フィジカルAIが動かす都市と産業

2026年6月22日

2026年、日本の都市と産業はフィジカルAIによって大転換期を迎えています。トヨタWoven Cityの都市スケール実装をはじめ、AIが現実空間を理解し自律的に動く"物理世界のAI化"が本格的に進み、次世代の都市運営と産業プロセスが現実のものとなりつつあります。

トヨタとウーブン・バイ・トヨタがWoven Cityでの取り組みを公開

2026年4月、トヨタとWoven by Toyota(WbyT)が「Woven City AI Vision Engine」と新拠点「Inventor Garage」の稼働開始を正式発表しました。
Woven City は、トヨタが静岡県裾野市に建設した実証都市であり、街そのものをフィジカルAIで動かす世界唯一のプロジェクトとして注目されています。
中心となるのが AI Vision Engine です。これは街中のカメラ映像を解析し、歩行者・車両・建物・信号などの状況をリアルタイムで理解する視覚と言語の統合モデル(VLM)*1で、MVBench *2でも世界上位の性能を示し、都市の"目と脳"として機能します。このAIが街の安全システム「Integrated ANZEN System」と連携し、歩行者の動きや車両の挙動を予測して事故を未然に防ぐ"予防型安全"を実現します。
さらに、旧東富士工場を改修した Inventor Garage が2026年に稼働し、ロボティクス・モビリティ・エンタメなど24社以上が参加する巨大な開発拠点となりました。ここではプロトタイプ開発から実証、住民テストまでを都市内で完結でき、Woven City を"世界最大のフィジカルAI実験場"へと押し上げています。
約100名の住民が実際に生活しており、生活者のリアルな行動が、未来の自動運転やロボットサービスの進化に直結する仕組みになっています。
総じて Woven City は、AI・ロボット・自動運転・エネルギーを都市スケールで統合する、世界で唯一のフィジカルAI都市として進化しており、日本発の次世代都市モデルとして国際的にも高い注目を集めています。

東富士工場プレス建屋を活用する開発の拠点「Woven City Inventor Garage」出典:Woven by Toyota 2026年4月22日企業ニュース イメージ
東富士工場プレス建屋を活用する開発の拠点「Woven City Inventor Garage」
出典:Woven by Toyota 2026年4月22日企業ニュース

アスク、フィジカルAIを軸にした産業向けソリューション強化

株式会社アスクは、2026年4月に秋葉原UDXで開催したASK Enterprise AI Conference 2026 において、新ソリューション群を公開しました。
本イベントで発表されたフィジカルAIは、現実空間の課題をデジタル空間で再現し、AIによって最適化する産業向けソリューション群として位置づけられています。中心となるのは、デジタルツインと高度シミュレーション技術で、工場や倉庫、建設現場などの物理環境を高精度に仮想化し、そこで作業動線や設備配置、ロボットの動作などを事前に検証することで、現場の効率化と安全性向上を実現するというアプローチです。
セミナーでは、Fotis Inc. によるフィジカルAI活用事例が紹介され、現場の3Dモデル化からシミュレーション、AIによる予測・最適化までの一連のワークフローが示されました。また、NVIDIA Isaac Simを活用した自律移動ロボット(AMR)開発の紹介では、仮想空間での経路計画や動作検証を行い、その結果を実機に反映する「シミュレーション・ファースト」な開発手法が、ロボティクス領域におけるフィジカルAIの重要性を裏付けるものとして提示されました。
展示ブースでは、デジタルツインを中心とした可視化・シミュレーション技術が披露され、GPUによるリアルタイムレンダリングやAIによる動線分析、設備配置の自動最適化など、産業DXを支える具体的なソリューションが紹介されました。これらは、現場の複雑な状況をデジタル空間で再現し、AIが最適解を導くことで、コスト削減、作業効率向上、リスク低減といった実務的な価値を提供するものです。
アスクは、フィジカルAIを新しい産業プロセスを実現する技術群として、重点的に推進するとしています。

FANUC × Google 、フィジカルAI分野で協業を発表

2026年5月、FANUCは、ロボットに認識・判断・行動を統合させるフィジカルAIの実装を加速するため、Googleと戦略的協業を開始したと発表しました。背景には、LLMを中心としたAI技術の急速な進化があり、産業ロボットが環境を理解し、自律的にタスクを遂行する新たなフェーズに入ったという認識があります。
FANUC は従来からROS対応*3やPython連携、高速通信インターフェースなど オープンプラットフォーム化を進めてきました。GoogleはROSの主要貢献者であり、Intrinsic(Google 傘下のロボティクス AI 企業)を通じてロボット開発基盤を提供しています。この技術的親和性を背景に、両社はフィジカルAIロボットシステムの共同強化に踏み出しました。
今回の協業により、FANUCはGoogle CloudのGemini Enterpriseを組み込んだ次世代 フィジカルAI システムを開発し、自然言語で指示を受け、物体認識を行い、複数の FANUC ロボット(協働・非協働を含む)を自律的に動作させる AIエージェント型ロボットシステムを実現しました。これは「単純な言語指示で複数ロボットが協調動作する」という産業ロボットの新しい運用モデルを示すものです。
さらに、Intrinsicの開発環境Flowstateに FANUCロボットが全面対応し、ROSとの相互運用性を確保することで、ユーザーは AIロボットアプリケーションを迅速に構築できるようになります。またFANUCはGoogle DeepMindのGemini Robotics Trusted Tester Programに参加し、基盤モデルを用いたロボティクス研究にも協力します。
FANUC は2025年の国際ロボット展で Physical AI システムを初公開して以来、すでに 1,000台以上を出荷しており、需要は急増しています。2026年5月の新製品内覧会では、Gemini を搭載した最新デモを公開し、来場者が自然言語でロボットを操作できる体験を提供します。

Geminiを搭載した次世代フィジカルAIロボットシステムのデモンストレーション出典:FANUC 2026年5月13日ニュースリリース イメージ
Geminiを搭載した次世代フィジカルAIロボットシステムのデモンストレーション
出典:FANUC 2026年5月13日ニュースリリース
*1 VLM(Vision-Language Model)
視覚言語モデル。テキストしか扱えない従来の大規模言語モデルを発展させ、画像や動画の理解も可能にしたAI。

*2 MVBench(Multi-modal Video understanding Benchmark)
動画を理解するAI(VLMなど)の性能を測定・評価するための世界的なテストセット。

*3 ROS(Robot Operating System)対応
ロボット開発の世界標準ソフトウェア(ROS 2)に対応し、FANUC製ロボットを外部からリアルタイムかつ柔軟に動かせる機能。

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