによりコストを削減できる
● 脱炭素ビジネスで事業拡大につながる
● 投資を受けるためのアピールにつながる
● 人材獲得において有利になる
それぞれの内容について、詳しく説明していく。
省エネによりコストを削減できる
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一環で 「省エネ化」を推進すると、コスト削減につながる。 たとえば、施設内の電気使用量を把握して節電に取り組むことで、エネルギーのムダがなくなり、コストの負担が小さくなる。
また、 設備そのものを省エネ化すれば、長期的に見て光熱水費やCO2、コスト削減につながる。 株式会社ミライト・ワンは、スマートビルを実現するためのソリューションを提供している。ぜひ以下のサイトを参考にしてほしい。
脱炭素ビジネスで事業拡大につながる
カーボンニュートラルの認知が高まる近年では、 脱炭素化に貢献するビジネスに取り組むと、事業拡大のチャンスを得られる。
たとえば、環境負荷の低い製品や高効率の製品などを開発すると、新事業の創出につながる。また、太陽光発電、バイオマス発電、水力発電などの自然エネルギーによって発電される「グリーン電力」を調達すれば、カーボンニュートラルに貢献ができる。
株式会社ミライト・ワンでは、グリーン電力の販売をしているので、興味のある方は以下のサイトをチェックしてみてほしい。
投資を受けるためのアピールにつながる
カーボンニュートラルの実現に向けて積極的に取り組むことで、 投資を受けるためのアピールにつながる可能性がある。
最近では、機関投資家の質問項目に「CO2排出量の削減に向けた取り組み」が含まれているケースが見られるからだ。 適切に対応してアピールすれば、投資を受けやすくなるだろう。
人材獲得において有利になる
カーボンニュートラルに関する取り組みを発信すると、企業評価が高まり優秀な人材を確保しやすくなる。
近年では、学校の授業でもSDGsや環境問題に触れる機会があり、とくに若い世代では「環境に配慮した企業」が就職先として注目されている。カーボンニュートラルに向けた取り組みを行うことで、 環境保護やカーボンニュートラルに関心のある人材の獲得が期待できる。
カーボンニュートラルの実現に向けて企業ができること
では、 カーボンニュートラルの実現に向けて、企業は何ができるのだろうか。
具体的な対策として、今回は次の4つを紹介する。
● 温室効果ガス排出量の可視化
● 再生可能エネルギーの活用
● 省エネ対策の実施
● 電気自動車の導入
温室効果ガス排出量の可視化
まず、企業はGHGの排出量を可視化する必要がある。 数値で管理することで、電力需要を予測し、削減に向けたプロジェクトを実施しやすくなる。
たとえば、社内全体のエネルギーの使用量やCO2排出量をリアルタイムで把握したり、電力需要を予測したりできれば、コスト削減に向けた取り組みを検討できる。
株式会社ミライト・ワンでは、企業のエネルギーを統合管理し、省力化につながるサービスを提供している。詳細は以下のサイトを参考にしてほしい。
再生可能エネルギーの活用
太陽光や風、地熱、風を利用して発電させる再生可能エネルギーは、化石燃料とは違って、発電の際にCO2が発生しない。
工場や施設内に再生可能エネルギーの発電設備を導入すると、クリーンエネルギーの自給率が向上する。
株式会社ミライト・ワンは、施設に発電設備を設置して発電した電気を電力として提供するPPA事業を提供している。詳しくは、以下のサイトを参考にしてほしい。
省エネ対策の実施
省エネ対策もカーボンニュートラルの実現に貢献する。 具体的には以下の方法が挙げられる。
● 社内の蛍光灯をLEDへ交換
● 複数の事業者で電気と熱を利用するコージェネレーションシステムを導入
● 企業間で連携して共同輸送を実施
株式会社ミライト・ワンでは、CO2や電気代の削減につながるLED街頭を活用したソリューションを提供しているので、以下のサイトもあわせて参考にしてほしい。
電気自動車の導入
社用車として電気自動車(EV)を導入すると、ガソリン車と比べてCO2排出量を削減できる。
カーボンニュートラルの達成には「 脱ガソリン車 」を加速させ、新車販売でEVの比率を高めることが重要である。また、 EVは非常用電源として使えるため、災害時のBCP対策にもつながる。
株式会社ミライト・ワンでは、EV充電スタンドのインフラ整備ソリューションを展開している。詳しくは以下のサイトを参考にしてほしい。
カーボンニュートラルを目指す企業の具体例
実際に企業は、 どのような方法でカーボンニュートラルを目指しているのだろうか。 ここでは、次の4社の事例を紹介する。
● イオン株式会社
● 大日本印刷株式会社
● Apple
● FedEx
イオン株式会社
イオン株式会社では、省エネや創エネで店舗から排出されるGHGを総量でゼロにする「 イオン 脱炭素ビジョン 」に基づき、カーボンニュートラルの実現に向けてグループで取り組んでいる。
取り組みは消費者を巻き込んで実施されており、具体的には以下のサービスが含まれている。
● 脱炭素型住宅の新築・住宅リフォーム
● EV購入などのローン
● 再エネの地産地消 など
参考: イオン 脱炭素ビジョン|AEON
大日本印刷株式会社
大日本印刷株式会社(DNP)では「DNPグループ環境ビジョン2050」を掲げ、 脱炭素社会や循環型社会、自然共生社会を目指している。
具体的な取り組みは、次のとおり。
● サプライチェーン全体でのGHG排出量削減
● 生物多様性への取り組み
● 原材料の調達ガイドラインの設定
紙の調達がとくに必要なDNPでは、 原材料調達におけるGHGの排出量が多く、主要サプライヤーへの対応も求めている。
参考: 環境|DNP
Apple
Apple社では、2030年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルの達成を目標とする「 Apple 2030 」の取り組みの一環として、 カーボンニュートラルな製品を提供している。
2023年9月にリリースされたカーボンニュートラルなApple Watchは、GHGの排出量を75%カット。製造プロセスと製品の使用には100%のクリーン電力を、重量の30%に再生素材などを使用している。
参考: Apple、初のカーボンニュートラルな製品を発表|Apple
FedEx
物流サービスを提供するFedExでは、 2040年までにカーボンニュートラルな運用を実現する、と目標を掲げている。 具体的には、以下の取り組みが実施されている。
● CO2排出量や廃棄物の削減
● 炭素を取り除く方法の研究活動
● エコフレンドリーな梱包材の使用
● 代替燃料への投資
また、 FedExのサイト にログインすれば出荷によるCO2排出の推定量を確認でき、各種報告書や顧客への開示用のデータとして使用できる。
カーボンニュートラル実現に向けた企業の課題
企業ごとにカーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな取り組みが推進されているが、いくつかの課題が残されている。
2022年、一般社団法人日本能率協会が実施した「日本企業の経営課題 2022」の調査結果では、 カーボンニュートラルの取り組みにおける課題について、企業規模別に以下の点が挙げられていた。
企業規模 | カーボンニュートラル実現に向けた課題 |
大手企業 | ・利益確保・拡大と環境性の両立が難しい ・顧客や取引先を巻き込んだ取り組みができていない |
中小企業 | ・担当する人材が不足している ・情報・知識が不足している |
また、2023年に日本政策金融公庫が報告した調査によると、 中小企業は取り組みの導入時に「コストが増える」「資金が不足している」などの課題も抱えていることがわかった。
資金面に課題がある場合は、補助金を利用できる可能性がある。企業のカーボンニュートラル実現を支援する補助金に関しては、以下の記事を参考にしてほしい。
参考: 【令和5年度】カーボンニュートラル(脱炭素)に関する14の補助金一覧
参考: 『日本企業の経営課題2022』 調査結果速報【第3弾】|PR TIMES、中小企業の脱炭素への取り組みに関する調査|日本政策金融公庫
まとめ
カーボンニュートラルの実現には、経済活動を行う企業による取り組みが欠かせない。 要件を満たした企業には法律で対応が義務づけられているため、温対法や省エネ法を確認して罰則が科されないよう注意が必要である。
企業によるカーボンニュートラルの達成に向けた施策には、 再生可能エネルギーの活用や太陽光発電の売電事業などが挙げられる。 脱炭素ビジネスを展開することで、新たなビジネスチャンスにつながるだろう。
株式会社ミライト・ワンは、太陽光発電システムの導入や、企業が保有する自家発電サイト、グリーン電力の売電事業の構築をサポートしている。詳細は以下のサイトで紹介しているので、参考にしてほしい。
太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス
グリーンエネルギー事業
また建物自体を省エネ化し、エネルギーやCO2を削減するソリューションも参考にしてほしい。建物で消費する年間のエネルギーの収支をゼロにすることを目指した、スマートビルを実現できる。
ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。
最新の特集
EdTech(エドテック)