AIエージェントから共同利用まで広がるAIによる行政業務改革
目次
自治体では、人口減少と職員不足が限界に達し、従来の行政運営が維持できなくなってきています。そのような中で、生成AIの進化と国の標準化政策が整い、自治体DXが一気に現実解として広がりをみせています。住民のデジタル期待も高まり、行政効率化だけでなく地域経済や住民サービス向上のためにも、DXが必須の取り組みとして位置づけられています。その取り組みを見ていきましょう。
大阪市と日立がAIエージェントで通勤届業務を最大40%効率化
2026年3月、大阪市と株式会社日立製作所は、AIエージェントを活用して自治体業務の効率化と住民サービス向上を図る実証プロジェクトの結果を発表しました。
今回の実証は、大阪市が推進する「大阪市DX戦略アクションプラン」の取り組みの一環として行われたもので、AIエージェントが業務フローに組み込まれ、単なる文章生成ではなく「作業支援」を行う点が特徴です。
対象は大阪市総務局が扱う通勤届の申請・審査・払戻計算業務で、実証期間は2025年9月から2026年3月、年間約1万件、特に4月は5,000件が集中する、極めて負荷の高い業務です。当該業務は、申請者が規程を参照しながら申請書を作成し、審査担当者が規程・過去実績・経路検索サイトを確認しながら審査する必要があり、これまで多くの手作業が発生していました。
検証されたユースケースは、①申請者向けの申請ナビゲーション、②入力内容のチェック支援、③認定可否の判定支援、④払戻計算支援の4つです。申請者はチャット形式で質問しながら必要事項を入力でき、AIが規程に基づき不備を指摘、審査者向けには、通勤経路の妥当性確認や過去実績の参照、規程との照合などをAIが補助し、複数の確認作業を効率化します。
プロトタイプシステムを用いた検証の結果、従来の業務プロセスと比較して、将来的に業務時間を最大約40%削減できる可能性が示されました。大阪市は2026年度に行政オンライン申請の審査業務での適用を検証し、結果次第で全庁導入を検討する方針です。日立も今回の知見をもとに、自治体向けAIエージェントサービスの開発を進めるとしています。

出典:大阪市デジタル統括室報道発表資料2026年3月26日
電通総研が生成AIで自治体BPRを支援する「minnect AI‑BPR」提供開始を発表
電通総研は2026年4月、生成AIを活用して自治体の業務改革(BPR)とDX推進を支援する新ソリューション「minnect AI‑BPR(ミネクト エーアイ・ビーピーアール)」の提供開始を発表しました。
自治体が保有する事務事業一覧、業務量調査、情報システム台帳、条例・規程などの既存資料をAIで解析し、DX推進の着手点やアナログ規制の見直しポイントを短期間で提示することが特徴です。
サービスは主に「DX診断」と「アナログ規制見直し」の2メニューで構成されています。DX診断では新規調査を行わず、既存資料を送付するだけでAIが課題やアクション候補を整理し、最短5営業日でレポートを提出できます。アナログ規制見直しでは、数千〜数万件規模の条文をAIが解析し、デジタル化を阻む可能性のある規制箇所を抽出、分類や改正案作成も支援します。
背景には、自治体で人員不足や業務の複雑化が進む一方、DX施策が個別に進み本質的な課題整理が不十分なケースが多いという現状があります。電通総研は「既存資料を起点にAIで分析する」アプローチにより、自治体が抱える「どこから着手すべきか分からない」という課題を解消する狙いです。
今後は、「minnect AI‑BPR」を自治体DXの入口として位置づけ、分析で得られた着手点を基に施策実装まで一気通貫で支援する体制を強化するとしています。

出典:電通総研4月8日プレスリリース
埼玉県内15自治体で「自治体AI zevo」を共同利用開始
LGWAN対応AIプラットフォーム「自治体AI zevo(ゼヴォ)」が、埼玉県の共同利用対象に選定され、2026年4月より15自治体で利用が始まりました。
自治体AI zevoは、シフトプラス株式会社により、地方自治体が安全に生成AIを活用するために開発された職員向けAIプラットフォームです。
最大の特徴はLGWAN上でChatGPT・Claude・Geminiなど複数のLLMを安全に利用できる点で、情報漏洩リスクを抑えながら文章作成、調査、要約、住民対応など幅広い業務を効率化できます。さらに、自治体が保有する文書を学習させて回答精度を高めるRAG(独自AI)機能を標準搭載し、例規集や内部ルールに基づいた回答が可能です。個人情報マスキング、利用ログ管理、無制限ユーザー対応など、全庁導入を前提とした設計も特徴で、LGTalk(ビジネスチャット)や音声文字起こしツールとの連携も進み、自治体DXを実現する実務的なAI基盤として注目されています。
対象の自治体は、熊谷市、所沢市、東松山市、深谷市、草加市、蕨市、戸田市、朝霞市、志木市、久喜市、北本市、富士見市、坂戸市、吉川市、伊奈町の15自治体で、共同利用により導入・運用コストを抑えられる点も大きなポイントです。
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