再生可能エネルギー業界の動向と注目技術4選
世界的な環境問題への関心の高まりや、国際的な脱炭素化の流れの中で、政府は再生可能エネルギーの導入拡大を推進しています。政策の後押しや技術革新が追い風となり、電力供給の在り方が大きく変わりつつある再生可能エネルギー市場の動向を整理して解説します。
世界と日本の再生可能エネルギー市場規模
世界の再生可能エネルギー市場は、エネルギー需要の高まりとクリーンエネルギー技術の普及拡大により、2025年にかけて急速に成長すると見込まれています。市場規模は、2024年から2029年の間にCAGR(年平均成長率) 9.6%で2兆2662億米ドル増加すると予測されており、中国、アメリカ、EUといった主要国が市場をけん引し、発電容量の増加や設備投資が加速しています。特に太陽光発電や風力発電を中心に導入が拡大し、IEA(国際エネルギー機関)の予測では発電容量が現在の2倍に達するとされています。
2025年7月に発表された株式会社富士経済の調査結果によると、日本の再生可能エネルギー市場は、太陽光と洋上風力がけん引し、2040年度には2兆9,070億円にまで拡大すると予測されています。

再生可能エネルギー市場の成長を支える技術と最新NEWS
2025年の再生可能エネルギー市場を支える最新技術として、従来のシリコン系太陽電池を超える性能が期待されるペロブスカイト太陽電池やバイオマス発電、地熱発電、洋上風力発電といった地域資源を活用する技術が注目されています。
【ペロブスカイト太陽電池】
ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた軽量で高効率な次世代太陽電池です。その高い発電効率は従来のシリコン系太陽電池や化合物系太陽電池にも匹敵すると言われており、軽量かつ柔軟性が高く、建物の壁面や車両への搭載など、用途の広がりが期待されています。国内研究者が開発した日本発の技術です。
2025年の大阪・関西万博では、西ゲート交通ターミナルのバス停にある曲線状の屋根に、フィルム型のペロブスカイト太陽電池が張り付けられており、ここで発電された電気は蓄電池に蓄えられ、バス停の夜間照明に使用されています。また、会場内の一部スタッフが着用しているスマートウェアは、背中にペロブスカイト太陽電池が貼り付けられており、発電された電気はポータブルバッテリーに充電され、首にかけるファンを動かすためなどに使用されています。

出典:「月刊日本館」公式ホームページ
【バイオマス発電】
バイオマス発電とは、動植物から生まれた生物資源を燃やすことで発電する方法で、大きく分けて廃棄系バイオマス、未利用バイオマス、資源作物の3つに分けられます。
2025年8月、株式会社日本海水は、塩を生産する讃岐工場(香川県坂出市)において、既存の石炭火力発電所を木質バイオマス発電所へと転換する計画を進めていることを発表しました。2026年度に着工し、2028年度の運転開始を予定しています。2035年度には赤穂工場における脱炭素化の施策により、国内製塩メーカーとして初となるカーボンニュートラルの実現が可能になる見通しです。
【地熱発電】
地表から深さ数キロメートル以内にある熱エネルギーを使って発電する方法が地熱発電です。地中深くに存在するマグマの熱源から発生する蒸気を利用し、タービンを回して発電します。
近年、地熱発電は、カナダのスタートアップ企業エバー社が開発した「クローズドループ地熱利用技術」により注目が高まっています。クローズドループ工法は、高温の地層にパイプを網目状に巡らせた上で、水を循環させ、発生した蒸気でタービンを回すしくみです。 地下に高温・高圧の貯留層がなくても発電できるため、これまで地熱発電を実施できなかった幅広いエリアでの開発が可能となります。現在の試算では、地下3,000メートルまでの深さに限定した場合でも、世界全体の消費電力の半分に達するとみられており、日本では、原発80基分の電力を生み出せるとされています。実現すれば、地熱発電が主力電源の座に躍り出る可能性があるでしょう。

出典:Eavor Technologies社ホームページ
【洋上風力発電】
洋上風力発電は海に風力発電所を設置し、風でブレードを動かす力を電気エネルギーに変換させて、電気を生み出す発電方法です。国は、2040年までに3,000万kW~4,500万kWの案件形成という目標を掲げています。
2025年8月、三菱商事は、秋田県と千葉県の3海域で計画していた着床式洋上風力発電事業から撤退すると発表しました。資材価格高騰などの影響があり、建設費用が入札時の想定の2倍以上に膨らみ、採算を確保することが難しくなったとしています。三菱商事は、サプライチェーンのひっ迫、インフレ、為替、金利上昇など洋上風力業界を取り巻く環境が世界的に大きく変化しているとし、事業性を再評価していると2025年2月に発表しました。
改正建築物省エネ法と再生可能エネルギー
2024年4月施行の建築物省エネ法改正では、目的規定及び基本方針規定に、「建築物への再生可能エネルギー利用設備の設置の促進」を図るという内容が追加されました。また、2025年4月から施行されている改正建築物省エネ法により、日本のすべての建築物に対してエネルギー性能の基準適合が義務化されました。今回の法改正で、従来の制度では対象外であった戸建て住宅や小規模な非住宅建築物も適合義務の対象になりました。
建築物省エネ法改正の主な背景として、パリ協定に基づく温室効果ガス排出削減目標があります。2015年12月に採択したパリ協定に基づき、日本政府は「2030年度までに温室効果ガス46%削減(2013年度比)」という目標を掲げています。削減目標達成のための地球温暖化対策計画原案では、新築住宅・建築物におけるエネルギー消費削減量は全体の12.8%を占めるなど、その役割は非常に大きく、建築物の省エネ化は、2050年のカーボンニュートラル実現のためにも、目標達成に不可欠です。
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