スマートシティの実現を支援する最新DX技術が続々登場

2024年4月8日

スマートシティの構築にあたっては、安全な交通網の整備から都市空間の有効活用、次世代デバイスを活用した健康な生活の実現など、さまざまな分野でDXの導入が必要とされている。こうしたニーズに応えるように、日本では大手メーカーからベンチャーまでが、自社の強みを活かして住みよい街づくりの実現に貢献する、DXソリューションの技術開発を進めている。

2次元画像から人や物体を3次元化する技術

富士通は3月7日、米国カーネギーメロン大学と、固定設置の1台の単眼カメラから得られる画像に映る物体をAIで3次元に変換しデジタル化することで、人や物体の3次元形状や位置を高精度かつ動的に再構築する技術を開発したと発表。交通事故の原因などの潜在的な課題を可視化するだけではなく、スマートシティにおける有用性も検証し、2025年度までに実用化を目指すという。

今回発表された技術は、「3次元形状推定技術」「3次元プロジェクション技術」の2つのコア技術で構成。「3次元形状推定技術」では、深層学習によって人や物体の形状を学習したAIを用い、カメラに映る2次元の各物体の3次元形状を推定。事前の機械学習によって、建物の裏側など画像では隠れて映っていない部分についても、正確な3次元形状の推定を可能にする。「3次元プロジェクション技術」では、3次元形状推定技術の出力結果に基づいて3次元化されたデジタルツイン上で、人や物体を高精度に位置推定して復元する。物体の特定の部分が障害物によって隠されている場合でも、正確な位置推定を可能にするという。

これらの技術を活用することで、例えば交差点など人や車が密集する場面で撮影された画像を、匿名化したうえで3次元上へ動的に復元し、監視カメラでは捉えきれなかった交通事故の原因などの潜在的な課題の可視化を実現する。

(図1)2次元画像を3次元化する富士通の技術(出典:富士通のプレスリリースより引用) イメージ
(図1)2次元画像を3次元化する富士通の技術(出典:富士通のプレスリリースより引用)

歩行者が好んで選択する道順を見える化する技術

スマートシティにおいては、街路空間を車中心から「人間中心」の空間へと再構築する取り組みが世界的に進んでいる。近年は国内でも、沿道と路上を一体的に活用し、多くの人が集まりながら多様な活動を楽しむ場として進化させる取り組みが増加している。

地図データを活用したソリューションを提供するジオテクノロジーズは3月5日、東京大学および麗澤大学の研究者らと共同で、ウォーカビリティを見える化する指標「街歩きインデックス」を開発したと発表。「街歩きインデックス」は、歩行者が好んで選択する道順や場所を地図上にスコアで可視化することで、歩行経路の選択志向を理解しやすくする。スコアが高くなればなるほど、遠回りにも関わらず選ばれる、「居心地が良くて、つい歩きたくなる街路空間」を示すことになるという。

ジオテクノロジーズが「街歩きインデックス」を用いて東京都の浅草・スカイツリー周辺の道路を分析したところ、観光地である浅草寺やスカイツリー周辺、隅田川沿いで特にスコアが高いことが分かった。この辺りは、墨田区が主体となって取り組んだ「北十間川・隅田公園観光回遊路整備事業」によって、浅草・スカイツリー間の賑わい創出と観光回遊性向上を目的に整備が行われた地域であり、実際に整備効果が表れていることが伺えたという。

(図2)スコアが高い道を赤、低い道を青で表現した浅草・スカイツリー周辺の「街歩きインデックス」(出典:ジオテクノロジーズのプレスリリースより引用) イメージ
(図2)スコアが高い道を赤、低い道を青で表現した浅草・スカイツリー周辺の「街歩きインデックス」(出典:ジオテクノロジーズのプレスリリースより引用)

排泄予測デバイスの活用でスマートシティの健康作りに寄与する実証実験

ヘルスケアソリューションを提供するトリプル・ダブリュー・ジャパンは3月13日、大阪府および府内の43市町村や企業、大学などで設立された「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」のプラットフォームを活用した実証実験の結果を公表した。今回の実証は、「大阪スマートシティ戦略ver.2.0」に基づく、次世代スマートヘルス分野のスタートアップ創出に寄与する取り組みで、同社が開発したデジタル技術による排泄予測デバイス「DFree」が活用された。

排泄予測デバイスは介護保険の給付対象となる福祉用具に認定されており、実験では排尿に関する入院患者の不快軽減・排尿自立支援に有用であるかを検証。加えて、排泄などに係る自立支援を要する者の地域生活への移行後のQOL(生活の質)向上など、排泄予測デバイスがより幅広い分野に活用できるかの可能性を検証した。

検証の結果、排尿量などの情報が常時自動的にアプリケーションに送られることで、変化し続ける排尿のタイミングを測るという点において、排尿支援の一助になる可能性があることを実証。また、入院中に排尿自立の確立に至らなかった場合、在宅療養での継続利用により、その後の日常生活のQOLの向上につながる可能性があることなどが分かった。

こうした実証結果から排泄予測デバイスの活用は、従来の排泄ケアでは困難であった被介護者に合わせたパーソナライズケアをサポートし、被介護者のQOL向上と介護者の負担軽減を実現できるという。

(図3)実証実験のイメージ(出典:トリプル・ダブリュー・ジャパンのプレスリリースより引用) イメージ
(図3)実証実験のイメージ(出典:トリプル・ダブリュー・ジャパンのプレスリリースより引用)

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