物流DXを支援するデータ連携や位置情報ソリューション

2024年3月25日

デジタルへの対応が遅れているといわれてきた物流業界では、ドライバーの労働時間に上限が設けられる2024年問題が大きな影響を与えようとしている。慢性的なドライバー不足に対応するためにも、物流業界におけるデジタル化の取り組みや技術革新による業務の効率化、最適化、省人化などが早急に求められる。物流DXでは、どのようなソリューションの導入や対応が進められているのだろうか。

東芝デジタルソリューションズが倉庫システムを増強

物流DXでは、IoTやAI、ロボット技術、クラウドなどを活用した取り組みが進められている。IoTの活用では、各種のセンサーやデバイスを利用した荷物の位置情報や状態の取得をはじめ、車両の動きなどをリアルタイムにモニタリングすることで、トラックなどの効率的な運行管理を目指している。AIの活用では、配送する荷物の需要予測やルート最適化などによって、効率的な物流が実現できる。ロボット技術を導入すれば、物流倉庫内のピッキング作業や荷物の搬送などの作業が自動化できる。

こうした作業に関わるさまざまなデータの集約や共有をクラウド上で行えば、リアルタイムでの情報共有や業務効率化が推進できる。物流の世界では、近年クラウドを活用した「WES(倉庫運用管理システム)」や「WMS(倉庫管理システム)」といった倉庫システムの導入が進んでいるが、最近では特にこうしたシステムにおけるデータ連携がトレンドになっている。

東芝デジタルソリューションズは、倉庫運用最適化サービス「LADOCsuite/WES」と、倉庫管理ソリューション「LADOCsuite/WMS」の新バージョンの提供を2月16日より開始した。倉庫業務を効率化することで、荷物の積み下ろしに関わるドライバーの負担を軽減させることが狙いだ。

「LADOCsuite/WES」では、倉庫にトラックを接車して荷物の積み込みを行う場所(バース)の管理最適化機能が新たに実装され、出荷要件に応じて最適なバース利用計画が立てられる。また、「LADOCsuite/WMS」と連携させ、最適化されたバース計画に対して倉庫内の出荷作業を連動。これによって、ピッキングからトラックへの積み込みまで、トータルで出荷作業の効率化を実現するという。

さらに「LADOCsuite/WMS」では、ウイングアーク1stのオンライン配車業務プラットフォーム「IKZO Online」とのデータ連携が可能になり、荷主と運送会社をシームレスにつなぐことで、配車・運行管理・連絡業務の効率化を実現させるという。

(図表1)東芝デジタルソリューションズが提案する物流業界の課題と解決策(出典:東芝デジタルソリューションズのプレスリリースより) イメージ
(図表1)東芝デジタルソリューションズが提案する物流業界の課題と解決策(出典:東芝デジタルソリューションズのプレスリリースより)

セブンーイレブン向け納品データ電子化の実証実験を開始

日常生活に欠かせない食品・日用品の消費財サプライチェーンでも、物流のデジタル化が遅れている。物流のベースとなる納品伝票については、卸・小売間(物流センター・店舗間)では電子データの活用が進んでいるものの、メーカー・卸間(メーカー拠点・物流センター間)では、いまだに紙の伝票による検品・押印が行われているという。大手小売業の専用物流センター(共同配送センター)でもこのような状況は同様で、メーカーから物流センターへの納品伝票がデジタル化できていないことが、物流効率化の阻害要因となっている。

流通経済研究所は2024年2月5日、経済産業省の「流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(消費財サプライチェーンにおける商流・物流オペレーション標準化検討)」として、メーカーや卸売業の協力のもと、セブンーイレブン店舗向け共同配送センターへの納品データ電子化の実証実験を実施すると発表した。

実験では、菓子・日用品・酒類・加工食品のメーカー(または委託先物流事業者)がセブン-イレブン共同配送センターに納品する商品の納品データを作成し、電子データ交換プラットフォームもしくは情報サービス事業者経由でSIP基盤(内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)」で採択された、さまざまな分野のデータを連携させるインフラ)と連携。SIP基盤はデータを物流情報標準形式に変換して、共同配送センター側とデータ連携する。共同配送センター側では、商品到着前に納品データと発注データを照合するとともに、入荷検品時に現場で納品データを参照して確定登録を行う。

(図2)実証実験における納品データの連携フロー(出典:流通経済研究所のプレスリリースより) イメージ
(図2)実証実験における納品データの連携フロー(出典:流通経済研究所のプレスリリースより)

キヤノンがRFIDを活用した位置情報ソリューションを提供

物流DXのリアルタイムモニタリングを支えるテクノロジーの1つが、電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術RFIDだ。キヤノンは2023年から実証を進めてきた「Canon RFID 位置情報ソリューション」の販売を2024年1月から開始した。同ソリューションは、物流倉庫などの現場に存在する人やものの位置情報を広範囲に把握・分析することで、人やものの適切な配置や適正管理を可能にする。

人やものに取り付けたRFIDタグの情報はRFIDリーダーが自動的に読み取り、位置をマッピングする。商品などに貼り付けられたタグを1枚ずつ読み取るバーコードや2次元コードなどによる管理とは異なり、RFIDリーダーは複数のタグ情報を一気に読み取ることができ、意図的な読み取り作業をすることなく、物流倉庫内の人やものの位置情報を把握することができる。

新規に開発された標準Webアプリは、RFIDタグを付けた人やもののマップ上でのおおよその所在位置や所在階などの情報を把握。顧客の要望に応じてAPI経由で位置情報データを取得し、連携するアプリに移動履歴や滞在時間などを表示させることも可能にした。また、RFIDタグが複数の会社や拠点にまたがって移動した場合でも対応できるプラットフォームを構築し、人流や物流の把握をサポートするという。

(図3)「Canon RFID 位置情報ソリューション」の概要(出所:キヤノンのプレスリリースより) イメージ
(図3)「Canon RFID 位置情報ソリューション」の概要(出所:キヤノンのプレスリリースより)

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