最新のEMS技術を活用した国内の再生可能エネルギーソリューション
再生可能エネルギーの導入が急速に進む一方で、発電量が不安定な再生可能エネルギーの電気を安定的かつ最大限に活用するうえでは、電気を一時的に溜めておける蓄電池の設置が欠かせない。そうした設備は、災害時のエネルギー供給源としての期待も高く、今後さらなる普及が見込まれている。特に最近では、太陽光発電と蓄電池の連携を制御するEMS(電力管理システム)に、AIやクラウドの技術を取り込んだシステムの活用が進んでいるようだ。
市場価格の相場に合わせて自動的に充電・放電を行う電力管理システム
大崎電気工業は2024年11月18日、ドイツで蓄電池の制御ソリューションを展開するbe.storaged GmbHと、太陽光発電や蓄電池、AI制御を組み合わせた、新たなエネルギーソリューションを共同開発すると発表した。大崎電気のAI制御端末「Aiel Master」にbe.storagedの技術を組み込むことで、顧客のCO2排出量と電気料金の削減に貢献するソリューションの実現を目指す。
大崎電気では2003年から 空調や照明など設備別の電力使用量を見える化し、必要に応じて設備を自動制御しながらエネルギーの使用を最適化するEMSを提供している。2019年から提供を開始した「Aiel Master」は、AI端末が過去の使用量や気象情報に基づいて電力使用状況を予測し、より効果的にエネルギー使用量を削減できるAI拡張型EMSだ。
今回の共同開発で「Aiel Master」にドイツbe.storaged社の制御技術が組み込まれると、電力市場におけるスポット価格の動向に応じて、新たに蓄電池が制御できるようになる。これによって、市場価格が安い時に自動で充電し、高い時に放電するといった制御も行えるようになるため、店舗や事業所で発電した再生可能エネルギーを最大限に活用し、CO2排出量と電気料金の削減にも期待できるという。

(図1)大崎電気工業が提供する新たなエネルギーソリューション(出典:大崎電気工業のプレスリリースより引用)
太陽光発電や蓄電池にEVがつながる電力管理システム
シャープが2024年3月から発売を開始した「Eeeコネクト」は、太陽光発電と蓄電池にEV(電気自動車)を加えた三連携制御によって、家庭内の充放電を一括制御するシステムだ。太陽光で発電したクリーンな電気を直流(DC)のままEVに充電するため、発電した電気を効率良く自家消費するほか、太陽光由来の電気をEV走行に活用できる。
「Eeeコネクト」では、エネルギー機器を自動で制御するクラウドHEMS(家庭用電力管理システム)サービス「COCORO ENERGY」によって、台風などの気象警報とも連動できる。これにより停電に備えて、従来の蓄電池に加え、EVにも電気を充電できるように制御される。また、「COCORO ENERGY」は指定時間にEV接続操作がされていない場合は、スマートフォンに通知を送るなどして利用者の充電忘れを防止する。
その他にも、万が一自宅が停電した場合には、停電していない地域でEVを充電し、帰宅後にEVから自宅に放電しながら蓄電池にも充電できるため、災害への備えとしても有効活用できるという。

(図2)太陽光発電や蓄電池、家電、EVがつながる「Eeeコネクト」システム(出典:シャープのプレスリリースより引用)
国内のサプライチェーンにも再生可能エネルギー電力を送る実証実験
製造業では、サプライチェーンに対しても使用電力の100%再生可能エネルギー化やCO2削減を求める動きが高まっている。将来は工場など、「拠点単位」での脱炭素化目標の達成が、事業を継続するうえで重要になると見られる。こうした動きを受け、三菱電機は再生可能エネルギー電力の複数拠点間での送電や、蓄電システムの最適な運用に関わる社内実証を、2024年3月から2年間の予定で行っている。
今回の実験では、拠点ごとの脱炭素化目標の達成を支援するクラウド型の「マルチリージョンEMS」を利用して、四国、関西、中国の3エリアにある電力拠点を接続する。接続されるのは、四国電力エリアにある受配電システム製作所(香川県丸亀市)、関西電力エリアにある系統変電システム製作所赤穂工場(兵庫県赤穂市)、電力システム製作所(兵庫県神戸市)、および中国電力エリアにある福山製作所(広島県福山市)の4拠点となる。
これらの拠点をリアルタイムに連携させ、デジタルツイン上で「マルチリージョンEMS」の社内実証を行う。実証では、拠点ごとに再生可能エネルギーの導入量や目標率を設定。電力エリアが異なる拠点間での、送電に必要な技術(再エネ予測、需給計画、電力取引、蓄電システム運用)の性能評価が行われる。
また、受配電システム製作所には太陽光発電設備や蓄電設備を増設し、赤穂工場との間で実設備を用いたエリア間の再エネ送電運用業務の検証を通じて、運用実績を蓄積していく。合わせて、実運用での課題に対するさらなるソリューション拡張に向けた技術・機能の高度化を図るという。

(図3)三菱電機の社内実証拠点と「マルチリージョンEMS」のシステム構成(出典:三菱電機のプレスリリースより引用)
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