利用が拡大するスタートアップのEdTech(エドテック)ツール

2024年11月5日

GIGAスクール構想により、2020年にかけて、小学校から高等学校まで、1人1台端末が整備され、小学校段階におけるプログラミング教育も開始された。そして、端末を計画的に更新するとともに予備機の整備を行うGIGAスクール構想第2期に向け、各社からソリューション提供も開始されている。そんな中、EdTech(エドテック)を活用したスタートアップのツールが注目され、利用が広がっている。

135万人が利用するプログラミング教材

プログラミング学習用のEdTech教材「Life is Tech! Lesson(ライフイズテック レッスン)」を提供するのは、ライフイズテック株式会社(東京都港区)だ。2010年に創業した同社は、中高生向けIT・プログラミング教育キャンプ/スクール/イベントの企画・運営やオンラインプログラミング・情報教育サービスの開発・運営を手掛ける。

「Life is Tech! Lesson」は、GIGAスクール構想で整備された一人一台端末を活用しながら、WebサイトやAIレジなどを実際に作りながらプログラミングを学ぶ教材だ。ライフイズテック レッスンは、一人ひとりの理解度に応じたプロミングの学びを提供する。

Life is Tech! Lessonの画面(出典:ライフイズテック株式会社) イメージ
Life is Tech! Lessonの画面(出典:ライフイズテック株式会社)

現在、中学校でのプログラミング学習領域の拡大や、高校での共通必履修科目「情報Ⅰ」新設、2025年からの大学入学共通テストに「情報」が新設されることなどを受け、情報・プログラミング分野における学習環境と指導体制の充実が求められている。そのため同社は、学習順や内容を「情報Ⅰ」の教科書全12冊分に個別対応させリニューアルしている。

東京都港区が区内の中学校10校、生徒数約2,280名の指導教材の一環として採用するなど、同社によれば、2024年8月時点で、600自治体、4,400校の公立・私立学校に導入され、現在約135万人の中学・高校生に利用されているという。

また同社は、2024年8月15日、行政業務の効率化・高度化を目的に、相模原市と生成AIの活用促進に関する連携協定を締結した。

相模原市とライフイズテックの協定締結式の様子(出典:ライフイズテック) イメージ
相模原市とライフイズテックの協定締結式の様子(出典:ライフイズテック)

相模原市では、市民サービス向上と行政業務の効率化・高度化を目的に、自治体業務における生成AI活用に向けた検証を行うなど、市を挙げてDX推進やAI活用に取り組んでいる。

連携協定において両者は、生成AI活用における意識変革や実践力向上を目的とした職員向け生成AI研修の実施、活用支援ノウハウの提供を行う。加えて、職員研修で得られた知見を活かし、市民全体へのデジタル教育に関する協議も行うという。

オンライン動画学習サービスをリスキリングに活用

自治体との連携という面では、社会人向けオンライン動画学習サービス「Schoo(スクー)」を提供する株式会社Schooは、全国約56の地方自治体との連携施策を通じてリスキリングの普及に取り組んでいる。2024年の8月には、鹿児島県日置市と新たに連携協定を締結した。

スクーと日置市は地域企業と共に、「地域に暮らす人々が持続的にリスキリング機会を得られるモデル」を新たに開発することを目指し、今後、実証実験等を行っていくという。

日置市の現状や課題に合わせたプログラムをオンラインや対面を組み合わせて届ける仕組みを作り、その学習者が地域に貢献する循環型の学びのサイクルを目指す。

具体的には、Excelを使用した日々の業務改善スキルを1カ月間で身に着けるリスキリング講座を実施し、日置市役所職員と日置市に事業所を置く複数企業の従業員が、オンライン・対面のハイブリッド形式で受講する。今後、実証実験で得られた知見をもとに、日置市の企業や市民全員が参加できるモデルを構築していく予定だという。

日置市とスクーとの協定の概要(出典:株式会社Schoo) イメージ
日置市とスクーとの協定の概要(出典:株式会社Schoo)

260万人が利用する授業支援クラウド

GIGAスクール構想の中で新たな文房具として利用が広がっているのは、株式会社LoiLo(横浜市)が提供するロイロノート・スクールだ。同ツールは、国内外約1万3000校に導入され、2024年6月には1日の利用者数が260万人を突破した。

ロイロノート・スクールでは、ペン/スタイラス/手書き対応の授業支援クラウド、動画、写真、音声、PDF編集ができるデジタルノート、協働学習向けのデジタルホワイトボード、生徒や教員間での解答の共有、資料配布や課題管理、Webフィルタリング、自動採点テスト機能などを提供する。今年の8月には、複数人が同時にノートを編集できる共同編集機能「共有ノート」もリリースした。グループでの調べ学習や話し合い活動などに役立つという。

ロイロノート・スクールの共有画面(出典:株式会社LoiLo) イメージ
ロイロノート・スクールの共有画面(出典:株式会社LoiLo)

AIを活用して理解度に応じて、個人ごとのカリキュラムを作成

atama plus株式会社(東京都文京区)は、2017年4月に設立された、比較的新しい会社だ。同社は、AIを活用したラーニングシステムAI教材「atama+」を提供する。2024年3月現在で全国の塾・予備校4,000教室以上で利用されている。

「atama+」の画面(出典:atama plus株式会社) イメージ
「atama+」の画面(出典:atama plus株式会社)

同ツールは、理解度に応じて、個人ごとのカリキュラムを作成し、弱点やミスの傾向などをAIが解析する。また、「今、何をどのくらい理解できているか」「定期テストや受験など、目標に向けてどのくらい進んでいるか」「目標達成までに、あと何時間くらい必要か」などをデータで見える化する。

さらに同社は、2024年4月から駿河台学園と提携し、「マンツーマンAI×担任サポート制」の学習塾「atama+ オンライン塾」の本格展開を開始した。

「atama+ オンライン塾」は、「マンツーマンAI×担任サポート制」の学習塾で、AI教材「atama+」による個別最適な学習と、担任スタディトレーナーによるデータに基づいた計画立案で、自宅での学習継続をサポートする。自宅のほか、通学電車や学校の休み時間、部活前の隙間時間など、好きな時に学べる定額制で、勉強と部活を両立したい中高生に多様な学習スタイルを提供する。

そのほか、今年の8月には、立命館と今治明徳学園FC今治高等学校里山校は、「探究学習と大学の学びとの接続に関わる共同研究会」の設立を発表した。これは、大学の高度な専門性とEdTech企業の最先端技術で、高校での探究学習を大学へつなぐ新たな高大連携プログラムを開発するものだ。研究会はatama plusやInspire High(東京都千代田区に拠点を置くEdTechスタートアップ企業)の協力を得ながら学習歴のマーケットおよび探究学習の実態を把握し、AI教材「UNITE Program」も活用しながら入試企画の開発を目指す。

UNITE Programは、立命館がatama plusとの共同研究において開発した、志望する各学部での学びをより充実させるために特に重要な基礎学力を指定単元として設定し、AIを活用した学習教材で修得できるプログラムである。

共同研究においては、UNITE Programをさらに発展させる形で、高校時代の探究学習で芽生えた問題意識や課題解決への意欲を、大学入試を経ても継続させ、卒業後は実際の社会活動にコミットしていくことを後押しする、新しい高大連携プログラムの構築およびプログラム連動入試の開発を目指すという。

共同研究の概要(出典:立命館大学) イメージ
共同研究の概要(出典:立命館大学)

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