人材不足の建築業界を効率化する注目のテック企業

2024年8月5日

建築業界は運輸業界同様、人材不足や長時間労働が課題となっており、2024年問題でもクローズアップされた。そのため、ITや建築テックを活用した業務の効率化や自動化が必要になっている。そんな中で期待されるのが、独自技術を持ったスタートアップだ。ここでは、期待されるいくつかの技術を紹介する。

鉄筋の結束作業を自動化する「トモロボ」

人の代わりに鉄筋結束作業を行う「トモロボ」を提供しているのは、建ロボテックだ。トモロボは、土間・スラブなどの鉄筋交点の結束を自動で行う。市販の手持ち電動工具をセットするだけで、鉄筋工事における単純作業である結束作業を自動化できる。

(図1)「トモロボ」(出典:建ロボテック) イメージ
(図1)「トモロボ」(出典:建ロボテック)

建築工事が主となる細径(φ10~16㎜)の鉄筋結束に対応したタイプに加え、土木工事やインフラ工事に使用される太径(φ16~29㎜)に対応した「太径鉄筋結束トモロボ」の2タイプを提供。結束スピードは、8時間稼働の場合10,400ヵ所を結束することができるという。

また、同社はNTT西日本とともに遠隔操作・オペレーション支援環境構築に向けた実証実験を行っている。ロボットに搭載されたカメラ映像を見ながら、ロボットを遠隔操作。建設未経験者によるロボット操作で、現場技術者の鉄筋結束作業の約8割をロボットに置き換えることに成功している。

さらに同社は、内装工事の天井施工作業時の負担を減らす「天井ボード楊重(ようじゅう)装置」を開発し、2024年夏に市販化を目指している。

一般住宅やマンション・アパートの天井施工作業では、天井の下地となる石膏ボード等(以下、天井ボード)を貼る作業を行うが、従来の天井ボードの貼り付けは、人が脚立を使って20㎏以上あるボードを手や体で押さえつけながら固定する必要があった。「天井ボード楊重装置」は、天井ボードの取り付け作業を1人で行うことを可能にし、作業の省力化・負担を減らすことが期待できるという。

(図2)「天井ボード楊重装置」(出典:建ロボテック) イメージ
(図2)「天井ボード楊重装置」(出典:建ロボテック)

ドローンを使って高所作業を効率化

アイ・ロボティクスでは、マイクロ・ドローンを用いた狭隘(きょうあい)部・高所調査点検ソリューションを提供している。

このソリューションに使用されるマイクロ・ドローンはレースやホビー用をベースに、目的に合わせてカスタマイズされた小型の産業用機体。ヘッドマウントディスプレーなどを介して、操縦者が自ら搭乗飛行する感覚で撮影と点検を行うことができる。

(図3)マイクロ・ドローンを用いた狭隘部・高所調査点検ソリューションで利用されるマイクロ・ドローン(出典:アイ・ロボティクス) イメージ
(図3)マイクロ・ドローンを用いた狭隘部・高所調査点検ソリューションで利用されるマイクロ・ドローン(出典:アイ・ロボティクス)

また、アイ・ロボティクス、日本製鉄、日鉄テックスエンジの3社は、「ドローン壁面補修ソリューション」を開発している。

壁面近くでの高精度なドローンの制御は困難なため、従来の人力作業を代替できるような壁面塗装補修用ドローンは実運用化されていなかった。3社は実運用化を進める上での課題を抽出し、解決方法を踏まえた新しい工法の実証実験を行うことで、ドローンを用いた壁面塗装補修を可能とする位置精度を確保した。そして、ドローンへの塗装機の据え付け及び資材補給方案、塗料飛散養生対策等に関する実用性を確認した。

(図4)ドローン壁面補修の構成要素(出典:アイ・ロボティクス) イメージ
(図4)ドローン壁面補修の構成要素(出典:アイ・ロボティクス)

ENEOSとアイ・ロボティクスは、この技術を利用し、共同でドローンを利用した石油タンクの塗装を行い、石油タンクにおける実用性を確認している。上空に静止させたドローンから電動ウインチで外壁吸着ロボットを吊り上げ、外壁吸着ロボットに特殊なデバイスを搭載して高圧洗浄や塗装を行っている。ドローンの挙動と電動ウインチの巻き上げスピード、吹付スピードや塗料の粘度等のすり合わせ技術により精密制御しているという。

(図5)ドローンタンク補修が自動で行われているイメージ図(出典:アイ・ロボティクス) イメージ
(図5)ドローンタンク補修が自動で行われているイメージ図(出典:アイ・ロボティクス)

建築現場を数分歩くだけで360度現場ビューを作成

建設施工管理サービス「zenshot」を提供するのは、SoftRoidだ。このサービスは、カメラを持って建築現場を数分歩くだけで画像処理AIが360度現場ビューを自動で作成するクラウド型サービス。クラウドにアップロードされた360度動画像をもとに、AI/画像処理技術で撮影ルートを分析し、図面と整合。ユーザーは、図面に自動配置されたポイントをクリックするだけで現場各所の360度画像を見ることができ、遠隔確認や隠蔽部を含めた網羅的な現場記録を可能にする。

(図6)「zenshot」の概要(出典:SoftRoid) イメージ
(図6)「zenshot」の概要(出典:SoftRoid)

「zenshot」はリモートで現場を確認できるため、現場監督の工数削減ができるほか、何度も現場を確認できるので、品質向上に役立つという。

(図7)作成された360度現場ビュー。右上の図面のポイントをクリックすると現場の360度画像が見られる。(出典:SoftRoid) イメージ
(図7)作成された360度現場ビュー。右上の図面のポイントをクリックすると現場の360度画像が見られる。(出典:SoftRoid)

建設プロジェクト管理のオールインワンソリューション

クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供するのはアンドパッドだ。

ANDPADは、プロジェクトのスケジュール管理、進捗状況の把握、タスクの割り当てなどを一元管理できる機能を提供。契約書や図面などの重要書類をクラウド上で管理し、必要なときにいつでもアクセスできる書類管理機能を備えている。また、写真やドキュメント共有による現場の進捗状況をリアルタイムで確認することや、チャット機能や掲示板機能を通じたコミュニケーション機能も有している。プロジェクトにかかるコストを追跡し、予算の超過を防ぐためのツールも提供。さらに、APIを公開しており、顧客管理・経理/会計・遠隔臨場等様々な他企業民間サービスと連携できる。

(図8)「ANDPAD」(出典:アンドパッド) イメージ
(図8)「ANDPAD」(出典:アンドパッド)

なお、ANDPADは、経済産業省主催の「日本スタートアップ大賞2023」において、国土交通スタートアップ賞(国土交通大臣賞)を受賞している。

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