カーボンニュートラル実現に向けた、新エネルギー利用最新事例

2025年6月23日

日本政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの活用や、新たなエネルギー技術の開発と実用化が進んでいる。ここでは、そのような新エネルギー関連の開発と実用化に関する最新ニュースを紹介する。

液化アンモニアの商用サイズでの実液試験に成功

酉島(トリシマ)製作所は5月20日、新たに開発した商用サイズのアンモニアポンプを用いて、実際の液化アンモニアを使用した運転試験を行い、想定通りの性能を確認できたと発表した。試験で確認された流量は4万トン規模のタンクでのアンモニア払出量に相当するという。

(写真)実際の液化アンモニアを使用した運転施設(出典:酉島製作所) イメージ
(写真)実際の液化アンモニアを使用した運転施設(出典:酉島製作所)

アンモニアは、燃焼時にCO₂を排出しないという特性を持ち、次世代のクリーン燃料として注目されている。

経済産業省は燃料アンモニアについて、火力混焼用の発電用バーナーに関する技術開発を進め、2030年までに、石炭火力への20%混焼の導入・普及、2050年までに、混焼率の向上(50%)や専焼化技術の実用化を目指している。

アンモニアを本格的に燃料として使用するためには、燃料供給設備の大容量化・大流量化が必要な一方、毒性が強いため、大容量化・大流量化に伴い取り扱い設備にはより高い安全性が求められるという。

酉島製作所では、使用中だけではなく、メンテナンス時におけるアンモニアの拡散も最小限に抑えられるよう没液型インタンクポンプを開発。今回の実液試験により、ポンプシステムの性能と安全性が実環境において確認され、大規模な燃料アンモニア供給に対応可能な技術であることを実証した。

今後同社は、この技術を核として、国内外の燃料アンモニア関連プロジェクトへの提案活動を積極的に展開していくという。

フィルム型カルコパイライト太陽電池を用いた発電実証実験を開始

日揮ホールディングスは5月15日、日揮とPXPが、横浜市内の施設屋根において、薄膜太陽電池の一種であるフィルム型カルコパイライト太陽電池を用いた大面積発電モジュールの実証実験を開始したと発表した。この実証により薄膜太陽電池における施工性や耐久性を確認するという。

(写真)屋根上に水平方向に並べて設置した大面積モジュール(出典:日揮ホールディングス) イメージ
(写真)屋根上に水平方向に並べて設置した大面積モジュール(出典:日揮ホールディングス)

日揮が開発した産業関連施設の屋根向け施工方式「シート工法」では、遮熱シートに薄膜太陽電池を載せたものを発電モジュールとして一体化し、グリッパーと呼ぶスリットのある筒状の金具で屋根に固定。これにより、薄膜太陽電池の軽く、薄く、曲がるという特徴を損ねず、着脱可能な状態で取り付けることが可能だという。

日揮とPXPは、2025年4月から1年間を目安に、カルコパイライト太陽電池単体を使用した大面積モジュールによるキロワット規模の発電実証を横浜市内の日揮グループ所有施設内で開始した。実証で使用する発電モジュールは、あらかじめ電気的に接続した複数の薄膜太陽電池を基材シート上に並べて10㎡という大面積を実現したもので、日揮によれば、このような手法で薄膜太陽電池の大面積化を試みた実証は国内初だという。

大面積モジュールは、工場や倉庫等の折板屋根を模した屋外環境にシート工法で施工した。今回の大面積モジュールでは面積あたり約2kgと軽量な上、配線を削減したことで設置作業・配線作業の能率化・効率化を実現し、作業員一人当たり一日に換算して100㎡の施工ができることを確認したという。

実証では、薄膜太陽電池の大面積化におけるシート工法の適用可能性、PXPの薄膜太陽電池が持つ、振動や衝撃に強い特性の有効性を確認し、発電量や耐久性といったデータをシート工法および薄膜太陽電池の開発にフィードバックすることで、次世代太陽電池の早期社会実装を目指す。

バージ型浮体式洋上風力発電所の実証施設が商用運転に移行

SMFLみらいパートナーズ、グローカル、合人社グループ、コトブキ技研工業、中国電力、リニューアブル・ジャパンの6社は、4月22日 、「ひびき灘沖浮体式洋上風力発電所(福岡県北九州市響灘沖、3,000kW×1基)」の商用運転を開始した。浮体式洋上風力発電所の商用化は国内で2基目、鋼製バージ型浮体としては国内初だという。

「響灘沖に浮かぶバージ型浮体式洋上風力発電所」(出典:ひびきフローティングウィンドパワー) イメージ
「響灘沖に浮かぶバージ型浮体式洋上風力発電所」(出典:ひびきフローティングウィンドパワー)

この発電所は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究」として、水深50m-100mの海域での運用を想定し、2019年5月から実証運転を開始。低コストかつ日本の気象・海象条件に適合した堅牢な浮体式洋上風力発電システムの技術確立が期待されている。

今後は発電所の運営を通じて知見や実績を蓄積し、今後需要拡大が見込まれる再生可能エネルギー主力電源化の切り札とも言われる浮体式洋上風力発電の先駆者として、技術革新と普及拡大を推進していくという。

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