カーボンニュートラルに向けた工場(製造業)の取り組み|中小企業の事例も

2023年12月4日

気候変動が懸念されるなか、企業はカーボンニュートラルへの取り組みが求められている。工場を含む産業部門のCO2(二酸化炭素)排出量はほかの部門よりも多く、製造業や工場における再生可能エネルギーの活用などによるCO2排出量の削減は、対応の優先度が高い課題である。

この記事では、 製造業・工場におけるCO2排出量や進捗状況、カーボンニュートラルに向けた具体的な取り組みや事例を紹介する。 ぜひ自社の工場でも取り組み、持続可能な社会の実現に貢献しよう。

カーボンニュートラルの基礎知識

カーボンニュートラルの基礎知識 イメージ

日本政府は、 2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」を実現すると宣言している。 2030年度には、2013年度の温室効果ガスと比較して46%削減することを目標として掲げた。

カーボンニュートラル、すなわち脱炭素社会を実現するには、官民一体となった取り組みが必要で、 企業には脱炭素経営が求められている。

脱炭素経営とは、気候変動対策も盛り込んだ経営のこと。企業は独自の目標と計画を立てて脱炭素経営に取り組むことで、 新たな事業チャンスの創出や認知度向上などのメリットが期待できる。

関連リンク
都市のカーボンニュートラルを目指すEUと、先行するコペンハーゲン

工場におけるCO2排出量

次に、2023年に発表された環境省の「 2021年度における地球温暖化対策計画の進捗状況 」を基に、工場が含まれる産業部門の排出量や進捗状況を、ほかの部門と比較しながら見てみよう。

部門別の目標数値と2021年度の進捗状況

部門別の目標数値と2021年度の進捗状況 イメージ
2013年度 2021年度
(2013年度比)
2030年度の目標・目安
(2013年度比)
エネルギー起源
二酸化炭素
部門全体 1,235 988
<-20.0%>
677
<-45%>
産業部門 464 373
<-19.5%>
289
<-38%>
業務その他部門 237 190
<-19.8%>
116
<-51%>
家庭部門 208 156
<-24.8%>
70
<-66%>
運輸部門 224 185
<-17.6%>
146
<-35%>
エネルギー転換部門 106 89.5
<-15.7%>
56
<-47%>

参考: 2021年度における地球温暖化対策計画の進捗状況 |地球温暖化対策推進本部 ※単位:百万トン

同調査では、部門全体と部門別のエネルギー起源CO2が提示されている。エネルギー起源CO2とは、 CO2排出量のうち、燃料の燃焼や電気、熱の使用により排出されるCO2のこと。

2021年度の部門全体におけるエネルギー起源CO2は、 9億8,800万トンで2013年と比較して20.0%減となった。 2030年度の目標である6億7,700万トンに向けて、今後も脱炭素化対策を進める必要がある。

また産業部門や家庭部門、運輸部門などを見ても、2013年と比較して減少傾向にある。工場を含む産業部門が2013年より減少している理由として、 電力消費量あたりのCO2排出量が改善された点があげられている。

参考: 2021年度における地球温暖化対策計画の進捗状況|地球温暖化対策推進本部

部門別に見ると産業部門(工場)の排出量が最多

まず、2023年に報告された国立環境研究所の資料から、部門別のCO2排出量を表したグラフを紹介する。

部門別に見ると産業部門(工場)の排出量が最多 イメージ

(参考: 2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要|国立環境研究所

上のグラフから、 工場を含む産業部門は、最多の排出量であることが一目でわかるだろう。 2021年における産業部門のエネルギー起源CO2排出量は3億7,300万トンで、前年比で5.4%の増加となった。

ほかの部門と比較しても差が大きいことから、 工場におけるCO2排出量の削減への取り組みが強く求められている。

参考: 2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要|国立環境研究所

工場(製造業)におけるカーボンニュートラルに向けた取り組み4つ

工場(製造業)におけるカーボンニュートラルに向けた取り組み4つ イメージ

カーボンニュートラルを2050年までに実現するために、環境負荷の少ない工場の稼働が求められる。

ここでは、カーボンニュートラルに関する工場の主な取り組みとして、次の4つを紹介する。

CO2の排出量を可視化する
省エネ設備に入れ替える
再生可能エネルギーを利用する
カーボンオフセットの仕組みを導入する

CO2の排出量を可視化する

まずは、 自社の工場におけるCO2の排出量を算出し、可視化する必要がある。 企業によっては工場のCO2排出量を開示しており、積極的な取り組みが求められている。

製造業などの工場におけるCO2排出量は、 モノが作られて廃棄されるまでのサプライチェーン全体で考えることが重要となる。 サプライチェーンにおける排出量の捉え方として、スコープ1、スコープ2、スコープ3があり、それぞれの概要は次のとおり。

排出量の捉え方 概要
スコープ1 自社が製造プロセスにおいて直接排出する温室効果ガス
スコープ2 ほかの事業者からの電力や熱などを使用し、間接排出される温室効果ガス
スコープ3 原材料や部品の輸送、販売会社や関連事業者によって間接排出される温室効果ガス

スコープ1から3をサプライチェーンの図に表すと、以下のようになる。

サプライチェーンの図 イメージ

(出典: 環境省・みずほリサーチ&テクノロジーズ|サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて

カーボンニュートラルスコープについて詳細は、以下の記事も参考にしてほしい。

株式会社ミライト・ワンでは、CO2排出量やエネルギー使用量を可視化し、統合管理するスマートマイクログリッドシステムを提供している。電気料金の削減だけでなく、メータの自動検針が可能であるため、省人化まで実現する。以下のサイトで詳しく解説しているので、参考にしてほしい。

スマートマイクログリッドシステム

省エネ設備に入れ替える

工場の照明をLED照明へ、生産設備で使うモーターやポンプを高効率の機械に入れ替えることもひとつの方法である。ほかには、以下の省エネ対策が考えられる。

● 設定温度の適正化
● 室外機フィンの清掃
● 蒸気圧力や温度の適正化など

工場の現状を調査するには、省エネルギーセンターが実施する「 省エネ最適化診断 」を受けると良いだろう。診断結果に応じて、コストがかからない省エネ改善施策などに関するアドバイスを受けられる。

参考: 省エネ最適化診断|省エネルギーセンター

株式会社ミライト・ワンでは、建物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を実現するスマートビルソリューションを提供している。建物のZEB化によって、CO2や光熱費の削減に貢献する。以下のサイトで詳しく解説しているので、参考にしてほしい。

ZEB・スマートビルソリューション

再生可能エネルギーを利用する

化石燃料ではなく、 工場で再生可能エネルギーを利用するのも脱炭素経営において重要な判断といえる。 再生可能エネルギーの主な種類として、太陽光発電、風力発電、水力発電があり、それぞれの概要は次のとおり。

再生可能エネルギーの種類 概要
太陽光発電 太陽電池を使って、太陽の光エネルギーを電気変換して発電する。屋根や壁、送電設備のない場所に設置される
風力発電 風力を電気エネルギーに変換して発電する。陸上と洋上があり、日本では陸上風力の方が多い
水力発電 ダムや河川、農業用水や上下水道などを利用して発電する。日本は水資源に恵まれているため、今後も開発が期待される

株式会社ミライト・ワンでは、太陽光発電システムのエンジニアリングサービスを提供している。太陽光エネルギーを工場に取り入れることで、温室効果ガス排出量の低減につながる。

提案から設計や調達、構築、保守だけでなく、補助金の申請までトータルサポートしている点が特長。詳細は、以下のサイトを参考にしてほしい。

太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス

カーボンオフセットの仕組みを導入する

工場にカーボンオフセットの仕組みを導入することで、カーボンニュートラルの実現に貢献できる。カーボンオフセットとは、 工場から排出された温室効果ガスと同等の削減活動を実施することで、温室効果ガスの排出量を埋め合わせるという仕組みのこと。

カーボンオフセットの仕組みを導入する イメージ

(参考: J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて|環境省

まずは排出量の削減に取り組み、どうしても排出される分についてカーボンオフセットが活用されている。カーボンオフセットで使用する排出量や吸収量を証明する「クレジット」を利用しながら、自社で設定した温室効果ガス削減の目標達成を目指す。

化石燃料由来のCO2排出量をオフセットするクレジットの活用で、「 CO2ゼロ工場 」を実現できるだろう。

工場におけるカーボンニュートラルの取り組み事例5つ

工場におけるカーボンニュートラルの取り組み事例5つ イメージ

続いて、 大企業から中小企業まで、工場におけるカーボンニュートラルの取り組み事例を紹介する。

脱炭素経営を実施|加藤軽金属工業株式会社
太陽光発電を導入|六甲バター株式会社の神戸工場
循環加温ヒートポンプを導入|大松工業株式会社
工場CO2ゼロチャレンジ|トヨタ自動車株式会社
アサヒカーボンゼロを設定|アサヒグループホールディングス株式会社

それぞれの事例を、詳しく見ていこう。

脱炭素経営を実施|加藤軽金属工業株式会社

アルミニウム製品の製造を手がける加藤軽金属工業株式会社では、 アルミ業界における脱炭素経営のモデル企業を目指し、積極的な取り組みを推進している。

具体的には、製品単位のCO2排出量の開示や、再生可能エネルギーで製造した「グリーンアルミ」などの先進的な取り組みを通じ、競争力を高める狙いがある。

その結果、 CO2削減につながる新規事業の創出や光熱費の削減、企業イメージの向上につながったという。

参考・出典:
再生エネルギーから生まれるグリーンアルミニウム、脱炭素社会へ向けて|加藤軽金工業
中小規模事業者向けの脱炭素経営導入事例集|環境省

太陽光発電を導入|六甲バター株式会社の神戸工場

チーズなどを製造・販売する六甲バター株式会社は、省エネに取り組むために以下の3つの施策を実施した。

● ガス会社のサポートにより100%に近いエネルギー効率を実現
● 排熱を工場で有効活用することに成功
● 太陽光発電システムの導入で、電力の地産地消を実現

これらの取り組みの結果、 年間で3,336トンものCO2排出量削減につながり、大幅な省エネ効果も得られた。

参考・出典:
カーボンニュートラル実現に向けた関西企業等の取組事例|近畿経済産業局

循環加温ヒートポンプを導入|大松工業株式会社

工業塗装事業を展開する大松工業株式会社では、 ボイラーから排出されるCO2の削減に向けて、以下の3つの施策を実施した。

● 計測器を用いて社内設備をデマンド管理し、エネルギー使用状況の可視化
● 循環加温ヒートポンプの活用で、CO2排出量を大幅に削減
● 電力を100%再生可能エネルギー由来のものに切り替え

循環加温ヒートポンプの導入前は年間のCO2排出量38トンに対し、導入後は25トンまで削減されている。

参考・出典:
カーボンニュートラル実現に向けた関西企業等の取組事例|近畿経済産業局

工場CO2ゼロチャレンジ|トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社の「工場CO2ゼロチャレンジ」では、2030年までに2013年と比較して工場のCO2排出量を35%以下にするだけでなく、 2050年には工場生産のCO2排出量ゼロを目指している。

具体的には、以下の取り組みを掲げている。

● シンプル・スリム・コンパクト化...製造見直し、工程短縮・集約
● エネルギー効率改善...捨てていたエネルギーの回収
● ムダ、ムラ、ムリの徹底排除

また、 蒸気の熱交換や高温空気化によるエネルギー効率技術や、地中熱を利用した省エネ技術などを導入している。

参考・出典:
気候変動|TOYOTA
工場CO2ゼロチャレンジ|TOYOTA

アサヒカーボンゼロを設定|アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループホールディングス株式会社では、 気候変動への中長期目標である「アサヒカーボンゼロ」を設定した。 アサヒカーボンゼロで目指しているものは、次のとおり。

● 2050年にスコープ1?3におけるCO2排出量をゼロにする
● 2030年にスコープ1と2で70%、スコープ3で30%削減する
● 2025年にスコープ1と2で40%削減する

具体的には、生産工場における再生可能エネルギーの導入やグリーン熱の利用、ビール工場排水由来のバイオメタンガスを活用したCO2排出量削減のモデル作りに取り組んでいる。

参考・出典:
気候変動への対応|Asahi
再生可能エネルギーを活用したビールの製造!2050年カーボンゼロを目指すアサヒグループの取組み。|再エネスタート

まとめ

産業部門からのCO2排出量はほかの部門よりも多く、工場からのCO2排出量の削減は喫緊の課題だといえる。 排出量の可視化やエネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの利用などに取り組み、カーボンニュートラル化を進めなければならない。

株式会社ミライト・ワンでは、脱炭素社会の実現に向けて、 事業活動を通じた高効率な社会インフラの構築や、再生可能エネルギーの供給を推進している。

太陽光発電システムの構築から運用・保守を行う「太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス」、CO2排出量を可視化する「スマートマイクログリッドシステム」、建物を省エネ化する「スマートビルソリューション」を提供しているので、ぜひ以下のサイトからチェックしてみてほしい。

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