観光DXの先進モデル事業を観光庁が公表 福井県は3年連続で採択
観光庁は5月21日、2024年度の「観光DXによる地域経済活性化に関する先進的な観光地の創出に向けた実証事業」における採択事業を公表した。
6つの実証事業が採択
観光庁では、観光DXの推進を通じて、旅行者の消費拡大、再来訪促進、観光産業の収益・生産性向上等を図り、地域活性化や持続可能な経済社会の実現を目指した取り組みを行っている。そのような中、「観光DXによる地域経済活性化に関する先進的な観光地の創出に向けた実証事業」において、観光地として、旅行者の利便性向上・周遊促進、観光産業の生産性向上、観光地経営の高度化、観光デジタル人材の育成・活用に一体的に取り組み、旅行者の体験価値を抜本的に向上させ、稼げる地域の実現につながる先進モデルの創出のためのモデル実証事業を採択した。
採択されたのは、「北陸インバウンド観光DX推進事業」(富山県、石川県、福井県)、「『蹴球都市』藤枝のDXによる生産性向上事業」(静岡県藤枝市)、「『奈良観光DXPF』による周遊及び地域経済循環促進事業」(奈良県)、「広島県観光DX推進事業」(広島県)、「わくわく観光プロジェクト~九州DXアイランド構想~」(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県)、「雲仙市観光全域データオープン化活用事業」(長崎県雲仙市)の6事業だ。
オープンデータによる観光実態の「見える化」
「北陸インバウンド観光DX推進事業」では、多様なデータを収集・オープンデータ化することで、広域での周遊促進による消費拡大や観光地経営の高度化等に取り組むものだ。とくにデータ活用に積極的なのは福井県だ。
福井県は、2022年度の「観光データ連携機能構築による観光事業者の収益向上に向けた実証事業」、2023年度の「観光実態把握とマーケティングモデルケース造成事業」に続き、3年連続で採択されたことになる。
同県では、オープンデータによる観光実態の「見える化」を推進している。福井県観光連盟では、2022年3月から福井県観光データ分析システム「FTAS(FUKUI Tourism data Analyzing System)」(略称:エフタス)の提供を開始。 FTASで提供する「ふくいドットコム」アクセスデータは、Googleアナリティクスのアクセスデータを公開するもので、どのエリアから、どのようなキーワード検索で、どのようなページが閲覧されているかを把握することができ、先々の観光見込み客の興味関心を知ることができる。

(図1)福井県のデータ活用による「稼ぐ観光」の展開イメージ(出典:福井県観光DX推進コンソーシアム)
また、auスマートフォンから得られるGPSの位置情報を基に、17市町各観光施設等35箇所の観光客数とその属性(来訪者の性別・年代・居住地)をグラフ化しながら提供。さらに、アンケートで得られた内容を個人が特定できない形でデータベース化し、県内観光地の観光客の属性や満足度、観光消費金額等が把握できる。

(図2)データ活用に向けたシステム構築イメージ(出典:福井県観光DX推進コンソーシアム)
そのほか、福井県で開催されるイベント「RENEW」(リニュー)を活用し、観光関連データの収集・解析を行った。毎年、鯖江市・越前市・越前町で工房見学イベント「RENEW」が開催される。これは、越前漆器・越前和紙・越前打刃物(うちはもの)・越前箪笥(たんす)・越前焼・眼鏡・繊維といった工房を開放し、見学やワークショップを通じて作り手の想いやその背景を伝える。
福井県観光DX推進コンソーシアムでは、例年2~3万人規模の集客実績があるこの「RENEW」を実証実験の場に、観光商品開発に活かすデータ収集を行った。
物販や工房体験などの支払いに利用できるプレミアム付きデジタル商品券「RENEWPay(リニューペイ)」で、ユーザーがどこでいくら消費したか、地域内をどう移動したかなど、これまで得られなかったデータを集めた。

(図3)RENEWPayのデータ分析(出典:福井県観光DX推進コンソーシアム)
見学者が訪れる各工房には、AIカメラを設置。イベント対象スポットのリアルタイムな集客数やニーズの解析を図った。福井県観光DX推進マーケティングデータコンソーシアムでは、これら観光DXに向けたデータ活用を推進し、より正確でより多くのデータによる観光の実態把握、宿泊客数等の定量的なデータのリアルタイム把握、FTASも活用しながらデータドリブンにマーケティングしていく観光人材の育成を目指している。
2024年度の「北陸インバウンド観光DX推進事業」では、富山県、石川県も加わっていることから、事業者間・地域間のデータ連携強化により、広域で収益を最大化することで、地域活性化・持続可能な経済社会を実現していくことがポイントになる。
2024年度のその他採択事業
「北陸インバウンド観光DX推進事業」以外の採択事業は次のとおりだ。
「藤枝ICTコンソーシアム」による「蹴球都市」藤枝のDXによる生産性向上事業は、 シームレスな地域サイトの構築による消費拡大や生成AIを活用した観光産業の生産性向上等に取り組むもの。
「奈良観光DXPF」による周遊及び地域経済循環促進事業は、奈良県の宿泊・体験事業者等の予約・決済の完結による旅行者の利便性向上・周遊促進や金融機関と事業者の連携による観光産業の生産性向上等に取り組むものだ。
「広島県観光DX推進協議会」による広島県観光DX推進事業は、体験・アクティビティ事業者や観光施設の予約・決済の完結を通じた、旅行者の利便性向上・周遊促進や広域でのマーケティング等に取り組む。
「九州観光DXコンソーシアム」による「わくわく観光プロジェクト~九州DXアイランド構想~」は、観光アプリや生成AI等を活用した旅行者の利便性向上・周遊促進やデータを活用したマーケティング等による観光地経営の高度化等に取り組む。
そして、「雲仙市観光データオープン協議会」による雲仙市観光全域データオープン化活用事業では、シームレスな地域サイトによる消費拡大、宿泊事業者によるレベニューマネジメント、蓄積されるデータを活用した観光地経営の高度化等に取り組むという。
これら6つの実証事業は、2025年1月末を目途に、観光地・観光産業全体の収益最大化・最適化への転換を図るための先進モデルを構築し、稼げる地域の実現を目指していく。
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