現場が変わる コンテック(ConTech)─安全性と生産性を高める3つの革新技術

2026年10月26日

国内の建設業界では、施工の自動化・遠隔化、そしてインフラの高度化を支える新技術が急速に実用段階へ進んでいる。トンネル掘削の精度をリアルタイムに把握する計測技術や、歩行者と車両双方の安全を高める路車協調型の仕組み、さらに高度なICT施工機能を遠隔で活用できる建機など、現場の安全性と生産性を大きく変える取り組みが続々と登場している。今回は、現場を変革する3つの最新技術に焦点を当て、その特徴と可能性を探る。

清水建設|移動式LiDARによる切羽リアルタイム計測システム「S-LiRT」を実用化

清水建設は2026年9月2日、山岳トンネル工事における掘削精度をリアルタイムに計測・評価する移動式LiDARシステム「S-LiRT(Shimz LiDAR Real-time Tracking system)」を開発・実用化したと発表した。S-LiRTは、トンネル両側面に設置した2台のLiDARと、LiDARを前後に移動させる2本のレールで構成され、切羽形状を双方向から常時3次元計測することで、掘削機のブームによる死角を補完しながら絶対座標を取得する仕組みである。

山岳トンネル施工では、設計断面より岩盤が出っ張る「アタリ」や、掘り過ぎによる「余掘り」が発生し、追加の切削や吹き付けコンクリートが必要となるため、生産性向上には掘削精度の改善が不可欠である。従来は切羽近傍での目視確認に頼っていたが、S-LiRTは取得した絶対座標を即座にアタリ・余掘り量へ変換し、運転席のモニターに色分け表示することで、オペレーターがリアルタイムに掘削状況を把握しながら操作できる点が特徴である。この機能によって、掘削精度の向上と安全性の確保が同時に実現する。

本システムは、大分県の日田山国道路1号トンネル本坑1工区および米子自動車道三平山トンネル工事で性能実証が行われ、シンプルかつ比較的安価な構造ながら現場での使い勝手に優れ、安全性・生産性の向上が確認された。清水建設は今後、S-LiRTを山岳トンネル工事の標準技術として位置付け、施工のオートメーション化に向けた要素技術として展開していく方針である。

「S-LiRT」配置図出典:清水建設株式会社 2026年9月2日 ニュースリリース イメージ
「S-LiRT」配置図
出典:清水建設株式会社 2026年9月2日 ニュースリリース

大林組|自動運転を守る「路車協調型安全支援技術」を開発─信号のない横断歩道で歩行者と車両へ注意喚起

大林組は2026年8月24日、信号機のない横断歩道において歩行者と自動運転車両の双方に注意喚起を行う路車協調型の安全支援技術を開発したと発表した。本技術は、道路インフラ側にセンシング機能と通信機能を付加し、歩行者の存在や車両の接近を検知したうえで、路車間通信により双方へ情報を伝達する仕組みである。自動運転車両単独では把握が難しい死角や夜間・悪天候時の視認性低下を補完し、安全性を高めることを目的としている。

システムは、人感センサー、ビーコン発信器、車載表示器、路面表示器で構成される。歩行者を検知すると車載表示器へ情報を送り、車両側に注意喚起を行う。また車両の接近を検知した場合は路面表示器に情報を伝達し、歩行者へ注意を促す。汎用技術を組み合わせて構成しているため、専用設備を新設する場合に比べて導入コストを抑えられ、既存道路への適用性が高いというメリットがある。

本技術は大林組が推進する道路・モビリティインフラ構想「e-MoRoad(イーモロード)」の一環として開発されたものであり、将来的には自動運転制御と連携し、車両の減速・停止・発進を指示できるシステムへ発展させる方針である。生活道路や施設内道路など信号機設置が難しい環境での活用が期待されており、自動運転社会の安全基盤を支える技術として重要性が高まっている。

自動運転車両への伝達イメージ図 イメージ
自動運転車両への伝達イメージ図
歩行者への伝達イメージ図 イメージ
歩行者への伝達イメージ図
出典:株式会社大林組 2026年8月24日 ニュースリリース

コマツ|ICT施工機能を遠隔活用できる20t級油圧ショベルと遠隔操作システムを販売開始

コマツは2026年6月16日、20トンクラス油圧ショベル「PC200i-12 遠隔システム仕様」と、同機種に対応する遠隔操作システム「Smart Construction Teleoperation」を発表し、17日より販売を開始した。本機は2024年12月発売のSDV(Software Defined Vehicle)型ショベル「PC200i-12」をベースとした遠隔操作向け仕様であり、従来の遠隔施工では利用が難しかった高度なICT施工機能を遠隔下でも活用できる点が最大の特徴である。

具体的には、3Dマシンコントロール、自動旋回機能、ジオフェンス機能、KomVision周囲監視、衝突検知ブレーキなどを遠隔操作時にも使用でき、操作遅延や微調整の難しさを補完しつつ、搭乗操作と遜色ない施工品質を実現する。またSDV構造により、ソフトウェア更新による機能追加や高度化にも柔軟に対応する。

同時に販売される「Smart Construction Teleoperation」は専用コックピットから建機を操作する仕組みで、高精細映像と低遅延通信により実機に近い操作感を提供する。1台の操作席で複数機を切り替えて操作でき、最大6,500km離れた現場での施工も実証されている。これによりオペレーターの移動時間を削減し、施工全体の効率化を可能とする。

本機とシステムの登場は、建設業界の人手不足や安全性向上の課題に対し、遠隔施工という新たな選択肢を提示するものであり、建設DXの加速に寄与する技術革新である。

【PC200i-12遠隔システム仕様と遠隔操作システムが実現する現場イメージ】出典:コマツ 2026年6月16日 ニュースリリース イメージ
【PC200i-12遠隔システム仕様と遠隔操作システムが実現する現場イメージ】
出典:コマツ 2026年6月16日 ニュースリリース

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