医療DXが実現する未来の医療とは

2025年2月10日

医療DXとは

医療DXとは、データとデジタル技術を駆使して保険・医療・介護などの業務や経営モデル、プロセス、組織、文化・風土を変革し、医療提供上の課題解決を目指すことです。医療には、病気の予防、病院への受診、治療、介護などさまざまな段階があり、それぞれの段階では健康診断、カルテ、診療報酬などから多くのデータを得ることができます。
医療DXでは、それらのデータを活かしてオンライン資格確認や電子カルテ情報の標準化などを行います。得られた情報を新たな薬剤や治療法に役立てることも医療DXの柱の一つです。少子高齢化に起因する課題や新型コロナウイルス感染症によって浮き彫りになった課題を解決していくためには、DXによる医療業界の変革は欠かせないことから、多くの企業が注目している分野です。

医療DXの最新市場動向

医療・ヘルスケア分野では、新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、医療情報連携や遠隔医療のニーズが増大したことでDX化が推進されており、関連するシステム・サービスの市場は拡大傾向にあります。
総合マーケティングビジネスを行う株式会社富士経済は、2023年4月に医療・ヘルスケアDX関連の国内市場調査を発表しました。同調査では、医療情報のプラットフォーム9品目、次世代医療アクセス6品目、ヘルステック3品目、医療ビッグデータ分析サービス3品目、デジタル治療・検査システム4品目、次世代臨床試験システム5品目、計30品目の市場について、現状を捉え、将来を予想するとともに、行政動向や海外企業動向などが与える影響も明らかにしています。
同調査によると、2030年市場予測は、病院向け電子カルテ(オンプレミス型/クラウド型)が 2,425億円(2022年比で4.8%増)となっています。大規模病院では導入率が99%以上になり、導入は一巡しています。現在の導入は中小規模病院が中心となっていますが、大規模病院のリプレース需要のほか、未導入病院や新設病院への導入により市場は拡大しています。
システム部門を持たない病院や費用面から導入を見送ってきた中小規模病院を中心にクラウド型のニーズが高まっています。大規模病院においてもリプレースコストを抑えるため、クラウド型への切り替えが進むと見られます。
製薬企業や生損保企業などの民間企業向けに、リアルワールドデータと呼ばれるレセプトデータやDPCデータ、電子カルテデータ、ゲノムデータなどから個人情報を除いて、匿名化したデータの提供や分析などを行うサービスがあります。この民間企業向けリアルワールドデータ分析サービス市場の2030年予測は320億円(2022年比2.4倍)で、大手製薬企業を中心に利活用が増えるほか、生損保企業などユーザー層も広がると予測されています。

*DPC(Diagnosis Procedure Combination)データのDPCとは、診断と治療内容を組み合わせて分類を作り、データ化するという概念です。そしてDPCデータとは、DPC対象病院で算定されたデータであり、比較的規模の大きい病院のデータをまとめたものと言えます。DPCデータは、患者の年齢・性別や病名、診療行為、使用薬剤など多くのデータが入った6つのファイルから構成されており、目的に応じて活用することで病院の経営改善やサービス提供に役立てることができます。

医療DXの未来

2022年5月に自由民主党政務調査会が「医療DX令和ビジョン2030」という提言を行いました。これを受けて厚生労働省は9月に「医療DX令和ビジョン2030」厚労省推進チームの初会合を開きました。厚生労働省は、本ビジョンの中で、医療業界に「全国医療情報プラットフォーム」「電子カルテ情報および交換方式の標準化」「診療報酬改定DX」の3つの変革を起こす計画を立てています。
全国医療情報プラットフォームでは、マイナンバーカードを活用したオンライン資格確認システムのネットワーク拡充によって、患者、医療機関、介護事業者、自治体がそれぞれの情報を一元化して共有する仕組みづくりが掲げられています。患者とは医療保険情報、検診情報、薬剤情報を共有し、医療機関や介護事業者はレセプト、カルテ情報、処方箋情報、ケアプランなどの情報をクラウド間連携することでより効率的で無駄のない医療・介護を受けることができるようになります。自治体も予防接種情報、検診情報、認定情報などを共有することで医療や介護の質をさらに高めることができます。また、同プラットフォームで得られるビッグデータを活用することで創薬や治療法などの研究開発にもつながると考えられています。

電子カルテ情報および交換方式の標準化では、電子カルテの情報を医療機関同士でスムーズに交換したり、共有したりできるシステムづくりに取り組んでいます。これまで、各医療機関で保管している患者情報は、診療情報提供書などのやり取りを経なければ他機関の情報を把握することができず、緊急時などは煩雑なやり取りが医療や介護の妨げになることが多くありました。また、やり取りがなければ他機関の情報を知ることができないため、ドクターショッピングを繰り返す患者に不適切で過剰な医療が提供されてしまうケースも少なくありませんでした。このような問題を解決するため、2025年4月には「電子カルテ情報共有サービス」の開始が予定されています。

診療報酬改定DXでは、医療機関などの負担を最小限にして診療報酬の最適化を目指す仕組みづくりを目指しています。現状のシステムでは、診療報酬が改定されるたびにレセプトコンピューターのプログラム修正が必要になり、大きな労力や費用が必要です。レセプトコンピューターに共通算定モジュールを導入することで、迅速に診療報酬改定に合わせた更新を実施できる仕組みの実現が提言されています。 今後の医療の進化には、DXの実現が欠かせません。医療関係者だけではなく、サービスを受ける患者側も医療DXについて理解を深め、情報収集を行っていく必要があるでしょう。

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